bounce編集部員がお届けするコラム・コーナー。今回は編集部のUKニューウェイヴ担当(?)が気分を少し南東に向けて、ベルギー、フランス、ドイツのニューウェイヴ名盤をご紹介します。
70年代末から80年代なかばに、パンク・シーンから生まれた〈ニューウェイヴ〉。アイデア勝負!、アート歓迎!、そしてパンク譲りのDIYなその姿勢は、ロックに新しいスタイルを生み出したのですが、あまりに時代と密着しすぎたため、いまでは徒花的な捉えられ方をされることもままあります。でも、ですね、だからこそ捨て身の鋭敏さやパンクに対するパンクな姿勢もあったのでは、とニューウェイヴ世代は思うのです。ナツメロではなく21世紀ロックのルーツ・ミュージックとしてのニューウェイヴ(強引!)。そんなわけでbounce3月号(2月25日発行)では、おもにUKシーンを中心に〈Discographic〉として紹介する予定ですが、ここではUKを取り巻くヨーロッパのニューウェイヴ・シーンを旅してみたいと思います。
まずはベルギー。クレプスキュールというレーベルがありまして、タキシード・ムーンやイザベル・アンテナ、フレンチ・インプレッショニスツ、アルカディアンズなど、ヨーロッパ的な洗練と実験を感じさせるアーティストを紹介していました(ネオアコ度高し)。なかでも『From Brussels With Love』はレーベルを代表する名コンピ。突然、ブライアン・イーノやジャンヌ・モローのインタヴューが収録されているとこなんて、もう~!! 本作に愛を捧げるようにコンパイルされた『Crepusclule for Cafe Apres-midi』もブリュッセルの夕暮れがいっぱいです。同じくブリュッセルを拠点にしたクラムド・ディスクからは、ハネムーン・キラーズ『Les Tueurs De La Lune De Miel』なんてロリータでキャバレーでアヴァンポップな名盤もありました。
ほかにも数年前、突如再評価されたテレックスなんてテクノ・バンドもいましたが、彼らがデビュー作でサポートしたのがフランスのリオ(ここで舞台はフランスに)。このロリータ+テクノなリオ嬢のほかには、フレンチ・ポップ+テクノなミカドなんていうテクノ・ユニットもいました。ミカドはクレスプキュールからリリースしていて、リオと同じくベルギー・コネクション。この子犬ライクな2組に対して狩人ぶりを見せるのがメタル・アーベインで。リズムボックスとファズギターのみでケンカを売るボンジュールなスーサイド。名前を変えたドクター・ミックス・アンド・ザ・リミックス時代の『Wall Of Noise』は、いまなおウルサくて垢抜けない不良盤です。
でも、ヨーロッパでもっとも肉体派ニューウェイヴの名産地といえばドイッチュ(ビューン、とドイツへ飛行機の飛ぶ音)! ではないでしょうか。奇蹟の、というより宿命の再結成を果たした黄金筋肉隊、DAFやリエゾン・ダンジュルスはまさに肉弾(ビート)の集中砲火! そうかと思えば、ディー・ドーラウス&ディー・マリーナス名義で少女合唱団を引き連れてデビューしたアンドレアウス・ドラウや、ピロレイター(デア・プラン)なんてキッチュなテクノもあったりして。そうしたジャーマン・パンク~ニューウェイヴ・シーンを2枚にまとめたコンピ『Verschwende Deine Jugend』は、老舗アタ・タクの仕事だけに充実の内容。S.Y.P.Hやクラップス、ディー・トードリッヒ・〈致死量〉ドーリス、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンなど強面が並ぶなか、個人的にはトミー・スタンフとの〈再会〉に鉄の涙を流したのでした。
こうしたアルバムのほとんどは、ここ最近、続々とリイシューされたもの。ウルトラヴォックスの曲名をもじるなら〈ニューヨーロピアン〉なこのサウンドは、いまもなお〈ニュー〉の看板を降ろしてはないのです。でしょ?