そもそもPLASTICSの伝説って?
これから紹介するPLASTICSというバンドは、日本の音楽シーンの中で抜きん出て優れていたにもかかわらず、音楽ジャーナリズムからきちんとした評価をされていないバンドである。
PLASTICSは、佐藤チカ、中西俊夫、立花ハジメ、佐久間正英、そして島武実によって結成された。それ以前にパーティー・バンド/パンク・バンドとしての歴史があるのだが、後者2名が加入したことによってこのバンドの奥行きが深まった。つまりフロントの中西俊夫と、それを両側から支える佐藤と立花が動きやすくなった、ということだ。
彼らは〈テクノ・ポップ〉というジャンルにカテゴライズされていたが、多くのそう呼ばれていたバンドたちがすぐに失速していき、いまでは聴くに耐えないものが多いのに比べ、PLASTICSは違う。だからこそ、実際の彼らの音源が今回リリースされたベスト盤『ORIGATO25』にまとめられているので、ぜひ聴いてみてほしい。今を生きる僕たちが聴いてもびっくりするはずだ。同時にリリースされるCD+DVD+アートブック『HARD COPY』には彼らの当時の姿が収められているが、〈世界に通用した〉ということではなく、きちんと言いたいことがPLASTICSにはあり、それがちゃんと伝わるようなクレヴァーなバンドだったのだ、と言える。カラフル、ポップ、なによりもパンク。シニカルだけどユーモラス、メッセージ性溢れた歌詞、60年代のポップスを下敷きにダンス・カルチャーに早くも呼応していたサウンド・プロダクション……。その活動に、現在の音楽シーンで活躍している若かりし日のアーティストやクリエイターたちが大きな影響を受けていたのは事実。
才能があるのだと言えばそれまでなのだが、ポップ・ミュージックというのはただ音楽が良いだけでもダメなわけで、〈カッコヨクなくては〉いけない(例えば、ゆらゆら帝国は〈かっこイイ〉)。
その奇抜なファッションばかりが当時話題になった彼らだが、いまではその音楽だけに集中して楽しむことができるだろう。
彼らのファッションは、現在では原宿の子供たちに受け継がれている。そして、だからこそ〈今〉が、PLASTICSの音楽がより多くの人に受け継がれるべき〈時〉なのだ。