〈教科書に載らないインターネットの歴史〉に名を残すオールドスクール・ウェブマスターであり、はてなダイアリーに〈男のひとり飯〉生活を記録する独身貴族であり、そしてヒップホップ/R&Bのプロモクリップ映像の世界(肉体)にトコトン魅せられる一男子……一瀬大志がレペゼンする筋肉映像コラム。その名も〈ブラックミュージック★肉体白書〉は今回が最終回! 1年半にわたるご愛顧に感謝しつつ、最後は全肉体ファンが恐れをなす永遠のミス・バディー・コンシャス=マドンナをご紹介!
世の流行やら新譜の発売日などを微妙に意識しつつも、50セントを皮切りに、ディアンジェロ、LLクールJ、プリンス、Rケリー、テレンス・トレント・ダービー……と、個人的に思い入れの強い肉体派ブラック・アーティストについて書きつらねてきたこの連載。いつかは来るとは思ってましたが、ついにネタ切れの日を迎えてしまいました。といわけで、最終回となる今回は、エクストラ・トラック扱いということで、どうしても取り上げておきたかったマドンナさんについて書かせていただきたいと思います。
■ Madonna
通算11枚目のアルバム『Confessions On A Dancefloor』からのファースト・シングル“Hung Up”。ここ最近の肉体クリップ界の話題といえば、同作品のプロモクリップに尽きるわけですが、どうですか! あの肉感映像。まるで3D格闘ゲームのオープニングムービーなみに強調されたハミ尻のプルプルっぷりに、テレビを前に小刻みに脳天をゆさぶられた男子も多いのではないでしょうか?
肉体ファン伝説のプロモクリップ、オリビア・ニュートン・ジョンの“Physical”(81年)を彷彿とさせるそのキワキワなレオタード姿に、擬音すら聞こえてきそうな劇画チックな尻の揺れ。私が洋楽に目覚めたばかりの予備知識ゼロな中坊男子だったら、それに素直に欲情していたかもしれません。しかし、マドンナと共に歩んで20年。47歳とは思えないその激しく振動する腰を凝視する私の視線は、いつのまにか月に到達したホモサピエンスでも眺めているかのような感慨深いものになっていました。──そう、もはや私にとって、あの映像はソニー・プレゼンツ〈世界遺産〉にしか見えないのです。
恐らく己の肉体に費したコストでは人類トップレベルに位置するであろう彼女。レコ屋の店頭にて、これまたエロジャケ界伝説の、スコーピオンズ『Virgin Killer』(77年)のカヴァーを連想させる股間を強調した巨大ポスターに出くわすにつけ、それをしげしげと眺めては〈人類もついにここまで来たか……〉と遠い目をせずにはいられません。過去に有楽町ビックカメラの大画面テレビコーナーで私の視線を釘付けにした、松田聖子(43歳)のナマ脚短パン姿(ハイビジョン映像)ですら、もはや霞んだ記憶。“Like A Virgin“から『Virgin Killer』 ──その一周しちゃった感は、まさに輪廻転生、因果応報、目には目を、歯には歯を。自分を殺して再生できるのは自分だけ──そんな何度でも甦る〈不死鳥マドンナ〉を予感させられた私は、秋空のもとひとりゾクゾクした次第です。
露出少な目のサド婆スタイルで渋くカッコ良く年を重ねていくかと思っていたところでのこの大胆な肉体回帰。〈いま脱いでおかないと将来太るとお母さんに言われた〉との理由から想定外のタイミングでドロップされた宮沢りえのヘアヌード写真集と同様、プロジェクト〈マドンナ〉として今後のロードマップをきっちり見据えた上での商業的アクションなのかもしれませんが、やはりその最後の切り札感溢れる展開は、夕方のフジテレビでマドンナと同い歳の安藤優子キャスターを見るにつけ〈安藤さんがあのレオタードを着てハミ尻できるだろうか?(いやできない)〉などと無駄に考察させてしまうほどのインパクトを我々に与えてくれたことは確かです。
ちなみに、マイケル・ジャクソン、プリンスもマドンナと同じ47歳。12年ぶりの新譜。そのプロモクリップで、相変わらず風に吹かれたりして髮をなびかせては妖艶な魔女っぷりを演出していたケイト・ブッシュも、なにげに47歳。そう、実はみなマドンナと同じ1958年生まれなのです。
さらにトリビア的には、彼らの誕生日がプリンス(6月7日)、ケイト・ブッシュ(7月30日)、マドンナ(8月16日)、マイケル(8月29日)と1958年の6月~8月に集中しています。いずれ劣らぬその超人類的なたたずまいから察するに、もしかすると同時期に宇宙から飛来してきた人たちなのかもしれませんが、それはともかく彼らの誕生日から、47年前の夏が今日の大衆音楽業界にとっていかに重要な生産年であったかが伺いしれると思います。一音楽ファンとしては、とりあえず誰かひとりの年齢を憶えておくと、全員の年齢が判るので便利です。
捕捉トリビアとして日本のアーティストを紹介しておくと、石川さゆり、ピンクレディー(未唯)、桜田淳子、岩崎宏美が1958年生まれで同じ47歳。このラインナップを例に出すことで、お茶の間のお父さんお母さんにも、マドンナのあの現役感あふれるダンスフロアっぷりがいかに凄まじいものであるかを理解していただけることと思われます。
なお、元祖肉体派シンガー、オリビア・ニュートン・ジョンの“Physical”については、先日、発売された国内版DVD「Video Gold」に他のクリップともどもタップリと納められているので未チェックの人は是非。また、プリンスもどうやら来年2月にファン待望の「Sign Of The Times」の国内盤DVDが発売される糢様です。5.1chサラウンド&高画質ということで、こちらもいまから待ちきれない状況です。
というわけで、ジューシー&ウエットにお送りしてきました肉体白書。いかがだったでしょうか? 次回からはショービズ界において必要以上に伊達っぷりを満載してしまったオヤジたちの魅力について斜め下から切り上げる「AORちょい不良(ワル)白書」をお届けしたいと思います。こちらもどうぞお見逃しなく!(嘘)