ロンドンの反戦イベントにアーティストが集結

イラク攻撃がすでにカウントダウンに入り、緊迫した状態が続いていた3月15日、ロンドンでは大規模な反戦コンサート「ONE BIG NO」が行われた。当初予定されていたミレニアム・ドームからシェファーズ・ブッシュ・エンパイアに会場は変更になったものの、チケット2,000枚は ほぼ完売。会場には〈STOP THE WAR〉〈NO WAR ON IRAQ〉などの文字がプリントされたTシャツ姿の人も多く、ロック・キッズから親子連れ、中年夫婦と年齢層もさまざま。隣にいたカップルはデモ行進に参加した際、このコンサートを知り大急ぎでチケットを取ったという。グラストンベリー・フェスティバル創設者の娘、エミリー・エヴァンスが中心となり、賛同するアーティストたちに声をかけ、その結果、ポール・ウェラーを筆頭に、イアン・マッカロック、トラヴィスのフラン・ヒーリー、ベス・オートン、エヴァン・ダンドゥー、フェイスレスのマキシ・ジャズらが無償でステージに立った。
ステージ中央には〈NO WAR〉の大きな文字が映し出され、ピアノやアコースティック・セットがメインの決して派手とはいえるものではなかったが、シークレット・ゲストとして参加したコールド・プレイのクリス・マーティンはイアン・マッカロクと“Walk On The Wild Side”のカヴァーで会場は一気にヒートアップ。加えて、オノ・ヨーコ、エルトン・ジョン、デヴッド・グレイ、バッドリー・ドロウン・ボーイ、詩人のベンジャミン・ゼファニアからはビデオ・メッセージも届けられた。ポール・ウェラーのアンコール演奏で幕を閉じたのは22時過ぎ、約4時間に渡る、濃厚なかつ意味のあるイベントとなった。
そしてもうひとつは、米英軍のイラク侵攻のニュースを受けた翌日の3月20日、ロンドンの巨大クラブ、ファブリックではジェームズ・ラヴェルを中心に、反戦クラブ・イベント「Wrong War」が開催された。この日は著名DJ総出演に加え、アンクルの新曲が初公開との噂もあり、早めに足を運んだが、外にはすでに長いキューが…。一見、いつもと変わらない週末の夜の光景だが、ひとつ違うのは、みんなが口々にイラク攻撃のニュースやテロ脅威を話していること。中に入るとすでに3フロアともフル稼働で、すでにパルプのジャーヴィス・コッカーがDJプレイ中。ブラック・サバスやステイタス・クォーなどのハードロック・ナンバーでクラウドの胸をわしづかみにし、イベントの盛り上がりが最高潮に達した夜中すぎ、今夜の主役、ジェームズ・ラヴェルがブースに姿をみせ、続けてイアン・ブラウンがステージに登場。アンクルの“Be There”、イアンの“If Dolphins Were Monkey's”の後、ついにアンクルの新曲“R.E.I.G.N.”を初披露、会場はどよめいた。他のフロアでもXpress2、リチャード・フェアレス、デイヴ・クラーク、スクラッチ・パーヴァーツ、コールドカットのジョナサン・ムーア、ハウィーBなどのDJ勢が入れ替わり立ち替わりプレイ。パーティーは午前3時まで続いた。また「ONE BIG NO」と同じくこの「Wrong War」もすべてアーティストやDJは無償で出演、収益のすべてはCND(核兵器廃絶運動団体)や反戦団体に寄付される。

これまでCNDの広告塔となりマッシヴ・アタックの3Dと共に活動を続けてきたデーモン・アルバーンはブラーの新作『Think Tank』のジャケ・デザインをグラフティー・アーティストで反戦活動家でもあるBANKSYに依頼。シングル“Out Of Time”のビデオも反戦を訴える政治色の強いものになるそう。また、クラッシュのミック・ジョーンズとジェネレーションXのトニー・ジェイムズによる“Why Do Me Fight?”、DJシャドウとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのザックによるコラボレーション“March Of Death”など、アーティストたちの〈Anti-War〉運動もますます活発になりそうだ。(Tamami Yamaguchi / London)