日本における夏フェスの代名詞、FUJI ROCK FESTIVAL。10回目を迎え、ますます盛り上がりを見せる同フェスを、今年は2回に分けてレポートいたします。第1回目は、ロックなフォトグラファー久保憲司と、bounce.com編集部のロック担当ヤング係長による総括対談です!
――まずは今年のベスト・アクトからお伺いしようかと思います。
久保 ズートンズは良かったなぁ。結構お客さんも入ってたし、中には一緒に歌ってる人もおったよ。ステージの持って行き方が上手いし、演奏も上手い。サックスのお姉ちゃんはますます綺麗になってたし(笑)。近所に住んでいたあばずれ姉ちゃんのことを歌ったりして、歌詞の内容はどうしようもないんだけど、パワーがあった。イギリスのバンドがどんどん上手くなっているんだよね。向こうがいまインディー・バブルだからなのか、フェスが多いからなのかわかんないんだけど。
――他にどういうバンドを観ましたか?
久保 新人だとオートマティックが良かった。ギャング・オブ・フォーのモノマネみたいなバンドなんだけど、ほんまのパンクやった。根性が入ってて演奏が上手い。バンドなんかやってても食えるわけないし普通に就職したほうが人生的にも楽やのに、なんでこの子らはこんなに必死でやってんのやろうと思ったら感動してしまったなぁ。逆にジェットがあんまりピンとこなくてびっくりしたけどなぁ。本当はレッチリが良かったって言いたいところだけど、レッチリ観れなかった(笑)。
シザー・シスターズ
――自分もレッチリは観てないんです……。観たなかでよかったのはシザー・シスターズとスーパー・ファーリー・アニマルズでした。シザー・シスターズは盛り上げ上手で、知らない人もガンガンに躍らせていて。スーパー・ファーリー・アニマルズはお面をかぶったりするような、妙にひねくれたパフォーマンスがハマっていて面白かったです。
久保 アメリカのバンドは客を乗せるのが上手いんだよね。そういうのが苦手だったイギリスのバンドで、しかも若手がちゃんと盛り上げていたのが良かった。もちろんできてないバンドもおったけどな(笑)。
――電気グルーヴは観ましたか?
久保 電気観てへんねん。卓球さんは岩盤のステージ(パープル・ヘイズ)でシークレットでDJやったりしてたんやろ? ナイトメアズ・オン・ワックスで普通に踊ってたし、本人が遊んでたいんやろうなって。
――じゃあ、キリング・ジョークは?
久保 トランジット・キングスでアレックス・パターソンが来てたやろ。あの人は元々キリング・ジョークのローディーやってたから、スピーカーの横まで出てきて一緒に歌ってたで(笑)。トランジット・キングスのジミー・コーティ(元KLF)はもうバンドを抜けたらしくて来てなかったけどな。
ベズ(ハッピー・マンデーズ)
――ハリー・ホソノ・クインテットを観たのですが、途中で矢野顕子さんが出てきて、ピアノトリオで“相合傘”、“終わりの季節”をやったんですよ。割と年齢層が高い客が多くて、みんな静かに感動しているような雰囲気が漂っていました。
久保 オレンジ・コートはそういうことをやりたかったんだろうから、やりたいことができるようになったのは凄いことだよ。いつか〈オレンジ・コートではっぴいえんど再結成〉とかやってくれたらいいよね。ぼくはあと、ハッピー・マンデーズが良かった。ベズがマラカス振りながらあいかわらず動きまくってた(笑)。演奏が終わったあとに(トロージャンズの)ギャズ・メイオールが出てきて、客にアンコールするよう煽っていたけんだけれど、結局ベズが出てきて謝って終わってたで(笑)。
――モグワイはお客さんがダントツに入っていました。清志郎さんが出演中止になって、ストロークスが前にずれたので、ストロークス終演後にお客さんが流れてきたみたいで。
久保 そうかぁ。繰り上げでホワイト・ステージのスーパー・ファーリー・アニマルズと、グリーン・ステージのストロークスがかぶってたんだよね。しかし、モグワイをフジで観るっていうのはもう恒例になってる感じがするな。
――雰囲気はどうでしたか? なにか〈今年は特別だった〉みたいなことはありました?
久保 10周年やからって特別なことをしていないのがフジロックらしくていいと思った。今年初めてドラゴンドラに乗ったんだけど、雰囲気はいいし上から会場を一望できて感動したで。上から会場を見ると、〈音楽が好きな人がこんだけ集まってるのか〉という気持ちになった。でも、あれはフジロックじゃなくて苗場プリンスの管轄じゃないのかな(笑)。今年はヘリコプターに乗ることもできたんだよね。
――アヴァロン・ステージは低音が出ないライヴが多かったので、ヘリの音がガンガンに入ってきていましたけど(笑)。
久保 苗場食堂も似たようなもんやったな。キセルを観てたんだけど、レッド・マーキーの音がかぶって全然聴こえなかった。そういえば、レッド・マーキーの音のよさは凄かったで。世界中どこのフェスを見ても、3番目のステージであんなに音がいいところはないよ。
――あ、パレス・オブ・ワンダーにできた新しいテント(Crystal Palace Tent)には入りました? 勝手にしやがれとかリコとか東京パノラママンボボーイズなんかが出ていましたよ。自分は毎晩あそこでグデングデンになるまで飲んでいました(笑)。
久保 入ってないよ。ていうか、レッチリ観ないでなにやってるの(笑)。それ酒飲みに行ってるだけやんか。
――すみません……。じゃあ、この辺で締めましょうか。
久保 やっぱり、10年経って日本人の性格がフジロックに現れていると思うんだよね。イギリスのフェスはイギリスっぽいし、アメリカもアメリカっぽい。フジロックがどんどん日本っぽくなるのは個人的にはあんまり好きじゃないんだけど。もっとみんな好き勝手やればいいのにと思う。
――では、今後期待したいことはなんでしょうか。
久保 THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか、Blankey Jet Cityがグリーンに出た90年代の終わりごろって、日本のロックが凄く盛り上がっていて、そのままええ感じになっていくのかと思ったけれどその勢いは今はないでしょ? 袋小路に入ったような気がする。それは残念なんだけれど、20年前と比べて日本のロックはずっとかっこええし上手くなったわけやんか。だから、そういうのをフジロックで観て育った次の世代の人たちが、またかっこええバンドをやってフジロックに出てくれるのを期待したいね。
※次週は各アーティストのライヴレポートをお送りいたします。そちらもお楽しみに
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介