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第14回 ─ カリスマ撤回の柔肌男イグジビットと、引退撤回の鮫肌男DMX

連載
ブラックミュージック ★ 肉 体 白 書
公開
2005/09/08   15:00
更新
2005/09/08   16:49
テキスト
文/一瀬 大志

ある時はサイト・リニューアルの裏側で活躍するスーパー・プログラマー、ある時ははてなダイアリーに〈男のひとり飯〉生活を記録する独身貴族、そしてある時はヒップホップ/R&Bのプロモクリップ映像の世界(肉体)にトコトン魅せられる一男子……一瀬大志がレペゼンする筋肉映像コラム。その名も〈ブラックミュージック★肉体白書〉。今回は改造車番組でお茶の間人気を集めるイグジビット、引退宣言を撤回し新作アルバム発表を控えるDMXについて。

夜中コンビニへ行くときの予想外の涼しさに、すっかり夏の終りを告げられつつある今日この頃。みなさんいかがお過ごしでしょうか? 下手に昼間の格好のままコンビニに行ったりすると、季節の変わり目などおかまいなしにガンガンに効きまくった店内のクーラーに立ち読みもままならなかったりするこの時期、社交辞令満載なビジネス・シーンにおいては、「今年の夏はどこか行かれましたか?」といった 〈夏総括トーク〉がいたるところで繰り広げられたりするわけですが、すっかりどこにも行けずじまいだった私にとって、この夏唯一の収穫といえば、ジェシカ・シンプソンの魅力に目覚めたことぐらいです。

ジェシカといえば、元男子アイドルグループ 98°のニック・ラシェイとの新婚生活に密着したリアリティ番組「Newlyweds」で、常にMTVつけっぱなしの私にとっても露出高めの女子だったんですが、どうも、あの底なしのアホっぷりと、どうしようもないワガママ具合いに、速攻〈典型的な白人アイドル女子〉といった像を結んでしまった私の脳内は、その映像を完全にスルーしてしまっていたようです。

そんなノーガード状態の脳味噌に突如つき刺さったのが、ジェシカ初の主演映画「The Dukes of Hazzard」からの主題歌“These Boots Are Made For Walkin'”のプロモクリップ。もはや見た人にはなんの説明も要らないと思うのですが、あの短パンへそ出しスタイルでの腰振りダンスから、ビキニ姿での欲情的な洗車シーンといったダブルパンチに、この夏、世界中の男子が「アメリカ万歳!」な気分にさせられたのはもっと知られるべき事実だと思います。たった4分間のあの映像によって、これまで彼女をスルーしてきた私みたいな層を根こそぎ掴んでしまったのですから……。ちなみに、bounceの情報によると、近々、彼女のワークアウト・ビデオも出るとのこと。ぜひ、このまま肉体派ビッチ・アイドル路線で突っ走ってもらいたいですね。

■ Xzibit
一方、私がジェシカをスルーしていた頃からMTVで熱心にチェックしていた番組といえば、そう「ピンプ・マイ・ライド 車改造大作戦!」です。カリフォルニアの強い日射しと潮風、そして何よりも所有者本人のそこはかとないダメさ加減により、想像を絶するほどにやられまくった一台のボロ車を、西海岸の車いじりのプロたちが寄ってたかって改造するというこの番組。その奇天烈な改造アイデアと、それを施すメカニックたちのどうしようもない寸劇とが入り混じった構成に、西海岸特有のドライな狂気が余すところなく封入されており、日本に住む我々に、車検制度のないアメリカという国の素晴らしさと恐ろしさを存分に味わわせてくれます。

そして、その番組のホストをつとめるのが〈Mr. X to the Z〉こと、我らがイグジビット兄です。もはや車改造に訪れた家のドアから飛び出してくる喜び勇んだヤングどもを受け止めるためにだけに存在すると言っても過言ではないその肉体。そのダイナミックな飛びつかれっぷりは、ふらりと訪れた日光江戸村で運命の出会いを果たした〈ニャンまげ〉と、その苦労話において意気投合してしまいそうな勢いです。そんな頼れるアニキ、イグジビット。デビューから10年近くも経つというのに、これといった作品に恵まれていないところに、〈「ピンプ・マイ・ライド」のイグジビット兄〉として人気が出てしまったものだから、本人の心中は結構複雑なんじゃないかと勝手に心配してしまうところですが、これまでの可もなく不可もない活動と、その客演数の多さから、すでに隙間芸人(田代まさし)として生きのびる術を意識的に身に着けていることも考えられます。さらに、その愛敬のあるキャラクターと素人いじりもこなすそつのないトークにより、中山秀征や恵俊彰などに代表されるMCキャラとしての地位を固めつつあるのかもしれません。

