DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN、SPANK HAPPYなどの活動や、UAやカヒミ・カリィ他数多くのアーティストのサポート、また文筆家としても知られる邦楽界のキーパーソン、菊地成孔(12月25日にはintoxicate extra! 〈Koolhaus of Jazz〉への出演が決定)が、毎月3枚のCDを聴いてレビュー。そしてそのCDの4週間での売上枚数を徹底予想します!
こんにちわー!CDが株券に☆なんないかっなっーっ?な気分。のー!菊地成孔でーす!前回は余りの不当たり続き(T_T)でヤケクソになり毒舌(^_^)v 全開。「もっともっと!もっと酷いこと言って!まだまだ足りないの!」という欲求不満の皆さんからのダメ出しとー!「売れない音楽家風情が偉そうに。死ね」という鬼束ちひろさんのファンの方々からの恫喝をいただきましたー!m(_ _)m もう毒舌やめやめー!(笑)しかーも↓担当者H君より
えー、最近「菊地さんがイントロで引っ張りすぎだ」というクレームを頂きまして、今月は引用&イントロを減らし気味でお願いしたいと思っております
というお達しがありましたのでー!今回はー!どういうわけだかー!「とにかく元気ー!☆」をモットーに、ひたすら元気にー!陽気にー!陰気にー!殺気にー!病(以下略)で、いってみたいと思いますぅー!
ではさっそく、絶対当たってない答え合わせからー!
■RIP SLIME “黄昏サラウンド”
予想枚数 250,000枚 → 売り上げ枚数 71,782枚(発売4週目)
■後浦なつみ “恋愛戦隊シツレンジャー”
予想枚数 100,000枚 → 売り上げ枚数 54,083枚(発売4週目)
■SAYAKA “水色”
予想枚数 40,000枚 → 9,932枚(発売3週目)
※4週目で100位圏内からフェード・アウト オリコン調べ
またもや全ハズレであります。やはり予想枚数が高すぎであります。売り上げ順がリップ、後浦、SAYAKAの並びとなることは予想枚数でも当たっているのですが、全てケタが違う。という致命的間違いを犯しております。まだ決定はしてはいませんが書籍化されることも考えると、この辺りで一発当てておかないと今後予想師として菊地さんが生計を立てていくのは難しいのではないでしょうか。
はーい!もう当てるの完全に諦めましたー!投げましたー!打ちましたー!走りましたー!アーティスト紹介ー!
・長渕剛
今年の夏は故郷桜島にて9時間単独ライヴを開催。7万5千人もの観客を集め話題となった長渕剛です。現在は、デビュー当時の頃からは想像もつかないほどのマッチョな肉体を誇り(1日7時間トレーニングしているそうです)、それに合わせるかのように楽曲の方向性もマッチョイズムを追求している様子であります。この曲は携帯電話のタイアップ曲となっており、本人が初めて出演したCMとしても注目を集めました。
・BoA
韓国出身の女性R&B系アイドル・シンガーであります。オリジナル・アルバムはファースト、セカンド共に100万枚を突破(サードは60万枚超)。本作はタイトルからもわかるとおり、クリスマス狙いのバラードであります。クリスマス&バラードと来れば、これまで以上にターゲットとして女性を狙っているのではないかという推測もできそうです。果たして今作がクリスマスの新たなスタンダード・ソングとなりえるのか、その辺りも含めて分析&枚数予想をしていただけますと幸甚であります。
・サンボマスター
むさ苦しい風貌と過度に情熱が注入された歌唱・パフォーマンスで人気を集めている3ピース・ロックバンドです。松尾スズキの初監督映画『恋の門』で主題歌を務めるなど、サブカル的な方面からの人気が特に強く、いわゆる業界受けするタイプのアーティストなのではないかと思われます。タイトル曲はテレビ東京で放送されているアニメのオープニングテーマです。
以上であります。それでは、今月もよろしくお願いいたします。
ははははーい!では早速元気だけはいっぱい☆でいってみましょうー!!!
■長渕剛 “黄金のライオン”
うひょー!一発目からナガブチでーす!元気ー!筋肉ー!!今東京都内を車で元気に走るとー!五分間に一回はこれの看板にぶちあたりまーす!ハーレーダビッドソン!ウイリー気味!ぱっと見ナガブチが自分で持ち上げて、こっちに投げつけようとしてるかと思うほどっ!筋肉ー!ナガブチは「ぴーぴーぴー」といった擬音の天才ですがー!この曲もシャーララララ!シャーララララ!と、いきなり擬音でーす!気合い入ってまーす!とにかくびっくりしたのは歌詞でーす!曲聴かないで歌詞カードだけ見ると腰抜かしまーすよー!
SHALALA・・・・SHALALA・・・・黄金のライオン
SHALALA・・・・SHALALA・・・・荒野を駆けぬける
頭サビのこれは良いとしてー!次に続く一番の最初が
荒れ果てた地上に立ち
これ直前の「荒野を駆けぬける」と被ってまーす!作詞教室みたいなところだったらバッテンでーす!しかしこんなのぜんぜん余裕なのでーす!全編引用したいぐらいでっすー!
荒れ果てた地上に立ち
空に牙を剥く
吠えても吠えてもただ風が
たて髪を揺さぶるだけかい!!
どひゃー!すごいー!履いても履いてもただパンツが、ウエストを締め付けるだけかい!!かけてもかけてもただメガネがレンズを分厚くしてるだけかい!!飲んでも飲んでもただヘルシア緑茶が、ただ脂肪を分解するだけかい!!!!!!だけかい!!だけかーーーい!!!
