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第59回 ─ 最強トリオの理解を深める学習ドリル!!

第59回 ─ 最強トリオの理解を深める学習ドリル!!(2)

連載
360°
公開
2005/03/31   15:00
更新
2006/08/11   19:39
ソース
『bounce』 263号(2005/3/25)
テキスト
文/ホーボー健太

A1:ヨ・ラ・テンゴ(以下、ヨ・ラ)

A2:
●アイラ・カプラン(ヴォーカル/ギター)
 NY生まれ。野球少年(NYメッツの大ファン!)として、ソフトボールに打ち込むかたわらロックに目覚める。多感な時期にはCBGBなどのライヴハウスに入り浸り。パンクから大きな影響を受けつつ、77年頃から音楽ライターとして活動を開始。それでもロッカーになる夢は捨てきれず、84年にヨ・ラを結成。やればできる!

●ジョージア・ハブリー(ドラムスほか)
 アメリカを代表するアニメーター、ジョン・ハブリーの娘として生まれる。ディジー・ガレスピーら有名ジャズメンが遊びに来るような抜群の環境で育ち、やがて絵を学ぶためにアートスクールへ進学するも中退。アニメ作家の姉の手伝いをするうちに、ロックへの想いがムクムクと湧き起こる。友人を介してアイラと出会い意気投合。そして、いまでは良き伴侶にァ

●ジェイムズ・マクニュー(ベースほか)
 ヴァージニア出身。9歳の頃からギターを弾き始める。大学時代はロック・ファンジンを発行、でも頑張りすぎて学校は中退(コラ!)。ハッピー・フラワーズのローディーをしたり、のちにソロ・ユニット、ダンプに発展する宅録を始めたりと、地味にロック業界入り。そんななか、パーティーで知り合ったアイラ&ジョージアに誘われてヨ・ラに参加。

A3:NYのローカル誌「Soho News」「New York Rocker」で健筆を奮う。特に後者では新作レヴュー・ページを担当し、音楽を聴きまくる日々。インタヴューしたことのあるアーティストは、尊敬するレイ・デイヴィスやキッス、ニック・ロウなど数知れず。それでも、夢はロック・ミュージシャンになることだった(初志貫徹!)。

A4:アイラ&ジョージアのフェイヴァリットは数多いが、なかでも大ファンなのはNRBQで、ヨ・ラのステキな伯父さん的存在。そして、両者がカヴァーしたサン・ラーもまた然りで、アーケストラとは共演経験もある。もちろん、NY派ロッカーの水源地、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやテレヴィジョンからの影響は、そのギター・サウンドからも一聴瞭然だ。さらにジョージアが乙女時代に追いかけていたdB'sのパワー・ポップ・テイストや、フィーリーズ(アイラとジョージアが初めて会ったのは彼らのライヴ会場)のアート・パンクな匙加減もヨ・ラの血肉に。そして、彼らがライヴで見せるダンスは、敬愛するジョナサン・リッチマンへのオマージュなのかも。

A5:

『Ride The Tiger』 Coyote/Matador(1986)

  記念すべきデビュー・アルバム。ミッション・オブ・バーマのクリント・コンリーをプロデューサーに迎え、フォーキー&ガレージーなサウンドが初々しい。初期メンバーだったデイヴ・シュラムのギターが柔らかな色合いを与えて、永遠の昼下がりみたいな心地良さ。

『I Can Hear The Heart Beating As One』 Matador(1997)

  さまざまなメディアで97年のベストに選ばれたブレイク・アルバム。93年の『Painful』以降、濃密さを増してきたフィードバック・ノイズの闇。そこから生まれるロマンティシズムと破壊の饗宴が、70分を越えるスケールで展開されている。

『Summer Sun』 Matador(2003)

  フル・アルバムとしては現時点での最新作。ミニマルにしてスペイシー。ゲストに招いたジャズ系アーティストとのコラボレートのなか、ギター・サウンドは控え目に。すべての音が細かな粒子になって混ざり合い、〈ヨ・ラ・テンゴ〉という気配を醸し出す。

A6:UKブレイクの逆輸入バンドといえば、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの時代から多数存在する。最近では、ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブやホワイト・ストライプスなど、いわゆる〈ロックンロール・リヴァイヴァル〉なバンドが目立つところ。でも、そのなかでも強烈なのは、やはりストロークス(写真)の存在。ヨ・ラと同じNYの〈ローカル〉だった彼らも、いまではUKどころか世界的にブレイク。後輩たちもガンバってます。

A7:〈インディー・キング〉としての姿勢を貫いたマタドールの先輩、ガイデッド・バイ・ヴォイセズは、ヨ・ラにとっては良き先輩でありライヴァル。また、CMJ映えするアート&サイケさ、そして不動のメンバーを誇るREM。ポップと前衛のミックス具合が絶妙なフレーミング・リップスが持つ、メジャー/インディーの垣根を取っ払ったような、不敵なマイウェイぶりもヨ・ラに匹敵。果たしてヨ・ラのメジャー・デビューは?

A8:NYのお隣さん、ニュージャージー州ホーボーケンがヨ・ラのホームグラウンド。そのホーボーケンの主(?)ともいうべきバンドがdB'sだ。メンバーのジーン・ホルダーはヨ・ラのアルバム数枚をプロデュースしているほか、同じくメンバーのクリス・ステイミーは今年に入り、ヨ・ラとの合体ユニットであるクリス・ステイミー・エクスペリエンスとしてアルバム『A Question Of Temperature』をリリースしたばかり。また、ヨ・ラの『Ride The Tiger』をプロデュースしたクリント・コンリーは、ボストン・パンクの伝説、ミッション・オブ・バーマのリーダー。同バンドの再結成盤『On Off On』をヨ・ラと同じマタドールからリリースしている。さらに奇才ジャド・フェアとは『Strange But True』を共作したり、異才ダニエル・ジョンストンと電話越しに“Speeding Motorcycle”でジョイントしたりと、とにかくあらゆる伝説/奇才とお友達なのだ。

A9:まずは、ヨ・ラ同様にヴェルヴェッツ・チルドレンであるジーザス&メリー・チェイン。その暴力的なギター・サウンドはシーンに衝撃を与え、シューゲイザー・ムーヴメントの布石になった。そして、その真っ直中に登場したマイ・ブラディ・ヴァレンタインは、フィードバック・ノイズの美学を完成させる。一方、ノイズの霧の向こうに安らぎを見い出したのがギャラクシー500。思えばメンバー構成は、ヨ・ラと同じ男2女1だったりして。

A10:アイラ&ジョージアと同じく、アートとロックに目がないサーストン・ムーア&キム・ゴードンが在籍するソニック・ユース。デンマークのクレイジーなロカビリー・パンクス、キム・ネクロマン&パトリシアが在籍するホラーポップスなど。そういえば、離婚してもいっしょにやってるクワージなんてのも。

A11:89年に設立されたNYのインディー・シーンを代表する老舗レーベル。これまでに輩出したアーティストは、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンやペイヴメントなど、90年代のインディー・シーンをリードしてきた強者ばかり。

A12:専門誌「map」が贈る、日本初の公式ヨ・ラ本「Yo La Tengo Map」。3人のロング・インタヴューをはじめ、メンバー執筆のおもしろコラム(〈アイラの野球〉〈ジェイムズの食べ物〉ほか)や秘蔵のポスター・ギャラリーなど、愛情溢れる一冊。

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