DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN、SPANK HAPPY、Tokyo Zawinul Bachなどの音楽活動、また文筆家としても知られる菊地成孔(最初で最後のポップス・ソロ・シングル“普通の恋”絶賛発売中)が、毎月3枚のCDを聴いてレビュー。そしてそのCDの4週間での売上枚数を徹底予想します!
遅ればせながら明けましておめでとう御座います読者の皆様。初詣の願掛けの絵馬に「今年こそこの国の株券がシングルCDになりますように。それと僕が、なんていうかものすごいお金持ちになりますように」と書かせて頂きました。わたくし、菊地成孔の当コーナーですが、前回は年末特別編ということで、編集担当諸君と新宿御苑前のウエ○ディー○でダベり倒す楽しい一時を過ごさせて頂きましたが、今回からは通常営業。兜町もかくやという株価予想の修羅場に、兜の緒を引き締めまして(兜町だけに。ああ!ごめんなさいっ!明けましておめでとう御座います!!)突撃したいと思います。
さて、恒例の答え合わせ。ですが(今回は連載第2回目の答え合わせです)
■LOVE PSYCHEDELICO “MY LAST FIGHT”
予想枚数 20万枚 → 売上枚数 33,133枚(発売4週目)
■モーニング娘。 “Go Girl ~恋のヴィクトリー~”
予想枚数 100万枚 → 売上枚数 110,973枚(発売4週目)
■氣志團 “SECRET LOVE STORY”
予想枚数 30万枚 → 売上枚数 34,261(発売3週目) ※オリコン調べ
氣志團は4週目に100位圏内からフェード・アウトしたため、発売から3週分までの数字を使用しました。
やはり編集担当のH君の指摘通り、きっちり10倍!(笑)どんな予想屋だ(笑)、かえって凄いのかも(笑)。といった情けない具合ですが、もう前々回から導入した〈予想数の1掛け〉方式(何か、戦争が始まるときのインフレ感に憧れているような感じだ・笑)でやっておりますので、そろそろ答え合わせも100点満点に成る日も近いでしょう。
と、前置きが長くなりました。今回レビュー&予想させて頂くのは〈男の子グループ三連発〉です。僕は、男の子のグループというのは、誤解を恐れずに言えば、それこそビートルズから含めても構いませんが、ホスト集団だと思っております(ソロシンガーは男娼だと思っております。水商売全然問題なし。最高。俺だって完全にそうだもーん)。特に今回は、マーケット・ターゲットが OLさんや女子高~大生、といった、いわばカタギの、しかも最大の市場と闘う戦士達ですので、敬意と期待を込めながら試聴させて頂きました。
■ゴスペラーズ “街角-on the corner-”
「『On The Corner』ってまさかマイルスのあの名盤の事は知っての上で名乗ってんだろうなあテメエ等オラ」なんてことは一切言わずにですね(笑)、敬意と期待を込めて聴かせて頂きましたが、素晴らしい歌唱力と、和製ブラックミュージックのお手本。と言っても良い、米製ブラックミュージックの構造をきちんと踏まえた楽曲構造でした(ヘッドのメロディーがややチャゲ&飛鳥みたいな、独特に邦楽的な動き方をしますが、それは一瞬で、あっという間にソウル、 R&Bのバラード構造に入ります)。
しかし、うっとりとしながらも僕が拭いきれなかったのは、当連載第2回目の、LOVE PSYCHEDELICOの時にも書いたのですが「この人達には、もっと素晴らしい曲があるんじゃないかな。余裕なのかな?」という気持ちでした。街それ自体を擬人化(擬神化。に近い)し、街が数々の出会いと別れを見守ってきたので、僕は過去の失恋を素晴らしい物だったと認めつつ、力強く次の街角に進む。という手法も、彼等にとって特別な新味とは思えません(因みに、僕のソロ・シングルとしてこれと同日の1月28日にリリースされたシングル“普通の恋”も、同じ手法で街を擬神化しています。ゴスペルの伝統ですね)。
とはいえ、新年一発目のシングルだからといってやたら新味ばかりを求めたがるのは、読み師である僕個人の病症でしょう。そう、今回の3組は〈10年以上続いているグループ〉という共通点も持っているのです。ショービズには、つまり疑似恋愛の需要の中には「ずっと変わらないあなたでいて」という側面が、有る意味、髪型や服装をどんどん替えて翻弄する女性達よりも男性側に強く求められている。という、いいのかそれで?というほどにかーなりオールド・ジェンダリックな認識と共に5万枚。
■GLAY “時の雫”
さあGLAYです。GLAYと言えば(繰り返し強調しますが、敬意と連帯感を持って言っているのですよ)ホストの皆さんが、実際に具体的にコピーの対象にしていても全くおかしくない、あのGLAYであります。僕は実は、彼等の歌をまともに一曲聴いたこともない人間なんですが(すみません本当に不勉強で)、これは驚きました。バルトークもかくやと思わせる、マニアックな和声の長い弦楽イントロ(ああ、溝口肇か。アレンジ。なるほどな)から始まり、一転して始まった曲は、フォークだかロックだかニュー・ミュージック(そういうものがあったのです。昔)だか、とにかくゴスペラーズとは対照的に、〈邦楽のお手本〉の様な構造です。世界中探しても、こういう構造の音楽はアジア、特にアセアン諸国にしか存在しないでしょう。アジアン・ミュージックではなく、アセアン・ミュージック。クアラルンプールでも、台北でも、ソウルでも、北京でも、彼等はNo.1 ホストの名を欲しいままにするでしょう。
とはいえ(以下、前の三段落目をコピペしてください。脳内で)ダリックな認識と共に8万枚。
■スピッツ “スターゲイザー”
スピッツ。愛玩犬。しかもプードルでもブルドッグでもない彼等は、今回最も〈ホスト感〉の薄い、しかしどう考えてもホストであります。「マサムネです。本名なんですよ。正宗」、「やあだあかっこいい。古風っぽくない~? 結構あーしそういうの好きかも~」という会話が聞こえてきそうな、絶対にわざと〈せつない感強調〉の為の冒頭のブレスであります(ブレスはかなり直接的に性的記号ですが、ブレスに関しては、 GLAYは正調、ゴスペラーズは歌唱力の凄さのために控えめ。スピッツが最もさりげなく、かつ作為的です)。弱くて、星ばっかり見ている少年性だって、そりゃ店に一人ぐらい居ないと店長も困るでしょう(笑・どこにいるんだ店長は。オリコンの社長か)。
とはいえ(以下、またコピペしてください。しつこいようですが、本当にしなくていいんですよ・笑)ダリックな認識と共に……、でもなあ、これ『あいのり』の主題歌でしょう? でも、あいのり(そして、そのミューズであったEvery Little Thing)自体が、中低値安定の様な気がするからなあ。という迷いと共に7万枚。
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