bounce編集部員がお届けするコラム・コーナー。今回は趣向をかえて〈オトナのアニメ〉をご紹介。SUPERCARのジャケットでもお馴染みのアノ人から手塚治虫まで、再評価熱が高まる日本のアート・アニメ作品をご紹介します。

「TANAAMISM2~田名網敬一・映像快楽主義 1971-2002 」より
みなさん、SUPERCARの新作『ANSWER』はお聴きになりましたでしょうか? 聴いてない方、とりあえずお店でジャケだけでも(いや、もちろん音も)チェックです。このやたらと脳細胞を刺激するポップアート曼陀羅をデザインしたのは、70年代から活躍を続ける伝説のグラフィック・アーティスト、田名網敬一。イラストレーション/デザイン/版画など、さまざまなジャンルでその強烈なセンスを発揮してきた彼は、日本版「PLAYBOY」誌の初代アート・ディレクターを担当していたことでも有名。そんな彼が手掛けた実験アニメが現在DVD2タイトルにまとめられてリリースされているんですが、その強烈な内容といったら、もう! どちらも70年代から2002年までのワークスで、デジタル・テクノロジーが発達した現在以上のマテリアル美学とトランシーな世界が、ぎゅーぎゅーに詰まっているのです。それはまるで色彩とイメージのスワッピング・パーティー!!

「YOKOO FILMS ANTHLOGY 64-65 -横尾忠則 アニメーション選集 64-65」より
もともとこうした日本の実験アニメの世界を切り拓いたのは、漫画家・久里洋二、デザイナー・柳原良平、イラストライター・真鍋博が結成した〈アニメーション三人の会〉。草月ホールにおいて定期的に作品を発表していくなかで、田名網や横尾忠則(!)らが参加するようになっていきます。その先駆者、久里洋二の作品は、田名網とは違ったアヴァンギャルドさを持ちながらも、人なつっこいところが魅力。風刺とユーモアを忘れないその作風は、まさに〈大人のマンガ〉と呼ぶにふさわしいオモシロさです。

「哀しみのベラドンナ」より
さて、こうした実験アニメの運動に触発されたのが〈メインストリーム・オブ・メインストリーム〉手塚治虫。 彼もまた虫プロを通じて数々の短編実験アニメを製作しますが、長編においても〈アニメラマ〉と称した〈大人のアニメ〉を手掛けるようになります。それが最近まとめてDVD化となった「千夜一夜物語」「クレオパトラ」「哀しみのベラドンナ」の3作。どれも濃厚な大人のロマン(イイ響き!)に溢れているのですが、なんといっても問題作は〈ベラドンナ〉! 村井国のイラストを大々的にフィーチャー、静止画像を巧みに動かしながら、アシッドな妖気が漂う逸品。村上隆はコメントで「正直、エロすぎる」と言ってますが、ホント、最エロです。長山藍子のファズがかったあえぎ声に、思わずヴォリュームを下げました。エロい! でも美しい!! 主題歌も耳について離れない!!!
というわけで、いまやハリウッドを凌駕する日本のアニメ。こんなオトナな横顔もあったんですね。
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