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第6回 ─ ようこそ! プログレ桃源郷へ

連載
鈴木惣一朗の貝がらラジオ
公開
2003/09/18   16:00
更新
2003/09/18   17:13
ソース
『bounce』 246号(2003/8/25)
テキスト
文/bounce編集部

神話的ともいえる壮大なサウンドに包み込まれる快感! 〈プログレ〉は、ロックが見つけた桃源郷だ!!

みなさん、こんにちは。〈貝がらラジオ〉のお時間です。第6貝はプログレッシヴ・ロックについてお届けします。まず〈プログレッシヴ〉とは何か? 〈革新的〉という意味ではあるんですけど、要するに大仰で、芝居じみていて、曲が長~いロック(笑)。子供ながらに〈ちょっとダサいな~〉と思いつつ、ナゼかその神話的世界に酔っていたんです。そんな70年代当時に、〈UKプログレの3美神〉と讃えられた(!)のがイエス、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)、キング・クリムゾンでした。先月のハード・ロック同様、ニューウェイヴ/パンクの台頭と共に葬り去られてしまうプログレなんですが、僕も10年以上、彼らをまったく聴かない時期がありました。でも90年代にオーブやKLFといったテクノ系アーティストを耳にした時、そこにプログレを〈聴いた〉んです。そして、決定打がサントラ『Buffalo '66』。そこで、久しぶりにイエスの〈燃える朝焼け〉を聴いて、いかに彼らがカッコよかったかを、ヴィンセント・ギャロの耳を通して知るわけです。そして真っ先に買い直したのが、イエスの『Relayer』でした。ではまずそこから“To Be Over”をお聴きください――(1)

(1) YES 『Relayer』 Atlantic(1974)
オリジナル・メンバーのリック・ウェイクマンやビル・ブラッドフォードも不在の本作。でもパトリック・モラーツというブラジル人シンセ奏者が入ったことで、ブラジル音楽にある複雑さや、呪術的なテイストが英国ロックと混ざって異化作用が起きている。そこに驚かされました。

このイエスと並ぶ〈3美神〉のひとつ、EL&P。彼らはキース・エマーソンのオルガンを主体としたジャズ&クラシック・ロック的な側面や、グレッグ・レイクの英国田園フォーク風味、カール・パーマーによるコージー・パウエルみたいな激しいドラムが混ざり合ったバンドでした。おもしろいのは、プログレ・バンドはたいていアルバムのなかで2、3曲、遊びの曲を入れていて、EL&Pの場合、アメリカン・ルーツ・ミュージックが好きなキース・エマーソンが、自分の趣味で無理矢理ラグタイムっぽいナンバーを入れてたんです。それが小さい時からスゴく好きで。だから僕は、キース・エマーソンからホンキー・トンクを学んだ(笑)。ではそんな彼らのアルバム『Trilogy』から“The Sheriff”を――(2)

(2) EMERSON LAKE & PALMER 『Trilogy』 Castle(1972)
〈とても大袈裟なバンド〉っていうイメージがある彼ら。でも本作は、3人それぞれのテイストが表現されつつも、全体を通して聴くと、ちょっとソフト・ロックを思わせるような質感で統一されていて、それが魅力的なんです。そういった点でも侮れない一枚!

そして、プログレを代表するバンドといえば、なんといってもキング・クリムゾン! 子供の頃、彼らのデビュー作〈クリムゾン・キングの宮殿〉を難しいなァ~と思いながらも、一生懸命聴いていたのです。でも〈風に語りて〉とか〈月の子〉といったフォーキーな曲ばかり気に入って、テープにまとめたりして……(笑)。クリムゾンがどんどんヘヴィーになっていっていくなかで、そういった安らげる曲は消えていきます。そして、安らぎを求める僕が行き着いたのが初期クリムゾンのメンバー、イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズのデュオによる『McDonald And Giles』でした。2人が恋人を連れて歩いているというヤキのはいったジャケなんですが(笑)、そこから醸し出されるピースフルな雰囲気に惹かれて聴いて見ると、これがまさに天国。プログレにしてはシゴキの少ないアルバムで、この作品を愛した僕は、プログレ・ファンとしては甘チャンでした(照)。では、そんな素敵な作品から“Is She Waiting?”を――(3)