もし、あのアニキ役がスヌープだったらどうでしょう? いくら陽気な西海岸のキッズといえども、その決して笑わない目と細くて折れそうな体に、全力で飛びつくことなど考えもしないでしょう。また、ガタイがよく、なにげに笑顔がステキな50セントが玄関に現れたとしても、飛びつく瞬間にこれまでのワルな経歴が脳裏をかすめ、本気で抱きしめることにためらいを感じるに違いありません。──そうなのです、この番組は、イグジビットが〈カリスマ性〉と引き換えに手にした〈親しみやすさ〉を発揮しているからこそ成り立つのであり、他のギャングスタ・ラッパーでは決してあのホスト役をつとめることができないのです。

この10月には「ピンプ・マイ・ライド」のファースト・シーズンのDVDが日本でも発売されるということで、同番組を契機に日本でもその人気がうなぎ昇りすることが考えられます。また、ウエッサイのアニキぶりを存分に発揮した“Hey Now!”のプロモクリップもなにげにウケていたようで、今後アーティストとしてブレイクすることも多いに期待できるでしょう。

■ DMX
イグジビットが西のXなら、東のXは〈D to the M to the X〉でおなじみ、〈ダークマンX〉こと、DMX。98年のファースト・アルバム『It's Dark and Hell is Hot』のジャケで見せたその端正な顔だちと黒光りする引き締まった肉体で、すでに当時からストロングスタイルな肉体派として、ただならぬ風格を漂わせていた彼。一度聞いたら忘れないその〈硬度〉と〈粘度〉と〈粒度〉が絶妙にブレンドされたジューシーなダミ声から繰り出される骨太ラップは、筆文字で〈究極の骨付きカルビ!〉と一段大きく書かれている焼き肉屋のおすすめメニューといった感じ。聴く方にもそれなりの体力を要求するそのカロリー高めの作品群は「彼のアルバムを全曲通してノリノリで聴けるならばその日は健康」といった体調判定法も十分通用しそうなエネルギーを秘めています。

中でも究極のアゲアゲ・チューンといえば、2000年リリースの“Party Up”。ニュー・ミレニアム気分で世界中が盛り上がる中、この曲でDMXのファンになったという女子のみなさんも少なくはないでしょう。そんな、彼のキャラクターを強く印象づけるものとして「アウッ! アウッ!」という〈犬吠え〉と、「ワッ!? (What!?)」「ケモッ!(C'mon!)」といった〈セルフ合いの手〉があります。

これらの技を効果的に駆使して、その場のテンションを自己増殖するその姿は、まさに歩く核分裂反応。スキンヘッドに浮きでた血管がそのエネルギーの充填具合いを如実に物語っており、わざわざ「触るとヤケドするぜ」とかありきたりなことを言われてしまった日には、「言われなくてもわかってるよ」とツッコミ返したくなるほどの過剰な肉汁を辺りにまき散らしています。とにかく彼のアルバムをはじめて聴いたときの期待以上のセルフ・アゲアゲっぷりとその闘犬スタイルに、思わず笑いが止まらなかったのは、私だけではないハズです。

2003年の『Grand Champ』リリース後、いったんは引退を宣言した彼ですが、今年6月、ニュー・アルバム『Here We Go Again』のリリースを発表。さっそくデフ・ジャムのオフィシャルサイトに、同アルバムからの新曲、“Pump Ya Fist”、“Give 'Em What They Want”の2曲がアップされたりと、2005年の夏のアゲアゲ感を担う作品として期待も高まっていたのですが、あれよあれよという間に、そのアルバムも10月に延期。とりあえず年内に出ることを願って、デフ・ジャムのサイトで新曲を試聴する日々です。