今年も北海道・石狩の地にて二日間に渡り開催された〈RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO〉。第一回目の総括対談に続き、降水確率70%の予想を裏切り見事に晴れてくれた2日目(8月19日)の詳細レポートをお届けいたします!
15:40~
■髭(HiGE) @GREEN OASIS
カメラマン:河本悠貴
ヴォーカル、須藤寿の厚淵サングラス&長髪というルックスに、一時期のカート・コバーンを回想してしまったのは自分だけではないはず。パワフルさよりも拍の細かさを重視したダンサブルなツイン・ドラム。ヴォリューム奏法~ワウといった小技を多用したギターなど、あらゆる要素が詰まりまくったツボをついた演奏に、何度もひざを打ってしまった。ドアーズ“Light My Fire”のド・サイケなカヴァーにも納得。彼らの〈掴めなさ〉が一方でキャッチーなものとして消費されていることを目の当たりにできたことが一番の収穫だったかも。知的な確信犯というイメージが持たれがちなバンドだけれど、その核はストレートなロックバンドなのではないでしょうか。*ヤング
16:00~
■米米CLUB @SUN STAGE
米米CLUB、なんと9年ぶりのライヴ! 真紅の衣装に身を包んだ彼らは、やはり最強のエンターテイメント集団だった。序盤からいきなり“浪漫飛行”で大合唱を巻き起こしたかと思えば、“君がいるだけで”はワンフレーズしか歌わず客席を煙に巻く。歌謡曲路線に徹するかと思えば強力にファンキーなブレイクを聴かせたりと、とにかく楽しければ何でもあり、満足度ではナンバーワンのステージだった。異様におもしろいMCや歌詞にさらりと石狩ネタを盛り込んだりといった芸達者っぷりにも脱帽しつつ、終盤でのアゲまくりの展開はやはり凄い! “Shake Hip!”の昂揚感で一気に持って行かれる人も続出。恐るべし米米CLUB!*鬼頭
19:00~
■吉井和哉 @SUN STAGE
前のライヴが押したため、〈SUN STAGE〉での吉井和哉のライヴは既に終盤。どうやら〈YOSHII LOVINSON〉時代の“TALI”や本名でリリースした“BEAUTIFUL”、そしてニュー・アルバム『39108』からの曲も歌ったと聞いて非常に悔しく思うが、突如THE YELLOW MONKEYの“LOVE LOVE SHOW”が始まった。熱っぽく、誠実に、またいやらしく歌い上げる吉井。しかもギタリストは盟友の菊地英昭だ。THE YELLOW MONKEYは〈RISING SUN〉への出演を菊地の病気でキャンセルした経緯があるが、それ以降に積み重なった思いのたけをぶつけるような、清々しい演奏だった。最後は「6年前にやるつもりだった曲です」という“バラ色の日々”で締めくくる。吉井の顔は、とても晴れやかだった。*鬼頭
20:00~
■rei harakami feat.矢野顕子 @MOON CIRCUS
矢野顕子の2004年作『ホントの気持ち』やライヴなどで共演してきた2人が〈MOON CIRCUS〉に登場。最初はrei harakamiひとりで、2曲目から矢野顕子が招き入れられる。細野晴臣“終わりの季節”のカヴァーや、名曲“DAVID”、くるりの“ばらの花”などを共演。たおやかな電子音が弾み、その上を矢野の歌声が奔放に跳ね回る様は痛快で、とても美しい。それ以降は矢野のピアノ弾き語りで“SUPER FOLK SONG”や、花火をバックに“ごはんができたよ”を歌った。ラストはまた2人で“気球に乗って”。MCではユニットとしての活動継続をほのめかしていただけに、このデュオがまた観られる日は遠くないかも? *鬼頭
22:30~
■MO'SOME TONEBENDER @EARTH TENT
カメラマン:富田望
