bounce編集部員がお届けするコラム・コーナー。秋、冬と季節が移り変わるうちに、AUDIO ACTIVEの新譜やらジャー・シャカの来日決定やら……ダブの冷気が日本列島を直撃している様子。というわけで今回はbounce編集部のダブ・マスター(マッド・プロフェッサーとも言える)が世界中のダブ、の一部をご紹介します!
みなさん、ダブはお好きですか。僕は大好きです。でも、そこで言う〈ダブ〉とは規定範囲がバカみたいに広く、「はて、ではアナタのお好きなダブとはどんなブツです?」と続いてしまうはず。そんで、ここではダブ・ミュージックのなんたるかに文字数を費やすのではなく、世界各国のダブあれこれをちょこっと覗いてみることにしましょう。まあ、世界ダブ選手権みたいな感じで……ハイ、スタート。
☆ ジャマイカ
まずはダブの発明者、キング・タビーから。音の足し引きと過剰なサウンド・エフェクトによって彼が70年代初頭に生み出した〈ダブ〉という表現スタイルは、世界中のヤバいもの好きに衝撃を与えました。89年に殺害されるまで、時代の波に乗ったり乗れなかったりしながら、ゲットー臭がプンプン漂うようなキラー・チューンを量産したのでした。まさに永久欠番ものの偉人ですな。
☆ イギリス
70年代後半のパンク・ムーヴメントとも共闘してドープなダブ・スタイルを生み出したのが、エイドリアン・シャーウッド率いるON-U。数多くの名盤を残してきたこのレーベルですが、なかでも強引とも思えるパンキッシュなダブ・サウンドを編み出したクリエイション・レベルを押しておきましょう。最近紙ジャケでリイシューもされたので、まずはご一聴を。
☆ ドイツ
ドイツといえばベーシック・チャンネル~リズム&サウンドでキマリでしょ。レーベルでありユニットであるここんちからはゲルマン魂が静かに燃えるストイックなダブワイズがたっぷり。個人的にはジュニア・デラヘイなど〈!〉がいくつあっても足りないようなシンガーが大挙して押し寄せた『Rhythm & Sound W/The Artists』がお好み。
☆ トルコ
トルコにダブなんてあるの?って声も聴こえそうだけど、イスタンブールのハチャメチャ楽団であるババズーラとUKのダブ・キング、マッド・プロフェッサーが組んだ『Ruhani Oyun Havalari』もヤバい!! 民族楽器の音色がグニャングニャンにねじ曲げられた4次元のターキッシュ・ダブ。ちなみにコレをリリースしてるダブルムーンってレーベル、ソートーにキテます。
☆ アフリカ
アフリカ代表として挙げたいのはエチオピアのシンガー、ジジが2001年に発表した『Gigi』のリミックス・アルバム『Illuminated Audio』。ジジはザキール・フセインらによるタブラ・ビート・サイエンスにときたま参加したりする歌姫で、かのビル・ラズウェルの奥様です。ってことで、『Illuminated Audio』はそのビル・ラズウェルがダブ化したもの。奥様の歌声はほとんど消えちゃってますが、端整で丁寧なダブ・ミックスがとても気持ちいいですね。エイドリアン・シャーウッドの『Never Trust A Hippy』が好きならバッチリ。
……ってことで、本当はあと5か国ぐらい紹介したかったんですが、文字数も尽きたようなのでこのあたりで。でも、最後にひとことだけ言わせてもらえるなら、ダブとはスタイルでも手法でもないってことを強調しておきましょう。上に挙げた作品のいくつかは、いわゆるダブのスタイルとはかけ離れたものかもしれないけど、単にルーツ・レゲエにダブ・エフェクトをカマしたものだけが〈ダブ〉と呼ばれるべきではないのですよ。続きはまた近いうちに!