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第64回 ─ WIRE05@横浜アリーナ 2005年7月16日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2005/07/20   20:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/佐藤 譲

今年は前年の二日間開催に対してオールナイト一日間で開催された、石野卓球主宰による巨大屋内レイヴ〈WIRE05〉。揺るぎない実力を誇る常連組に加え国内海外の新世代DJも参加、そしてさらにマンチェスターのオールドスクール・テクノ伝説=808ステイトのライヴ出演も実現!!! 音響、VJ、ライティング、クラウドの波が相まって、夕刻から明け方まで万華鏡のごとく模様をかえた横浜アリーナの様子を光速レポーートします!!

 夏フェスシーズンの幕開けを告げる屋内レイヴ最強のパーティ〈WIRE05〉がいよいよ開催DEATHよ!!!!!!! という訳で私、レポートをすべく、〈テクノ宇宙船〉こと横浜アリーナに突入したのであります、押忍!!!!

 会場に入るとトップバッターのDJ TASAKAが早くもレッド・ゾーンへ突入中! 「男と女はハッシッシー♪」で有名な和田アキ子“夏の夜のサンバ”や、先日リリースした初のオリジナル・アルバム『GO DJ』から“Speaker Typhoon”を披露と、もう大ネタ連発の完全お祭りモードで、いきなりフロアを激震させていく。

 続くハティラスは盟友ジャクソンをMCに引き連れてのDJ。マイクで煽るわ、ベースを弾くわ、一秒たりとも客の足を止めさせないMCとの絶妙なコンビネーションが最高! ふとフロアに目をやると、ダースベイダーのマスクを被っていた人がはしゃぎまくっていてパーティに華を添えていた。

 RYUKYUDISKOは沖縄の民謡衣装に身を包んだ女性ヴォーカルを迎えてのライヴ。“Ryukyudenbu”、“Churazima/美ら島”など沖縄音楽のフレイバーたっぷりの楽しいサウンドに乗せられたクラウドが、通常のダンスから琉球舞踊へと様変わりしていく様はまさに圧巻だった。

エレン・エイリアンは現在のドイツのテクノ・シーンの充実度を示すプレイを披露。マーク・ブルーム“Twenty Nine”、新作『Thrill』からの“Your Body Is My Body”など、エキセントリックなトラックでジワジワと攻めていく。足と手をパタパタさせ、うさぎちゃんのように飛び跳ね、投げキッスをする彼女のキュートさに頬を赤らめた男子は多かったはずだ。

 今年もフードエリアは中華、エスニック、和食と大盛況。冷やし茶漬けの梅の酸味がさっぱりとしていて疲れた身体に心地いい。4Fのサード・フロアではPSPの新作でテクノ・サウンドがふんだんに使われているレースゲーム〈WIPEOUT PURE〉の特設ブースが大盛況。WIRE05スペシャルパックがダウンロードできるとあって、多くのファンが集まっていた。

 ジーンズとTシャツというカジュアルな装いのヘルを見たあと、今年初参戦のヨリス・ヴォーンを体感。血液が逆流しそうなパワフルなハード&アシッドなテクノ・チューンの中に、柔らかいハウシーな曲が巧みに織り交ぜられ、素晴らしくドラマチック! ヒット曲“Incident”がプレイされた瞬間の盛り上がりは本当に強烈で、絶叫が響き渡り、まさにフロアはひとつの巨大な生き物と化していたのだった。

 さあ、メイン・フロアは怒濤のピークタイムへ。Kagamiのライヴは“Tokyo Disco Music All Night Long”も飛び出すド派出なセット。新作『Spark Arts』からの“Sine Wave Highway”ではMegもゲスト・ヴォーカルで出演し喝采を浴びていた。セカンド・フロアでパーフェクトなミニマル宇宙を作り上げた田中フミヤも素晴らしかったし、なにより“It's My Party”ネタのトラックまで飛び出す圧巻のプレイを見せた石野卓球は〈WIRE03〉以来のベストプレイだったと断言したい。

 卓球終了後、会場の視線がライヴ・ステージの方へと向き始める。今回のスペシャル・ゲスト、マンチェスターの伝説のアクト、808ステイトの登場だ。12年(!)ぶりとなるライヴでの来日に高まるフロアの期待に火を灯すようにバンドはいきなりの“Donkey Docter”を生演奏でプレイ。“Cubik”など懐かしの名曲と新曲を織り交ぜつつ、終盤にはみんなが聴きたかったアンセム“Paciffic”も披露!!!!!!! マンチェのユニットらしい終始マイペースな演奏ながら、伝説との邂逅に深く酔いしれた45分だった。

 ヘトヘトになった身体に強烈なビートを注入してくれたのがウエストバムとエイビー・デューク。ケミカル・ブラザーズのリミックスで一躍表舞台に飛び出したエイビーは今年が初の参戦。バウンシーなリズムでジワジワと昇り詰めていくようなハマり度の高いプレイにみんながガッツリと踊らされてしまう。

 お祭り野郎バッド・ボーイ・ビルの裏でフロアを大炎上させていたのが今年のベストとの呼び声も高いシークレット・シネマのライヴ。30分という短い時間ながら超高圧のハードテクノを連発。終了後もヘトヘトになったクラウドがうわ言のように「……最高」とつぶやく様に底知れぬ説得力を感じたのだった。

 注目のサンパウロからの刺客レナート・コーエンはハードテックなプレイ。ヒット作“Rontape”をはじめ、自身のトラックを多くプレイし、クラウドを文字通りぶっ飛ばしていく。その裏のジョーイ・ベルトラムは“Ball Park”からファンの絶叫を誘うレイヴ・アンセム“Energy Flash”まで披露する感涙のライヴで、ハード&ジャッキンな曲で思わず卒倒しそうになってしまった。

 江戸っ子のように切符のいいハードテクノをかけるルーク・スレイター、そしてアガり過ぎてDJブースの上に仁王立ちしたクリス・リービングの音圧を身体に感じながら、セカンドフロアのトリを飾るTobyを見にセカンドフロアへ。今年もくるり“ワールズエンド・スーパーヴァ”、Supercar“Yumegiwa Last Boy”とアンセムをかけ倒し、見事にフロアを極彩色のハッピーな空間に染め上げてくれた。「来年もここで逢いましょう!」というTobyの言葉にあらん限りの歓声で応えるクラウド。ウエストバムらDJたちがブースに現れ大歓声に応えたメイン・フロアのフィナーレと共に今年の〈WIRE〉は幕を閉じたのだった。

 1日のみの開催となった今年の観客動員数は15,000人。テクノリスナーではなさそうなお客さんも多く、〈WIRE〉はより多くの層が楽しめるパーティになっていた。比較的固定したアーティストたちが出演する〈WIRE〉にこれだけ多くのお客が集まるのは、出演するアーティストではなくパーティそのものへの信頼が高まっているということだ。スクリーンに〈SEE YOU NEXT YEAR WIRE06〉の文字が浮かび上がる。周りから拍手と歓声が沸き上がる。そう、〈WIRE〉は来年も続いていく。最高にハッピーな日本随一のテクノ・パーティは、今や最も厚い信頼を得るパーティへとなったのだ。

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