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第29回 ─ 80年代にYMOが生んだ歌謡曲&懐かしの〈テクノ・ポップ〉な名曲、さらに最新YMO盤を紹介!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2005/03/31   15:00
更新
2005/03/31   18:54
ソース
『bounce』 263号(2005/3/25)
テキスト
文/村尾 泰郎


 アメリカがロックンロールを生んだように、日本はテクノを生んだ。正確には、〈テクノ〉という言葉(ジャンル)とその規格(のようなもの)。80年代、日本が世界に誇るテクノの世界基準として、YMOはシーンに燦然と輝いていたわけで、さながらそれはJIS規格、つまりテクノの安全印だったのだ。そんなYMOのメンバーが手掛けた名産品を、〈歌謡曲〉という切り口でまとめたステキなカタログが登場。タイトルはズバリ、『イエローマジック歌謡曲』ときたもんだ。ベスト・ヒット集としては、矢野顕子“春咲小紅”やイモ欽トリオ“ハイスクール・ララバイ”あたり。テクノ歌謡クラシックスとしては、スターボー“ハートブレイク太陽族”やコズミック・インヴェンション“コスミック・サーフィン”などがもれなくラインナップされた贅沢な3枚組。YMOメンバーが演奏した曲も多く、酒井司優子“コンピューターおばあちゃん”で聴かせる教授のドラムのクールなこと! また、ピンクレディーの曲構成を解析して“ライディーン”を作ったYMOだけにコンセプト作りも見事。ロキシー・ミュージックからヒントを得た前川清“雪列車”なんてハマリすぎです。ちなみにYMO関係以外のテクノ歌謡を集めた『テクノマジック歌謡曲』も同時リリース。筒見京平がテクノに挑んだ榊原郁恵の“ROBOT”や、ジャッキー・チェン主演映画「拳精」のテーマ曲にしてテクノ・ディスコ名曲であるHERO“チャイナー・ガール”などを収録。併せてゼヒ。

 さらに、YMO歌謡曲の代表作もオリジナル・アルバムで続々リイシュー。郷ひろみ『比呂魅卿の犯罪』は、ひろみにデヴィッド・ボウイを重ねた教授のプロデュースで、ニューロマンティックなシティー・ポップが完成。一方、細野晴臣が手掛けた〈元祖テクノ・アイドル〉の真鍋ちえみ『不思議・少女+』では、後期YMOサウンドの〈ビューティフル・グロテスク〉な手触りもアリ。また、高橋幸宏プロデュースによるスーザンのアルバム2枚とシングルをコンパイルした『コンプリート・スーザン』では、フレンチ・ロリータのリオを思わせるキューティー・ポップが炸裂と、三人三様のテクノ・マジックを発揮。ポップ・シーンに落とされた〈テクノ〉という爆弾の大きさをつくづく痛感させられる。

 さらに、ケン・イシイやEYEによるYMOリミックス集『YMO リミキシーズ 99-00 ザ・ベスト』や、細野晴臣の未発表曲“InDo”をDUB SQUADやマスターズ・アット・ワークがリミックスした『InDo』にジュニア・ヴァスケスによるリミックス音源を新たに収録した新装盤、とどめにYMOのライヴ&レア音源を集めたボックス・セット『L-R TRAX』(8枚組!)に至っては、もはや伝統芸能としての風格も出てきたりして。きっとできるぞ、YMO神社。
▼文中に登場した作品を紹介。