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第4回 ─ 満月編!!

連載
iLL presents ムー 帝 国 か ら の プ レ イ リスト
公開
2006/09/07   17:00
更新
2006/09/08   18:27
テキスト
文/小野田 雄

ファースト・アルバム『Sound by iLL』をリリースしたiLLによる語り下ろしオリジナル新連載がコチラ!! iLLこと中村弘二が、地球や宇宙のさまざまな深い神秘について語りつつ、そのシチュエーションにピッタリの5曲をリストアップしてくれます。神秘はどこにでも転がっている?かもしれない? 第四回目のテーマは9月→お月見ということで(!?)〈満月〉編。下の〈iLLなプレイリスト〉を参照しながらどうぞ!!


  〈月って何?〉っていう話になったりした場合、実際、月には行ったことないし、触ったことないし、地球にいる以上、月っていうのは夜を照らしてくれる明かりとして存在しているわけで。今回は明かりとしての満月っていう解釈のもと曲を選んでみたっていう。

  スマッシング・パンプキンズはこの『Mellon Collie And The Infinite Sadness 』ってアルバムを除いて、すごい好きってわけではなく、距離は置いてるんだけど、このアルバムだけはビリー・コーガンの調子が良かったのか、私生活でいいことがあったのか、音を上手く映像化出来ているし、明確なイメージが打ち出せていて。で、この曲はスネアがバタバタした感じとかスペーシーなメロディ、古くさいストリングスだったりっていう要素で月の空間的イメージを上手く表現していて、おまけにPVもレトロな宇宙冒険旅行っていうストーリーになっているんだよね。
 

  この曲も月明かりとしては、ギンギンに光っている時間帯のものではなく、そのちょっと後のゆっくりした光を上手く表しているなぁ、と。月っていうのは降り立ったことのない異世界じゃない? そのファンタジックな感じ……ただし、月って岩だから、そこに希望はあんまりないんだけど(笑)、月を見ると一人になれる感じがあって。不思議な話なんだけど、太陽とか月とか星を見ると、自分が宇宙人であることを認識させられるのね。多分、普通の人は月をそのまま月として見ると思うんだけど、よくよく考えると、自分は一個の大きな世界の一部っていう錯覚にとらわれるっていう。キング・クリムゾンに関しては、最初嫌いだったのね(笑)。子供の頃って、難しいものが分からなかったりするから、キング・クリムゾンとかイエスとか、ましてイタリアのプログレだとか、ホント苦手だったんだけど、音楽をやるようになってから好きになって。プログレって、演奏で世界を作り出す音楽としてはクラシックに比肩する表現方法だし、音楽を洗練させていくと、悔しくもあるんだけど、プログレに行き着くんだなぁ、と。
 

  これは同名映画のサントラなんだけど、映画は観てない。『Purple Rain』の映画は我慢してみたけど、内容は覚えてない(笑)。この曲もスマパンと近くて、音が映像的で、イメージ的にはモノクロのチャップリン映画みたいな世界だよね。そこには月明かりの要素も含まれていて、人間ドラマに出てくるような月明かりに近い光を放っている感じ。音はノスタルジックなんだけど、よく練り上げられていて、単なるノスタルジーに陥らない演奏になっているところがスゴい。プリンスは自分の曲作りのスタンスにすごい影響を与えていて、この人の曲って、印象に残るのがほとんど1メロか2メロだったりするし、曲の最初から最後までずっと同じコードだったりして。日本って、メロディをいっぱい足さなきゃいけないってことになりがちだけど、実はそんなことする必要はなくて。意味のあるメロディだけを入れていくことがシンプルで一番人に伝わる表現だっていうことを教えてもらったね。
 

  ジョイ・ディヴィジョンって、意外とスペーシーなメロディを使ってたんだなぁっていうことで選んでみた。全くノーマークだったんだけど、月=スペーシーなものっていうことで曲を探していたら、この曲に行き当たったっていう。このバンドって、歌詞を除いて、全体的には無意識にやってたバンドだと思ってるんだけど、その〈なんとなく〉っていう感じがすごい好き。それはニューオーダーにしても言えることなんだけど、今でこそ重要な位置を占めるバンドになってるけど、〈なんで?〉って考えると、それも〈なんとなく〉な気がするんだよね。
 


スリーパーのアルバム『Smart』

  この曲も意外とスペーシーだったから選んだんだけど、実際に 鳴っている音とは違う深い成分が無意識的に混ぜられているっていう。このバンドが出てきた90年代中期って、ネクスト・ブラーとかネクスト・オアシスが求められて、結局消えていったバンドがものすごく多い時期だけど、その後も個性が追求されているようで、未だネクスト・ブラーとかネクスト・オアシス的なバンドが継続的に求められているような空気があるよね。このバンドはこの『Smart』ってアルバムだけはよく聴いてて、沢山出てきたバンドの中の1つではあるんだけど、10年後、20年後に絶対起きるはずの90年代リヴァイバルの時に光が当たりそう。
 

  自分にとっての月は自分が初心に帰ることの出来るものだね。月を見ることで、その奥には宇宙があって、その中にある地球に自分は生きてるっていうことを確認する。月はそのために存在している感じかな。月の神話性とか、満月の夜になると人間の能力が変化する、みたいな話はそりゃそうだろうと思うけど、それ自体にはあんまり興味がないね。今でも月を見るかって? うん、見るね。満月なのか、どうなのか。〈あ、微妙に満月じゃない〉とか思ったり(笑)、いつも、なんとなく意識に引っかかってる感じだね。

iLLなプレイリスト~満月編~

1. SMASHING PUMPKINS“Tonight, Tonight”(『Mellon Collie And The Infinite Sadness』収録)
2. KING CRIMSON“Moonchild”(『In The Court Of The Crimson King』収録)
3. PRINCE & THE REVOLUTION“Under The Cherry Moon”(『Parade』収録)
4. JOY DIVISION“Love Will Tear Us Apart”(『Permanent: The Best Of Joy Division』収録)
5. SLEEPER“Delicious”(『Smart』収録)