こういうプロセスを経ながら、「こういうリミックスにしてやろう」と思い立ったのは2人とも次に語ってくれたタイミングでのことだったらしい。そして実際のリミックス・ワークがさまざまな苦楽を伴って進んでいったようだ。
JIN「つまり、マルチを聴いて浮かんだアイデアで作ったって感じだったんですよ。もともと漠然としたアイデアも、あったにはあったんですが、マルチを聴いた途端にブワッと湧いてきたって感じです」
山下「俺もそうですね。最初は2~3日で仕上げよう、なんて思ってたんだけど、マルチを聴いたら考え方が変わっちゃったもん」
JIN「そういえば、一応テンポをキープするためのクリックもマルチに入ってはいたんですよ。最初はそれに合わせたらしき叩き方をしているんだけど、2番のサビを越えたあたりから恐ろしく走ってきて、コイツら燃えてんなー、みたいな(笑)。リード・ヴォーカルも歌い上げちゃって。実際の現場はどうなってたかわからないんですけど、まあ、みんなノッてるんですよ。だから、こっちは打ち込みで作ってるのに、オリジナルはギンギンに走ってるから、スタジオでそれを合わせるのが大変で大変で。一音一音ハメていくみたいな感じで。それが時間がかかりましたね」
山下「俺のほうは、とりあえず昔のファンクっぽくしたかった。モーリス・ホワイトとフィリップ・ベイリーのリード・ヴォーカルのバックを僕が担当してるみたいな感じで。で、とりあえず前奏、歌、後奏で……フェイド・アウトじゃなくてパキッと終わる。実際オリジナルより分数が短くなってるんだけど(笑)、ポップスとしてポンッと仕上がるように狙いました。ただ、リミックスの〈re〉は接頭語の〈again〉でしょ。ミックス・アゲイン。リミックスは様式美なんかじゃないんですよ」
アルバムのなかには、例えば“Fantasy”をリミックス(というより、手法的にはリエディットに近い)したブレイズのように、いい意味でオリジナルへの忠実性にこだわった人もいる。しかしながら、彼らのようにEW&Fへ注ぐ愛情はそのままに、オリジナルに縛られることなく、自由な着想で行われたリミックスが同居しているのも本作の大いなる面白味のひとつだ。ライナーノーツにもあるように、リミックスという固定観念から飛び越えた、時間を超越してのEW&Fとの共演/セッション、それが実現した奇跡的な瞬間を彼らのリミックスは堂々と伝えてくれている。
対談参加者によるリミックスの原曲を収めたオリジナル・アルバム。
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