今月からマンスリーで始まる向井秀徳（ZAZEN BOYS）の語り下ろし連載がコチラ! 毎回編集部が設定したシチュエーションにもっとも適する（と思われる）ディスクを向井氏に勝手に処方いただく、実用性に溢れたコーナーです。アナタの生活の一場面を、向井秀徳のフェイヴァリット・アルバムとともに過ごしてみるのはいかがでしょう? 記念すべき第一回目のシチュエーションは〈お花見〉です!! では向井秀徳、かく語りき。
まぁ、花見のときに聴きたいっつっても基本的にきっちりしたサウンドシステムがないですから。コロムビアのポータブル・レコード・プレイヤー2台とか? そんな洒落くさった感じにはしたくないですね。なんか若いデザイナーとかがいそうな（笑）。そういう意味でまずはこれですよ。
ELP（エマーソン、レイク&パーマー）の『Tarkus』。とくに意味はないんですけど（笑）。花見っていうことなんですけど、酒飲んでるときにはやっぱグワングワン頭が回ってるんですよ。頭の回り具合に拍車をかけるようなサウンドがあればなお良い。そういう意味では『Tarkus』の凶悪なオルガン・サウンドでまずはグワングワンと我を忘れるというか、取り乱す（笑）。取り乱しますよこれは。ジャケットもスゴイし、中ジャケもわけわからん。なんかだだっぴろいオヤジのビデオ・ゲームの世界みたいなとこを突っ走ってるっていう。（おもむろに聴きだす）……だいたいこの時代の（71年）アルバムとかってフェイドインで始まるの多いですよね。水の音とか川の音とか。で、突然きますよ。（ここでオルガン・サウンドが爆発）カッコイイすねぇ。でもオシャレにも聴こえる部分もないわけじゃない。これをかけましょうよ花見でね。これは最初にかけたい。
噂の棒ラーメン九州味。花見にもイイかも!?
やっぱ3月か4月とかって寒かったりしますから真昼間がいいんですよ。酒は大量に買っていきますよね。缶ビールをいちいち買ってたら掃除が大変だから、龍の口が付いたボトルのビール買っていきますね。2リットルくらいのやつ。あれ何本か買って、プラコップ、日本酒、一升瓶。焼酎もアリ。でも氷とか水とか一応用意するんだけど、なくなる（笑）。午後ティーのペットボトルに最初から割ったやつを作ってましたよね。午後ティーを普通にくびれの部分まで飲んで焼酎を足すっていう。
で、けっこういい調子になってくる。飲んでるときはサウンドに耳を傾けて聴くことはないから。普通に鳴ってりゃいいんすよね。そのとき後ろでかかっていてほしいのがトム・トム・クラブの『Tom Tom Club（邦題「おしゃべり魔女」）』。これはある意味ちょっとファンシーな感じもありますわね。81年。これはサンプリングのネタによく使われるじゃないですか? だから耳には馴染んでいるし。あの“Genius Of Love”以外の曲もすごいイイですよ。ファンシーといいますけどけっこう殺伐としてるんすよね。音数少ないから。それがカッコイイ。（おもむろに聴きだす）……カッコイイですね。このシンセ・サウンド。ローランドSH-2とかそこらへん。キーボード、シンセの音が全部秀逸ですよ。いいなぁ。すっごいいいなぁ。“Genius Of Love”のラップの部分でカーティス・ブロウとか当時のNYのMCの名前出したり。そういう意味ではNYの最先端カルチャーに反応してたんですよね。トーキング・ヘッズの映画「STOP MAKING SENSE」の途中でいきなりトム・トム・クラブになるところ覚えてます（トム・トム・クラブのリズム隊はトーキング・ヘッズの2人）? ドラムのクリス・フラッツが「さぁこれからトム・トム・クラブを始めるぜ!」て言ってドラムを叩きだして。それがすごくイイ。（おもむろにDVDを見だす）……これジョナサン・デミ監督なんですよね（「羊たちの沈黙」でお馴染み）。かぁっこいいねぇ。いいっすね。（ドラマーのシャウトを真似て）ウーハー!! チェッキラ!! これおもしろいダンスが出てきますよ。花見のときにみんなでこれをやるっていう。カニ歩き（笑）。こういうダンスを自然体でやれるっていうのはカッコイイですよ。
で、場も盛り上がってきたら狂乱節ですからこのアンティバラス。アフロ・ビートで無意味に凶暴になる。怒りをもって。（おもむろに聴きだす）……リズムが絡み合ってる。ホーン隊でもリズムと絡んでえらく多重構造みたいなリズムになってますけども、全体的には芯の太いビートが流れてる。それが酔っ払いにはちょうどいいと思いますよ。裏じゃなくて頭打ちのリズム。シャッ! シャッ!てリズムに合わせて全員で花見の場でやるとけっこうクライマックス（笑）。スペルにすると〈SHOUT〉? ひとりがシャッ!て言い始めたら全員がこうやりだすと。そんな感じで大団円。
▼向井秀徳の近作群
