特別巨編! 次松大助が描く一大スペクタクル小説(?)・・前編
10年ぶりにクーラーのある生活です。すごい。すごい。
中国で1979年に施行された〈一人っ子政策〉は、厳しい罰則の下、現在5千万人とも1億人とも言われる無届けの子供〈黒孩子〉(ヘイハイズ)を生みました。彼らは教育や医療サーヴィスを受けられず、就職もしにくいので犯罪グループに流れていくこともあるようです。そこから発展して〈女性化した男性の独立国家誕生〉というシナリオを考えてみました。舞台は近未来の中華人民共和国です。
――〈黒孩子〉による犯罪増加と、緩和されつつある〈一人っ子政策〉による相変わらずの人口増加に伴い、2015年、中国共産党政府は地方各省の自治権を飛躍的に向上させる法案を可決しました。そんな最中、記録的な猛暑に見舞われた中国では、地方番組のニュースで〈ピンクの糞をする小豚〉が紹介されて子供たちに大人気。ただ、実はピンクの色素は新種のインフルエンザ・ウィルスによるものでした。豚の腸内で遺伝子変異を繰り返したそのウィルスは今までとは全く異なる種のもので、C型インフルエンザ〈ピギー・ホール〉と名付けられました。〈ピギー・ホール〉は爆発的に感染図を拡大し、その年、中国全土で5万~10万人の犠牲者を出しました。危機感を抱いた中国政府は、これまでのようなウィルスとワクチンのイタチごっこではなく、根本的な免疫力向上薬の開発に乗り出しました。
白血病患者の為に開発されていた薬に改良を加え、白血球自体の能力を高めるその薬品は、異例の早さで発売が認可され〈エル・ドミンゴ〉という名で販売されました。しかし、国家発展・改革委員会と国家安全部の共同開発によるその薬には、ある政策が隠されていました。それは、北朝鮮が国を挙げて品種改良した中毒性の高い〈アツミゲシ抽出成分〉と、タイと日本の薬品メーカーが開発した〈OSGI-R25〉という強力な女性ホルモン剤を、その薬に少量混ぜて販売する、というものでした。
〈エル・ドミンゴ〉は2019年の発売以降、生産が追い付かない程の勢いで売れ続け、議会のなかには〈エル・ドミンゴ税〉なるものの法案を提出する者までいました。
――さて、発売から1年が経った頃、主婦の間で〈夜中に口紅をひく亭主〉の目撃情報が相次ぎ、中には明らかに胸が膨らんでいる男性も現れ、いよいよこれはおかしいぞ、という噂が流れました。政府の企みは、〈一人っ子政策〉に続く〈男性の女性化による少子化計画〉だったのです。(続く)
*今回はフィクションです。
今月のBGM
BARTOK/JANACEK
『バレエ音楽:中国の不思議な役人』
ユニバーサル
超安い。1,200円シリーズです。そういえば、昔からバルトークと安部公房は似てるなぁと思っていました。少し狂った状況設定の中で、超現実的な世界を描くドキドキ感があります。
PROFILE
次松大助
99年に大阪で結成されたオリジナル・スカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。シングル“シュガープールでつかまえて”も収録された待望の新作『CONSTANT MUSIC 2』が発表されたばかり。新境地も開拓したその内容はP37にて。〈www.miceteeth.net〉もチェックを!!