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連載/コラム

第1回 ─ YOSHII LOVINSON、中島美嘉、ORANGE RANGEの3枚を分析!

連載: CDは 株券 ではない ― 菊地成孔の今月のCDレビュー&売上予想

掲載: 2003年10月03日 18:00

更新: 2003年10月03日 19:03

文/菊地 成孔

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(9月25日にニューアルバム『Structure et force』を発売)、SPANK HAPPYで活動、また文筆家としても知られる菊地成孔が、毎月3枚のCDを聴いてレビュー&売上枚数を予想。

 閲覧者の皆様初めまして。菊地と申します。僕は売れない音楽家なのですが、今月から畏れ多くも発売前の CD を聴いてはその売り上げ枚数(とりあえず初動。としましょうか)を予想する。という形のレビューの連載を始めます。題して「 CD は株券ではない」。株で大儲けしようとしている日本人が戦後最も少なくなっているであろうこの時期だからこその企画といえるでしょう(良く意味が分からないと言えるでしょう)。

YOSHII LOVINSON “TALI”

  「有名バンドが活動休止、あるいは解散し、3年ぐらい後に有力メンバーがソロになったとき(或いはその逆)の売り上げ数を算出する公式」みたいな物はあるのでしょうか?(業界内とかにありそうだな・笑)ビョークの様な世界規模の例外を除けば、そうですねえ。全く何の根拠もない(わけでもない)数字ですが「3分の1に落ちる」という風に僕は漠然とイメージしています。ですから、この盤は THE YELLOW MONKEYのピーク時の3分の1。と予想したいのですが、肝心のイエモンのピーク枚数を全く知らないので(最後のアルバムに参加までしてるのに・笑。こんな奴の連載ですからね。鼻毛でも抜きながら読み飛ばしてください。女子も)実数は編集部の方に代入して頂くとして(編集部注 推定90万枚。なのでこの盤の予想枚数は30万枚とします)、このシングルからは、僕のそのイメージ(3分の1)を越えるサムシングがあるかと言えば無く(曲が悪いとか言う意味ではありません)。むしろ、モロそのイメージまんま。でした。

 それよりも、最近プロトゥールスや自宅スタジオ等の普及によってもたらされる「本人一人録音作品」による自閉性が生み出す、奇妙な詞性。が、吉井氏にさえ宿っていることに興味を持ちました。この曲は勿論のことラヴソングであり、歌ってなかったら女に刺されていたとしてもおかしくないようなキャラである吉井氏の面目躍如たる、プレイボーイにしか書けないリアリティ満点の歌詞(“TALI”というのはその詞で踏んでいる韻。なのですが、まさかインド語の皿のことや、英仏語のタリズム=魔除け。の意味ではありますまい)なのですが、いきなし「育子 BABY I LOVE」というのでした。僕は育子という人のことはまったく知りません。昔からのファンなら知っている誰かのことなのでしょうか(奥さんなのかな)?それにしても「育子」。一人で部屋に篭もると、こういう事を言い出す物なのでしょうか。

中島美嘉 “雪の華”

  驚異的な楽曲です。今やミリオン・ゲッターとしての安定感さえある中島美嘉さんですが、この曲では、何とピッチ(音程)が正しく歌われています。大きな転換期と言って良いのではないでしょうか。中島さんと言えば、クォーター・フラット(歌の音程が半音の半分だけ常に低い)という、日本人には希有なダークな音程が、そのルックスや声質と奇跡的にマッチングした好例として、初期の宇多田ヒカルさんと並び、数百万の人々を魅了(同じく、或いは逆に、クォーター・シャープ。半音の半分だけ常に高い。という現象は、ジャパニメーション文化での基本となっており、この国のフェミニズムは、半音の更に半分の高低を巡って何かを具現しているとも言えるわけです)していたというのに。これは髪型やメイク、露出の時のはしゃぎ方を変える等というレヴェルのイメージ・チェンジではなく、巨大な資本を掛けた大博打と言っても良いでしょう。

 良く、テレビのクイズなどで、有名人の写真の、顔の一部だけをすり替えた写真を見せ、さあ、どこが本物と違うでしょう?といった物がありますが、あのとき出題される写真と、この歌は似ています。楽曲自体は、今年最後のスローバラード・スタンダードに成ってもおかしくはない素晴らしい物ですが、裏声を駆使し、ピッチが全くフラットしていない中島さんの歌は、中島さんのようで中島さんではない様な気分にさせられます。しかし、この大博打に失敗し、売り上げが落ちるなどと言うことはあり得ますまい。大好きな恋人がプチ整形し、少しだけどこかが変わったとして、しかもそこが彼女の最大のチャームポイントだったとして、あなたはその恋人をすぐに捨ててしまうでしょうか?140万枚

ORANGE RANGE “ビバ★ロック”

  沖縄は米軍嘉手納基地そばコザ在住、平均年齢19歳。3 MCとギタートリオという若干奇妙な編成ながら、もう既にサウンドが聴こえてきそうな「沖縄ロック」のグループですね。古くは紫から新しきは HYまで、沖縄発のロックならば何でも大好きな(沖縄以外の人間が沖縄にアダプトするのは何でも大嫌いな)僕なので、試聴する前からもう何か立ち上がっちゃったりして準備万端。だったのですが、聴き終わった(5曲入りマキシも全部)現在、若干の腕組み状態になっています。曲の冒頭で、例の米兵のランニング・トレーニングの時のかけ声(「フルメタル・ジャケット」などで有名な)から始まるのですが、その歌詞が「オレンジレンジを知ってるかい?/かーちゃんたちには内緒だぞ/可愛いあの娘も聴いてるぜ/ハイウェイ飛ばすにゃもってこい」というのです。これは80年代にあった任天堂の、同じ米軍のラントレのかけ声を使った CM「ファミコンウォーズを知ってるかい?かーちゃん達には内緒だぞ」のパロディもしくな無邪気な記憶です。今「沖縄の、米軍との関係を連想させる音楽」は、大きな転換期に来ているのかも知れません。

 彼等の、レンジの低いコーラスやレイドバックしたビートに乗せられるコミックソングぎりぎりの(電グルやスチャは、彼等にとって、郷愁の対象だったりもするようです)、しかしどうやら「人種なんか気にするな、自分は自分だ。元気に生きよう」といったテーマの歌詞を聴くとき、彼等の「無邪気ぶり」が、大人たちに作られた物ではなく、無邪気であることの邪悪なまでのパワーを獲得できるかどうか、プレスキット(宣伝資料)にある〈「アメリカン★ロック」は更にパワーアップして「ビバ★ロック」に生まれ変わった!〉という一節が、僕のような意地悪な人間が跳梁する世界で「自粛?」と思われなくなるまで突っ走って欲しいという願いを込めて7万枚

▼菊地成孔関連作品はこちら

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