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第15回 ─ Mr. LADY(ミスター・レディー)

連載
U.S. LABEL GUIDE
公開
2002/08/08   15:00
更新
2003/04/09   12:51
ソース
『bounce』 234号(2002/7/25)
テキスト
文/小林 英樹

最終回──〈ライオット・ガール〉を後方支援するレーベル

 ハギー・ベアー、ビキニ・キル、ブラットモービル、そしてスリーター・キニーの前身であるエクスキューズ17とヘヴンズ・トゥ・ベッツィーなどなど、90年代初頭に姿を現したガールズ・パンク・バンド……そう、〈ライオット・ガール〉なんて呼ばれてましたっけ。当時はただのブームとして語られることが多く、まったく思想の違っていたホール、L7あたりもその一派に入れられておりました。特にここ日本では〈ブームのひとつ〉みたいな感じで、終わりにされちゃった感が強いですね。しかし事実は逆だからおもしろいし素晴らしい。そもそも〈ライオット・ガール〉勢とは、音楽を通してフェミニズム、同性愛、政治、文化などを考え、語り、そこからさまざまな活動を展開していくのが基本理念なので、音楽のスタイル云々で語られるものではないわけです。ファンジンからアート、討論会、そしてもちろんライヴを通して、彼女たちは日々一般社会と闘っているわけです。そんな活動を支援しているのが、今回紹介するミスター・レディーです。

 レーベル・オーナーは、チーム・ドレッシュというバンドをやっていたカイア・ウィルソンと、彼女のパートナーであるタミー・レイ。ファースト・リリースは98年のことで、カイアのソロ・アルバム『Ladyman』。その後、これまたカイアの新バンドであるブッチーズを経て、レ・ティグレ、タミ・ハート、サラ・ドーハー、ハガードなど徹底的に女性アーティスト作品を発表。音楽的にみれば幅広いラインナップながらも、根本にパンク精神がどっしり構えているから、それぞれにものすごく説得力があるのです。

 ここ日本では、フェミニズムとか同性愛なんて言葉だけで引かれてしまう雰囲気もまだまだありますが、アメリカにはわれわれにはわからない問題や差別があるようです。そういうことを理解したうえで、ミスター・レディーの扉を開けてみてはいかがでしょう?〈知っていて損することなし!〉です!

 実はこの連載も今回が最終回。長い間ありがとうございました。しかしこれからも、自由なインディー・ネットワークは拡がっていきます。そしてこのネットワークこそ、等身大の音楽文化なのだと私は思っています。