TELEVISION
『Marquee Moon』 Elektra(1977)
ロバート・メイプルソープによるジャケットに写る神経質そうな4人組。音楽をアートとして、パンクの衝動性や内面に潜む歪みまくった感情を直接的な暴力ではなく、研ぎ澄まされたサウンドで表現した。代表曲の“Marquee Moon”はNYの夜を聴き手に強引に植えつけてしまう名曲で、解散したナンバーガールもライヴのSEで流していた。最近リリースされたリイシュー・ヴァージョンには、当時あえてアルバムから外したという“Little Jewel Johnny”を収録。(米田)
RAMONES
『Ramones』 Sire(1976)
金太郎飴、金太郎飴……と思いながらも、つい何度でもそこにむしゃぶりつきたくなってしまうパンク界の横綱金太郎。〈技はひとつあればイイ〉とばかりにズバズバ繰り出す〈3コードで1分半〉の永久不滅なラモーン・パンク節は、気づけばメンバーの半分が他界してしまったいまも、いや今後も覆されることのナイある種憧れの手本! エネルギーの放出感も凄いけど、サーフ・チックで切なさ満点な、グッとキまくりメロディーもこのうえなく素晴らしすぎ!!(ヤマダ)
PATTY SMITH
『Horses』 Arista(1975)
現在もバリバリのマイペースで活躍し、日本で直接ステージを観る回数も増えてきたパティ・スミス。74年のシングル・デビュー以前から街頭演劇やポエトリー・リーディングなどの活動をしていたパティを語る時、〈言葉〉や〈詩〉を切り離すことはできない。タブーなどないパティの表現能力。自己表現のために選ばれた言葉は鋭く研がれている。ジョン・ケイルのプロデュースによる本作は、パティが自分の言葉を〈歌う〉ことでより鋭さを増している。(米田)
TALKING HEADS
『Talking Heads:77』 Sire(1977)
ブライアン・イーノやロバート・フリップにも愛されたNYの知性派、トーキング・ヘッズによるファースト・アルバム。一度聴いたら忘れられないデヴィッド・バーンのヴォーカルと、荒々しさとたどたどしさが混在した彼らのサウンドは、このアルバム以降さらに変化を見せていく。クラッシュがそうであったように、〈パンク〉という言葉で連想される音楽性に留まらない懐の深さ、引き出しの多さは見事。バーンの変態的狂気の芽がここにある。(米田)
RICHARD HELL & THE VOIDOIDS
『Blank Generation』 Sire(1977)
ボロボロのTシャツに安全ピンといういわゆるパンク・ファッションは〈俺のモノだ!〉と言い張るヘル兄貴の1作目。〈空白の世代〉なんてクールなタイトルどおり、これぞ空っぽでボアダムなすべての若者が発するリアルな叫びの象徴! ニヒルでスノッティーな兄貴のヴォーカルと、掻き鳴らされるギターの狂演にシビレまくる“Love Comes In Spurts”は、純パンク・ロックとしても指折りの大名曲! 両乳さらけ出しのナルなジャケも、兄貴ならイカすぜ!!(ヤマダ)
BLONDIE
『Blondie』 Chrysalis(1976)
小悪魔的魅力とパンキッシュなイメージのデボラ・ハリーは、ウェイトレスやバニーガールをしながらステージに立つのを夢見ていた……というように、ダークなイメージがありがちなNYパンクのなかでもひと味違う雰囲気を持つブロンディ。USよりも先にUKで火がついた本作は、その後世界的にブレイク。NYアンダーグラウンド・シーンのなかでは異色ともいえるポップで軽快なサウンドは、80年代に入るとパンクという範疇を超えて評価されていく。(米田)
SUICIDE
『Suicide』 Red Star(1977)
まず素敵すぎるグループ名が心に刺さる。そして、どんなに激しい演奏かと思って聴けば肩すかし。いや、激しいのだが、それはパンク=ギター・サウンドという図式を超えたもの。ヴォーカルのアラン・ヴェガと、サウンドを構築するマーティン・レヴの2人によるスリリングなノイズ攻撃。野蛮なエレクトロニック・サウンドによるアンチ・スタイリッシュな快感。それはエレクトロニカやポスト・パンクの源流となり、現在も脈々と受け継がれている。(米田)
THE DICTATORS
『Go Girl Crazy!』 Epic(1975)
鶴見五郎ばりの出で立ちで〈愉快なロンドン♪楽しいロンドン♪〉ポーズをキメているヴォーカル、ハンサム・ディック・マニトバの強烈なジャケ写(ばかり)が鮮烈な、75年デビュー作。こちらはMC5を源流とするNYパンクのロックンロール開発部長的存在なのだが、評価されるのはいつもニューヨーク・ドールズやラモーンズばかり。だが、リヴィエラズの“California Sun”のカヴァーを先に手掛けていた事実から察して、ラモーンズの先生はコイツらなのだよ!!(ヤマダ)
DEAD BOYS
『Young Loud & Snotty』 ワーナー(1977)
知的でアートなNYパンク・シーンに、ストゥージズあたりを源流とする痴的な血を流し込んだクリーヴランド出身の暴れん坊主! 大名曲“Sonic Reducer”や“What Love Is”などの、アルバム・タイトルどおりに若くて激しくてチンピラっぽさ満点なヘヴィー・パンク・ナンバーが吹き荒れまくるこのファースト・アルバム。最高にエモーショナルなパンク・バラッド“All This And More”では、のちに開花していくポップ・センスも匂わせている。(ヤマダ)
TUFF DARTS
『Tuff Darts!』 ワーナー(1978)
タイトルに〈!〉が付いてるわりには、そんなにインパクトないよなぁ……なんて低い評価はもうヤメ! ロバート・ゴードンが在籍していたことでも知られるが、そんなことより、むしろ〈パワー・ポップ〉という言葉が力を持つ今こそ、彼らの〈音〉にズームインすべし! “Who's Been Sleeping Here?”や“Here Comes Trouble”を筆頭に、キラキラしたメロディーを随所にちりばめた最高にポップでロックンロールな唯一作。やっと時代が追いついた?(ヤマダ)
JOHNNY THUNDERS & THE HEARTBREAKERS
『L.A.M.F.』 Jungle(1977)
もはや〈ルーズでワイルドなロックンロールの象徴〉といった印象の強い、〈永遠の背番号13〉ことカリスマ・ジョニーが残した大名盤。ルーズとはいえ、ニューヨーク・ドールズ時代から化粧っ気もグラマラスな要素も差っ引いて、よりラウド&ワイルドな男のドライヴィン・パンクを聴かせているのが本作だ! “Born To Lose”や“Chinese Rocks”などの王道ナンバーに加え、文句ナシでビンビンにノれる“One Track Mind”も最高!! 酒がありゃなお良し!!(マダ)
NEW YORK DOLLS
『New York Dolls』 Mercury(1973)
パンク夜明け前、最高にケバケバしくてロックンロールだった5人組。中心人物はヴォーカルのデヴィッド・ヨハンセンとジョニー・サンダース。どこから見てもドラッグやってますよね?的な立ち居振る舞い、そして、当時の流行りだったグラム・ロックそのまんまのファッションに小気味よいギター・サウンド。トッド・ラングレンのプロデュースによるこのデビュー作は、セックス・ピストルズらUKパンク勢にも影響を与えた。NYパンクを語る時に欠かせない存在。(米田)