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第34回 ─ アルゼンチンの新しい波

個性と伝統が交差する新世代アルゼンチンの名盤を紹介

連載
Discographic  
公開
2004/10/07   11:00
更新
2004/10/07   18:20
ソース
『bounce』 258号(2004/9/25)
テキスト
文/小野寺 信二、長屋 美保

JUANA MOLINA 『Tres Cosas』 LAM(2002)
二度の来日、そして平井堅との共演歴もあるアルゼンチン音響派の歌姫、フアナ・モリーナの3作目。膝枕の上で囁かれているようなフアナの歌声や、顔の上に何枚もの透明な皮膜を被せていくようなアコースティックなエレクトロニカ音響に陶然。(小野寺)

ALEJANDRO FRANOV 『Rio』 UO(2004)
フアナ・モリーナ・サウンドの黒幕。シタール、キーボード、ヴォコーダーに自身のふんわりとしたヴォーカルを乗せた、エアープランツのような根なし草気分も緩やかなアコースティック・エレクトロニカ。〈アルゼンチン音響派〉という言葉が気になるならまずはこれを聴くべき。(小野寺)

FERNANDO KABUSACKI 『KIRIE』 glamorous/イーストワークス(2004)
アルゼンチン音響派の代表的ギタリスト=フェルナンド・カブサッキと勝井祐二ほか日本の最前衛ミュージシャンたちが競演した一枚。胎動のようなギター・リフや哀愁ドローン、そしてマッチョなノイズ合戦の後に訪れるカタルシスは言葉に表せないほど凄い。(長屋)


ULISES 『Iluminaciones』 Meta(2003)
映像的なサウンドスケープを描くウリセスの最新作。静謐でリリシズム溢れるピアノ、チェロ、コントラバスの音色に、ムーグ、口琴、ディジュリドゥーが脱力無国籍なアクセントを加える。音と対峙するのが楽しくなるような一枚だ。アレハンドロ・フラノフもシタールで参加。(長屋)


LA PORTUARIA 『Me Mata La Vida』 Universal Argentina(2000)
こんなやつらを野放しにしておいていいの? バンジョーとアコーディオン、ホーンが走り回るルール無用のラテン・ミクスチャー・ロックだけど、インテリ臭もプンプン。R.E.M.を酒瓶で殴ったらこんな感じ? アレハンドロ・ロスによるジャケットも見物。(小野寺)


MARIA EVA ALBISTUR 『Avatar』 Universal Argentina(2003)
シンガー、ベーシスト、コンポーザーである彼女はアルゼンチンのミシェル・ンデゲオチェロ? フォーク・ロックとタンゴが同時に響く奇跡。マリアのウィスパー・ヴォイスがアスピリンの溶けた静かな悪夢の中で泳ぐ。鍵を握るのはフェルナンド・サマレア。(小野寺)

BAJOFONDO TANGO CLUB 『Bajofondo Tango Club』 Vibra/Surco(2002)
アルゼンチン・ロック創生期から活躍するグスタヴォ・サンタオラヤが新世代クリエイターの手を借り、タンゴとクラブ・ミュージックを合体させた一枚。ヒューマノイドも夢精する網タイツの魔力。昨年度のラテン・グラミー賞ノミネート作。(小野寺)


AXEL KRYGIER 『Secreto Y Malibu』 Los Anos Luz Discos(2003)
ハモンドとトランペットがドラムンベースの上で疾走。バックギアで味わうような微妙なスピード感にはジャガ・ジャジストを思い出した。前衛バレエのサントラである今作、どちらかというと義理人情スパイ映画サントラ的。〈キル・ビル in ブエノス〉?(小野寺)

KEVIN JOHANSEN+THE NADA 『Sur O No Sur』 Los Anos Luz Discos(2004)
アメリカ生まれのアルゼンチン人、ケヴィン・ヨハンセンの2作目。ビートルズ的なメロディーにフォルクローレのリズムを採り入れ、大地をしっかりと踏みしめるようなポップスを構築。かなり変わっているけど、懐かしくて優しい味わいだ。(長屋)


EL TUNEL 『Apto Para Instalaciones』 Bau(2003)
ジャム・バンド系グループ、エル・トンネルのデビュー作。エッジの効いたドラム、不穏なベース、ヘッポコでバウンシーなギターがスリリングなジャズから斜陽ロック、歌謡アシッド・フォークへと軟体動物のように変化し、聴覚のツボは押されっぱなしだ。(長屋)

GABY KERPEL 『Carnabailito』 Nonesuch(2003)
アニバル・ケルペルの息子、ガビーが送るサイキック・フォルクローレ。ガビーは昨年には日本公演も行われたパフォーマンス集団、ビーシャ・ビーシャの音楽も手掛けた人物。アルゼンチンの北風小僧寒太郎です、こいつは。よくもこれだけの変態が次々と出現するものだ。(小野寺)


FLORENCIA RUIZ 『Cuerpo』 Florencia Ruiz(2003)
ビョークを引き合いにされることも多いシンガーだが、幼稚園の先生でもある彼女のチャイルディッシュな部分がそう思わせるのか。レスポールによる弾き語りはいたってシンプル。ピアノの音色やループがメリーゴーランドから眺める景色のようにゆっくりと回る。(小野寺)


GOTAN PROJECT 『La Revancha Del Tango』 Ya Basta!/Rambling(2003)
〈ベタでムーディー〉というイメージの強かったタンゴにクールなエレクトロニカを融合させ、世界的ヒットとなったデビュー作。ミロンガやチャカレーラといった伝統的リズムが大胆に再構築されたモダンなサウンドは、まさに新世紀のタンゴだ。(長屋)


FERNANDO SAMALEA 『Compilado 1997/2003+REMIXES』 Los Anos Luz Discos
アルゼンチン・ロックの首領チャーリー・ガルシアのドラマーとして活躍しつつ、バンドネオンに目覚めてからはタンゴをフランケンシュタインと呼ぶ伊達男。蛇腹が軋む音が鉄琴やプログラム音と共鳴する瞬間、新たなタンゴが覚醒する。(小野寺)

SANTIAGO VAZQUEZ 『Raamon』 Los Anos Luz Discos(2004)
カブサッキとの来日の噂もあったパーカッション奏者。チェンバー・ロック的な骨折変拍子で幕を開ける、チベットやらアフリカやら万国パーカッションが無節操なブエノスアイレス発のマジカル・チンドン・ロック。ヨレヨレなヴォーカルが怪しさを倍増!(小野寺)

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