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第60回 ─ SUPERCAR @ studio coast 2月26日(土)2005年

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2005/03/03   17:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/内田 暁男

アルバムことに進化を重ねた〈恐るべき子供たち〉の最終章。過激な挑戦を続け、数多生まれたギターバンドのなかでも飛び抜けて輝かしい軌跡を残したまま、4人の若者たちは最後のステージに立った。全21曲2時間のラスト走行。その道のりとは? また、次ページからは最初期からSUPERCARのA&Rとして密に関わり続けたキューンソニー富樫氏の貴重な証言も合わせて頂いた。見えにくいSUPERCARのアナザーストーリーを紐解いてみてほしい。

開演前にTシャツを買おうと急ぎ足で〈studio coast〉に向かうと、入り口前にチケットを求める無数のファンの姿が。そのなかの一人の女の子がすでに泣きじゃくっていたのが印象的だった。

ステージ後ろのスクリーンに〈Thank you Supercar〉の文字がレーザービームで一筆書きされたあと、“White Surf style 5.”が終わりへ向けて走り出した。スマパン譲りのささくれだった激しいホワイトノイズのうえをまさしくサーフするような断片的メロディー。合唱するオーディエンスに応えるように、ギターのいしわたり淳治が〈White Surf style 5.〉とリップシングしている。突然泣きそうになった。しかし感傷的な気分はこのときが最後かもしれない。続く“FAIRWAY”でミキのコーラスが外れまくったとき、解散ライヴというどうしたって特殊な環境に置かれたメンバーの緊張感が伝わってきた。

“PLANET”“Love Forever”“RECREATION”と次々に淡々と演奏される、これまでのシングル曲を中心にしたセットリスト。新しくバンド・アレンジされた“WARNING BELL”が新鮮な風を吹かせたあとに演奏された“STROBOLIGHTS”で、リードを取るミキのヴォーカルがまたも詰まる。まるで故障だらけのまま走り出した車が、その欠損についに悲鳴を上げたかのようだ。どことなく異様な雰囲気のなか演奏する彼らの姿はどこまでも正直だった。そういう意味でこの日のステージにいた4人は本当に〈いつもとおり〉の4人のままだった。〈ボロボロだな〉なんて思いながらも、それがなんか嬉しかった。

シングル曲中心のなか中盤に演奏されたファースト・アルバム『スリーアウトチェンジ』収録曲“I need the sun”はなかなかライヴで演奏されないだけに、ちょっとしたサプライズ。叙情的なサビメロとユニゾンするようにうねるギターが壮大な雰囲気を形成している。やっぱ最初から並のギターバンドじゃないよ。“Seven Front”ではドラムンベースのリズムにジャンプとともに淳治のギターが斬り込む。この曲はまるでジェットコースターのようだ。両手を上げるオーディエンスの姿は、ちょうどジェットコースターが空中まで昇り落下する瞬間の風景。そしてジェットコースターは一瞬のうちに駆け抜ける。

デビュー曲“cream soda”から“Hello”“Free Your Soul”“STORYWRITER”と続いた後半の流れは一際激しい盛り上がりだった。〈あきらめだけは/夢から覚めても言わないよって/それだけさ〉という“cream soda”の最後の一節はこのラストライヴというシチュエーションにおいても変わらぬ強さで響く。そして本当の終曲もいつもとおり、定番の“TRIP SKY”。ジーザス&メリーチェインのように、轟音がハーシュノイズ化する曲の後半部分でナカコーはギターの弦を緩め始めてメチェクチャにしだし、今日のアンコールが行われないことを暗に示唆する。ダラリとなった弦の一本一本は、この日の、そしていままでの張り詰めた緊張感が解かれていく様のように見えた。マックスにされたヴォリュームのアンプから高音のフィードバックノイズの残響を残し、ナカコーは一礼をしてステージを後にする。それに続いてミキ、コーダイ、淳治がハケて行く。空っぽになったステージとフロアに満ちたキーンと鳴るアンプの音。呆然と立ち尽くすオーディエンス。このときの様子をSUPERCAR第5のメンバー(?)七尾旅人は自身のサイトにこう綴っている。〈スーパーカー。90年代の後半の、ポップミュージックにまつわる一つのミラクルを象徴した一台の車が、走行を止め、奇妙な音を立てている〉。

空中分解する手前で持続されたギリギリの緊張関係が支配するなか、SUPERCARの4人は最後までどこまでも誠実に、正直に、バンドを終わらせたのだ。


SET LIST

White Surf style 5.
FAIRWAY
My Way
PLANET
Love Forever
RECREATION
WONDER WORD
WARNING BELL
STROBOLIGHTS
YUMEGIWA LAST BOY
Sunday People
I need the sun
Lucky
Easy Way Out
Seven Front
cream soda
Hello
Free Your Soul
STORYWRITER
Karma
TRIP SKY

▼SUPERCARのオリジナル・アルバム作品