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第1回 ─ 夏目前! 50セントばりに締めるか、ビザール(D12)ばりに肥えるか?

連載
ブラックミュージック ★ 肉 体 白 書
公開
2004/06/24   19:00
更新
2004/06/24   20:35
ソース
『bounce』 255号(2004/6/25)
テキスト
文/一瀬 大志

ある時は超巨大資本企業のシステム設計に携わるスーパー・プログラマー、ある時はTV Bros誌連載でもおなじみの理系男子コラムニスト、そしてある時はヒップホップ/R&Bのプロモクリップ映像の世界(肉体)にトコトン魅せられる一男子……一瀬大志がレペゼンする筋肉映像コラム。その名も〈ブラックミュージック★肉体白書〉。第一回スタートです!

ブラックミュージックのプロモクリップ映像。それはこの21世紀、人間が持つ根元的な欲望を最もストレートに表し、かつ商業的に成功している唯一のフォーマットだ。美女に囲まれ歌い踊りながら画面の中からこちらをチラと覗き見るアーティスト。その目から伝わるのは

「おまえらもこんな風にしたいんだろう? したいんだろう? したいんだろう?」

というメッセージ。これが、あまりにストレートに突きつけられるため、それをあからさまに嫌悪する人間もいれば、そこに人間本来の欲望を見い出し、素直に(むしろノリノリで)同意する人間もいる。正直に言う。もはや、ヒップホップのプロモクリップにおいて何が発せられているのかなどと細かいことは気にしない。俺がそこに求めるのは

「肉、女、肉、金、ダンス、ダンス、ダンス、肉」

のオンパレードだ。そう、俺は悪いリスナー。自称〈善良なる音楽ファン〉が言うところの〈下品な音楽〉をチャートのトップに送り込む邪悪なハスラー(韻ふみ)。

--というわけで始まりました、ブラックミュージック★肉体白書(通称:肉体白書)。プログラムを書いたり文書を作成したりと、ディスプレイを前に指先のみを振動させる毎日。「これほど奇妙な動きを長時間続けるというのは、人類の進化のレールからまったく外れたところにあって、実は人体の構成上とてもマズいのではないか?」ということに気付いてしまったエンジニア兼会社役員な筆者が、その身体性の欠如を埋めるべく、ブラックミュージックのプロモクリップ・ジャンキーと化し、その魅力を〈肉〉をメインに伝えて行きたいと思っているのがこのコーナーだ。

50 Cent


50セント。光沢ある三角筋&タットゥーにご注目!

やはり最初に紹介すべきは、筆者のトレーニング・ルーム(玄関先)で昨年の〈ベスト筋トレ・チューン〉に輝いた“In Da Club”でお馴染みのこの人、50セントをおいて他にいないだろう。鋼のような上半身を不吉にゆらしながら、その厚い唇から呪文のようなフロウをダラダラと垂れ流す様子に「おいおい、こんなヤバそうな奴どっから連れて来たんだよ?」と観る者を不安にさせた彼。

さらには〈ドラッグディーラー時代に9発の銃弾を受けた〉などの逸話も加わり、もはやギャングスタ・ラッパーとして完成されまくったそのキャラが、いつ明石家さんまの口からエミネムの代わりに名前が出てきてもおかしくないほどの勢いでブレイクしたのは記憶に新しいところ。

そんな彼のベスト・プロモクリップは、やはり筋トレ・シーン満載の“In Da Club”。カブトムシの腹のように黒光りする上半身を天井裏からダラリと披露するオープニングは、昨年のヒップホップビデオのベスト・シーンの1つに数えられ、ランニング・マシーンの上で揺れる彼の胸板にヨダレを垂らした婦女子は数知れず、世界中のB-BOYが、その日の夜から筋トレを始めてしまったほどの影響力を誇っている。

もはやジャッキー映画の修業シーンなみに見るものの筋トレ欲を刺激する彼には、是非ともトレーニング・ビデオを作成し、「俺はこのトレーニングのおかげで命拾いした」などと過去のサグ・ライフ話を交えつつ、オリジナルの筋トレ・グッズと併せて夜中の通販番組で売り出して欲しいのだが、それが実現するまでは、インタビューやビデオクリップを集録したDVD「ザ・ニューブリード」が、期間限定特別価格版として6月23日に再発されたので、それで我慢することにしよう。

D12


D12。写真左から三番目の巨漢(失礼!)がビザール

50セントのブレイクのきっかけを作ったエミネムが、ここにきてようやく自身が率いるヒップホップ・ユニット・D12のブレイクに成功した今日この頃。〈12〉といいつつ、そのメンバー数が6人と知ったとき、
なにげに思い出したのが、プリンスが82年にデビューさせた女子3人組ユニット・ヴァニティ6だ。

ヴァニティ6の場合、その〈6〉の由来が3人の乳房の数の合計と言われてたので、D12の場合は……、タマか? と思い、無駄に爆笑問題の田中に思い馳せて〈B3〉とかいうユニット名を考えてみたりしたのだけれど、どうやらそれは違ったらしく、メンバーそれぞれが別人格(別名)を持ってるから、6×(本人+別人格)=12という、なんだか普通にアーティスティックな答えでした(残念)。

では、さっそくボディ・チェックに行ってみよう。D12で肉体派といえば、なんといってもこの人、ビザール。メンバー中、最も肌の面積が広ければ、露出も多い彼。最新アルバム『D12 World』からのファースト・シングル“My Band”のプロモクリップで、50セントの“In Da Club”の筋トレ・シーンをパクったかと思えば、ジャネットのおっぱいポロリをパロってみたり、セカンド・シングル“40 Oz.”のPVでは、のっけから上半身丸出しで見るものを威圧してみたりと、そのビジュアル的な破壊力をバックに画面狭しとやりたい放題。

とりあえず、腹を丸出しにしてラップするファット・ボーイは、それだけで「いいモノを見た」という満足感を与えてくれるので、未見の人は是非DVD付きの限定版をゲットして、プロモクリップもろともチェックして欲しい。

というわけで、ヒップホップの世界は鍛えるか太るかのまさに2つに1つ。中途半端にタルんだ体では脱ぐことさえ許されない厳しい世界なのだ。今後も、新旧交えてブラックミュージックが誇るその華麗な肉体の世界へ誘いたいと思っている。次回まで筋トレして待て。