Buffalo Daughterによる、DVDレビュー型コラム。今回も彼らの耳や目に〈ビッ〉ときた映像作品(映画からプロモクリップ、ライヴビデオまで)をご紹介します。第四回は再び、山本ムーグ氏が登場。

山本ムーグさんより届いた近況写真×3。「DJ大人と子供」、「本物のムーグ博士と」、「どのような音が聞こえてくる?」
こんにちは!今年は猛暑で、もはや地球じゃないみたい。小泉でもブッシュでも柔ちゃんでもシャラポワでもいいから、もっと世界を涼しくしてくれ! あ、それは坂本龍一さんのテーマか(尊敬)。さて、今回紹介する2枚は「スクラッチ」VS「モジュレーション」という2大〈音楽技〉対決ディーヴィーディー。では、先攻の「スクラッチ」から。このディスクは、早送り、巻戻し、連続再生を駆使して観るのが、作法でしょ、なんて使命感に駆られて、コスリ・シーンしかちゃんとチェキしてないんだけど、思ったのは、DJトリックって、追及すればするほど曲芸っぽくなっちゃうのはどうしてなんでしょうか? 例えば、「笑っていいとも」に出てくる素人一発芸コーナーみたいで、音楽からどんどんかけ離れてく気がする、飢餓する。それって結構問題DA・YO・NE。
そういった意味では、DJスワンプの姿勢が一番クールでした。あと、初期ヒップホップの人はみんなタイトなジャージを着てて、それがかなりキタ! あれなら着たい!!そんな自分に期待。……腰パン&ダブTはもう飽き飽きです。記号的なキャップもな! あとあと、リアル子供DJがかわいかった。すごく緊張しつつライブやったりして。そういえば、前に渋谷西武のA館&B館の間の路上で「俺達の街の掟は…」とかいうラップを消え入りそうな声で披露してた中学生3人組のことなんか想い出して、なんかホンワリしました。ところでDJの人たちってどうして全員名前の前にDJって付けるんだろう? 他の楽器だったらそんなことないのにね、ギター・スナフキンとかチェロ・ゴーシュとかいないよね、これ素朴な疑問ですわ。
一方、後攻の「モジュレーション」では、電子音楽家たちは突き詰めれば突き詰めるほど、学術的かつハイブロウになってゆくとこがポイント。ケージ、ハウゼン、ピエール・アンリの後継者とも呼べるインテリDJ達などのクレバーな発言が満載で、彼らのMCは説得力ありあり。だたし、これ1998年の作品なんで内容も98年仕様、今とはだいぶ違かった(ガバとかジャングルってどこ行った?)、あとあと古認識も結構目について、例えば当時は'70年代のレアグルーヴをループするのが最先端だったけど、最近はバッハとかをモチーフにかなりのトラックを作るエレクトロニカさんたちが常識。そう考えると、6年間のタイムラグから、この先の未来を予見できる良質なドキュメンタリーになってると思います。あとあとあと、テクノDJと化したホルガー・シューカイの楽しそうなダンス・シーンは必見ですよー。
でもって、今回は7対3で「モジュレーション」の勝ちと僕はジャッジしました。ちなみに同時に見返した「テルミン」はドキュメンタリーながら演劇的な人生の悲哀を感じさせ、最も映画的な印象でしたよ(談)。
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