大先輩Zi:LiE=YAの後を受け、MO'SOME TONEBENDERが〈EARTH TENT〉に登場。異常なほどの熱気の高まりのなか、いきなり“ロッキンルーラ”で激しく攻め立てる。なんと椎名林檎もコーラスで飛び入り! 新曲“You are Rock n Roll”やフリクション“BIG-S”のカヴァー、轟音でテントを埋め尽くした“Green & Gold”などの強力ナンバー揃いのなか、ミドルテンポでぐっと聴かせる“Have you ever seen the Stars?”が光っていた。ラストの“hang song”ではマッシヴなベースのループとトランペットが入り乱れ、カオスな盛り上がりに。ライヴ・バンドとしての真価を見せつけてくれた。*鬼頭
23:10~
■EGO-WRAPPIN' @SUN STAGE
長いブレイクタイムの後、EGO-WRAPPIN'が〈SUN STAGE〉に登場。粋にキメたメンバーがステージに並べば、そこはさながら巨大なダンスホール。勇壮な“カサヴェテス”やトロトロにスウィートな“a love song”、ニューウェイヴ的なテイストを採り入れた“Sundance”など、色気たっぷりな演奏と歌でゆったりと踊らせてくれた。しかし後半は一転して“PARANOIA”“サイコアナルシス”“くちばしにチェリー”“Mother Ship”というアッパー・チューンの連打! 完全フェス仕様のセットリストに客席は狂喜乱舞! レッドゾーンに振り切れたような演奏が熱気を撒き散らし、中納良恵は情熱的なヴォーカルとパワフルなアクションで煽りまくる。彼らが最強のライヴ・アクトであることを、つくづく思い知らされた。*鬼頭
00:20~
■ズボンズ @RED STAR FIELD
カメラマン:古渓一道
キャリアが長く、ライヴの本数が多いバンドには停滞感を感じてしまうことが多いのだけれど、この日のズボンズには一切それが感じられなかった。過剰なテンションがどこまでも突き抜け、スペイシーなカオス感を味わうことができたのだから。探求者、ドン松尾のオリジナルなファンキー解釈とドラムのマッチングが特に抜群で、贅肉がそぎ落とされてシェイプしたグルーヴが叩きつけられる。ラストの新曲“Good Good Future”での未来に対する前向き過ぎるメッセージは、その言葉が持つ意味以上に観客に伝わっていたはずだ。彼らは、まっすぐに正しく自分のやりたいことを追いかけてきたバンドなわけで、その純粋さがストレートに演奏に表れていたライヴだった。*ヤング
03:50~
■DOPING PANDA @EARTH TENT
朝の4時直前という時間帯にも関わらず、会場は予想以上にパンパン。うっすら白みはじめた空を前に、観客(10代女子多め)から〈3年目にして初のトリを務めること〉の期待と興奮が伝わってくる。その〈3年目の興奮〉は、メンバーもしっかりと感じていたようだった。お決まりの“Introck”で幕を開けた後は、立て続けに“GAME”、“Uncoverd”、“Transient Happiness”と、とにかく煽りまくるセッティングで会場の温度&湿度は序盤からピークに。延々と続くダンス・ビートの上に次々と決めのフレーズが重ねられていく。蒸発した汗と埃とハッピーなムードがミックスされ、笑顔(となんとも言えない臭い)が会場を充満していた。ダンス・ミュージックが持っている快楽性を支えるだけの安定した演奏も素晴らしかった。*ヤング
04:10~
■KEMURI @SUN STAGE
カメラマン:三浦麻旅
「こんなに遅くまでたくさんの人が残ってくれて、感激しています」。ヴォーカリストの伊藤ふみおが思わずそう漏らすほど、大観衆がKEMURIを待っていた。彼らは今回で6回目の出演、まさに〈SUN STAGE〉のトリになるべくしてなったバンドだ。徐々に夜が白んでくるなか、バンドはゴキゲンなスカやパンクをテンポ良く演奏し、お客さんは笑顔でそれに応える。疲労もあってか、いつものような爆発的なモッシュこそ起こらないが、とてもピースフルな空気が流れていた。新曲を何曲か挟みつつ、“P.M.A”でライヴは終了。終演後のSEが流れるなか、「まだあの曲を聴いてない!」と言わんばかりの怒涛のアンコールが巻き起こる。それに応えてバンドが登場、曲はもちろん“Ato-Ichinen”!! この曲ほどフィナーレにふさわしい曲があるだろうか。次の〈RISING SUN〉まであと1年、みんなが来年の参加を心に誓ったはず。*鬼頭