でも!でも!ひとたび曲を聴いたならー!歌詞は驚くどころかー!面白いどころかー!違和感どころかー!だけかいどころかー!!全く全~然いけてるのでありまーす!超かっちょいいのでありまーす!天才。ではないでしょうかー!日本の宝!!ではないでしょうかーー!!
ぎらぎら灼熱の太陽を
この手で引きずり出して
俺たちの明日が登るまで
今すぐ希望へ駆け上がれ!!
てにをは誤植ではありませーん!「日本語の体をなしていない歌詞」というのは、過去、特に優れた楽曲/アーティストには付き物。とさえされていましたー!しかーし!こうしたプレモダン(70年代フォーク/ニューミュージック的)な強引さ。を未だ持ち続けているのはナガブチとハマショーだけでしょうー!てにをはが変なだけかい!!!!
マッチョという概念は元々日本には無い物なのでー!いわば輸入文化ですからー!独自な発展を遂げるのも自然でありましてー!武士道イメージとくっついてとてもユニークな形になったりするのですがー!ナガブチはヤザワの様にアメリカ式のキャンプにもならず!有名な独自の歌唱法と相まって極めてオリジナリティー溢れるスタイル!です!最早(筋肉も思想も)ブルース・スプリングスティーンを軽く追い抜き、既にアーノルド・シュワルツェネガー化しそうな勢いです(筋肉も思想も)!
曲は今回の3曲の中でも最もキャッチーでアピアーでーっす!!今も頭の中を黄金のライオンがぐるぐる回っております!故・ナンシー関は「日本人はどんなにあか抜けて見せようとファンシーとツッパリからは逃げられない」と喝破しましたが、渋谷系死すともナガブチ死せず!枚数は、桜島コンサートに行った人が全員買うから7万5千枚+行けなかった人が3万人はいるだろうから併せて!でも7万5千枚だけかい!シャーララララ!シャーララララ!!
■BoA “メリクリ”
うっひょー!今回はタイトルに度肝を抜かれっぱなしなだけかーい!!メリクリ!メリクリー!メーリークーリー!!!(カラ元気に疲れてきました……)
しかもこれは巨匠・康珍化氏が積年暖めてきた〈コンセプト・シングル〉なのだそうです!巨匠すみません!まったく意味解りません!!しかしそんな小さいことは気にしなーい!楽曲はとても素晴らしく、適度な難しさ(平歌が低く、サビは一挙に裏声に)があるのでカラオケで歌うと定番感と高級感が同時に味わえるだけかい!俺は一つのネタをひっぱっているだけかい!!
しかし!この曲もさっきのナガブチも「自身が出演する携帯電話のCMソング」!なのですが!どうやら携帯電話は80年代に戻りたいようですねー!メリクリ!とか黄金のライオン!とか(曲調もね!ニュー・ウェイヴだけが80年代じゃありませんからね!!♪80年代に携帯があったーらなっ!)!50年後は「携帯?80年代?バリバリでしょ。バブルだもん」でオッケー!!でしょう!不自然さなし!!
去年辺りからクリスマスのバラード・スタンダードを狙ってはその場で終わってる曲!!が続いてますから!そろそろ80'Sバラード・マナーなコンセプト・シングルでバッチリ!でしょ!「東京ラブストーリー」みたいなドラマも流行ってることだしー(そういえば前回はそのドラマの主題歌で、しかもワム!でした!ワム!!)。 ずっと~ずっと~そば~に~い~てえ~と、とうとう景気が良いのか悪いのかさえ解らなくなってきた謎の経済大国・日本の世相にぴったり!なコンセプト・シングル!でまったく意味もなく15万枚!(「景気は良い」と早くも信じはじめている人達の数)
■サンボマスター “青春狂騒曲”
どっひょー!聞いたことあるタイトルであります!サニーデイ・サービスの人は怒らなくて良いのでしょうか!(良いのでありまーす。“青春狂騒曲”は、60~70年代に漫画やらフォークやらでさんざん使われた言葉だからね!!)そして内容は衝撃の熱唱!キュートなブサイク君が魂焦がして絶唱!!イースタン・ユースやナンバー・ガールのキュート・鬱抜き・狂気抜き!!の、お茶の間版か!!しかも驚くべき事に、もうリヴァイバルが始まってるのか!それとも伝承なのか90年代!この人達完全な奥田民生スタイルの作曲をします!!(パクリじゃないよ。手法の伝承)ちょっと強引な泣かせるメロディーの転調にコード進行がぶつかる違和感を力ずくで良い感じにー!!(しかも一滴シティ・ポップ感も入ってたりして。ここら辺、椎名林檎のセンスと同じですね。ちょっと知的)弟子なのか!!というほど!!しかも師匠よりハードコア!!男泣き!
それにしても前二者の「年輩のスタッフによる80年代リヴァイバル(或いは時間の停止)」と、ここにある「まだ若いスタッフによる60~70年代リヴァイバル」乃至「中途半端な世代のスタッフによる90年代ノット・デッド(やっぱ時間の停止!)」の三つどもえの戦い!は誰が勝つのか!!そんなこと別にどうでもいいのか!!ま、それはともかくメガネで小太りのブサイク君が魂と情熱はだれよりも清く美しく、命を振り絞るように熱唱!!まだ邦楽フォークロックでいたい人々の希望の星!不器用なようでちゃんと曲は緻密に出来てる!でもメロが今ひとつ憶えられねー!女子ファンがどれだけ付くかちと不安ー!お茶の間までの進出を希望していることが吉と出るか凶と出るか、またしてもまったく意味もなく3万枚(「景気は悪い」とまだ信じていたい人達の数。口から出任せなだけかい!!)。
※来月は菊地氏による2004年総括特別インタビューをお送りいたします。お楽しみに!
▼菊地成孔関連作品を紹介