(3) McDONALD AND GILES 『McDonald And Giles』 Atlantic(1970)
これは泣けましたね! 最初に失恋した時に聴いたのが“Is She Waiting?”でした(笑)。その後、ニック・ドレイクやティム・バックリーなんてアシッド・フォークのミュージシャンの作品を聴くようになると、この作品のことを思い浮かべたものです。

こうしてプログレ桃源郷に入り込んだ僕。これまで紹介してきた作品に通じる〈ファンタジー感〉を探している時に友人に薦められたのが、イタリアのプログレ・バンド、チェレステでした。まず名前がいい! チェレスタっていう楽器があって、僕の大好きな楽器なんです。オルゴールみたいな可愛い音で、自分のレコーディングでは必ず使っています。最近ではビョークも使っていましたね。でもその楽器と、このバンドのサウンドは何の関係もありません(笑)。ただチェレスタの変わりにメロトロンがフィーチャーされていて、その響きがとても印象的。メロトロンってプログレ・ファンにはたまらない楽器なんです。では最近、紙ジャケでリイシューされた『Cheleste』から、“Giochi Nella Notte”をお聴きください ――(4)

(4) CELESTE 『Celeste』 キング(1976)
メロトロンとアコースティック・ギターが絡みながら、リズムレスでとても穏やかな世界が生み出されている本作。いわゆる〈音響系〉が盛り上がっている時に、このアルバムを聴いてみたのですが、そういったシーンのサウンドととても近いものを感じましたね。

さて、プログレの王道から少しハズれたところで大好きなのが、マイク・オールドフィールド。その代表作が映画「エクソシスト」のサントラとしてもお馴染みの『Tubular Bells』です。なので、恐い音楽かと思って買って聴いてみると、これがキレイ。〈一人で多重録音して作り上げた驚異のアルバム〉という触れ込みもあって、当時はワクワクしながら聴いてました。でも実際にはトム・ニューマンという優秀なエンジニアと共に作り上げた作品だったんですね。マイクは『Tubular Bells』のヒットがよほど嬉しかったのか、定期的に続編を作り出していくのですが、その最新盤が最近リリースされた〈2003〉です。ではそこから“Introduction”をドウゾ――(5)

(5) MIKE OLDFIELD 『Tubular Bells 2003』 Warner Bros.(2003)
DVD付きとなったシリーズ最新作。映像は、ジャケに映ってる奇妙なオブジェが動き回ってるだけ(笑)。でもアルバムは5.1チャンネルでレコーディングされていて、サラウンド効果もバツグン。サウンドにこだわるマイクだからこその出来映えなのです。

とまあ、今回紹介した〈プログレ〉って、クラシックやジャズといった〈純音楽〉をロックが吸収していったアメーバみたいなジャンルなのです。かつてロックは、フォークやブルースといったルーツ・ミュージックとは仲良くしても、〈純音楽〉に対しては煙たがってたんですね。ところがプログレはそれを吸収していった。だからリアルなロック・ファンからはバカにされていたのですが、なんでも吸収しちゃうこのノンジャンルな無邪気さが僕は気に入ってたんです。独特のジャケでひいちゃうことはあると思いますが、そこは乗り越えて(笑)、ぜひ聴いてみてくださいね。ということで、来月もお楽しみに~。

鈴木惣一朗
WORLD STANDARDとして活動するかたわら、最近では新バンド、RAMもスタートさせるなど、エレクトロニカからルーツ・ミュージックまで幅広い音楽性を発揮する音楽家。身近な名盤を紹介した「ワールド・スタンダード・ポップ」など著作も手掛け、その活動は多岐に渡る。9月18日にリリースされるハナレグミのニュー・シングル“ハンキーパンキー”(東芝EMI)では、アレンジ&プロデュースを担当。RAMのメンバー、高田漣、青柳拓次も参加してます!

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