「グロテスクとは、イマジネーションを駆使し、芸術や自然のなかから非日常的なものを生み出す行為」と本文中でマリリン・マンソンが語るように、〈グロテスク〉というイメージを最大限に利用し、究極のエンターテイメントに昇華させた先人たちがいる。ライヴや作品へ〈グロテスク〉なメソッドを注入することは、独自の世界観を作り上げるのに手っ取り早く、かつ有効な手段であるに違いない。〈怖いもの見たさ〉などと言われる、人間の心理を素直に突いたものだからだ。
そこでまず紹介しなくてはいけないのが、黒魔術崇拝を前面に押し出したオジー・オズボーン。70年代のブラック・サバス在籍時代から継承されているこのコンセプトは、社会的に非難された時期があったものの年月を経て究極の形となった。
そしてさらにわかりやすい形で提示してみせたのが、アリス・クーパーである。おどろおどろしいメイクで大蛇を抱えて登場。〈生きたニワトリを喰いちぎった〉〈ステージに投げられた排泄物を食べた〉など、嘘とも本当ともつかない数々の逸話を残している。
ヴィジュアル的なインパクトと高い音楽性を結実させたキッスも外せない。オールド&ヤング・ファンがともに狂喜乱舞した来日公演も記憶に新しいところ。
彼らすべてに言えるのは、過去に紆余曲折はあったものの、いまや愛すべき存在となっていること。幼少の時期に多大な影響を受けた若い世代が、彼らのコンセプトをより現代風のサウンドで継承している事実も見逃せない。本国での受け止められ方を検証しはじめれば、宗教観などに抵触するような気もするが、その解説はまたいつの日か。
▼文中に登場するバンドの代表作を紹介。