岡村靖幸のトリビュート・アルバム登場! 自身に捧げられた作品を聴いた岡村ちゃんはどんな顔したんだろう……?

岡村靖幸のアルバムを紹介。上段左から、87年の『yellow』、88年の『DATE』、89年の『靖幸』、下段左から、90年の『早熟』『家庭教師』、95年の『禁じられた生きがい』(全てエピック)
この歳(30代前半)になっても、ブルーハーツの歌詞がいまもフツーに染みてくるのは、なによりシンプルな言葉で綴られてるからなのかも……なんてことを友人としゃべってたら、その友人が、ふと「この正反対にいるのが岡村靖幸なんでしょうね」と言った。ファミコンとかディスコとかテレクラとか、世相を反映するような言葉がふんだんに織り込まれた岡村靖幸の歌。いま聴いても、10代の当時に覚えた青春でセックスでファンクで六本木なキラキラした世界への憧れと、そこに手が届かぬことへの悶々とした思いがこみ上げてくる──しょーもない体験談だけど、当時しがない県立高校に通うバリバリ童貞だった僕は“イケナイコトカイ”の<彼女の Love,Sex,Kiss 朝からずっと待ってる>っていう切羽詰まったシャウトでマスターベーションできたぐらい……岡村の言葉を借りれば<俺のShockとRockとSex!>ってぐらいの衝撃を、彼の作品から感じた人は多いんじゃないか?
「あなたのエピソードはとてもいいですね。普通はいろんなものに頼ったりしがちですが、そのころいかにイマジネーションが豊かだったかがわかります」。
はあ、お恥ずかしい話で……って、え? 岡村ちゃん本人!? そうです、最新コメントを織りまぜてお送りしてます! 前置きが長くなりましたが、そんな岡村靖幸へのトリビュート・アルバムがついに完成! シンガー・ソングライターの朝日美穂がたったひとりで立ち上げたこの企画。まずは昨年、朝日と直枝政広でEPをリリース。そして2年越しでアルバムまで漕ぎ着けたという熱意に応えるように、ひとクセもふたクセもある面子が集った充実作に仕上がった。トリビュートされた当の岡村靖幸自身はどんな感想を持っているんだろう?
「僕よりトリビュートされるべき方がたくさんいる気がしてリアリティーがありませんが、とてもありがたいと思ってます。どの作品もフレッシュな驚きに満ちてますね」。
たしかに、アクの強いオリジナルに囚われない、自由な解釈によるカヴァー・アレンジは<フレッシュな驚き>を感じさせるものばかり。けれど、このトリビュートであきらかになったのは、彼の作品が時代性を感じさせるキーワードにまみれているのに、ポップ・ミュージックとしての普遍性や煌めきをいつまでも失っていないという事実。冒頭で引き合いに出したブルーハーツが、多くの人の心にある原風景としての青春模様を描いていたのだとすれば、岡村の場合は妄想の中で描かれた青春といおうか──妄想はいつまでたっても妄想のまま──それが、フレッシュさを感じさせる最大の要因になっているのかもしれない。では実際、岡村自身がポップ・ミュージックを作るうえで、重きを置く点はなんなのか?
「とても難しい質問ですね。僕はとても感動すると平常心でいられなくなり<泣く>か<笑い>ます。だから僕の作品を聴いたとき、平常心を失って<泣く>か<笑う>か、なんでもいいのですが、そんな気分にさせるようなものを作りたいと思ってます」。
岡村靖幸がいま、どんなことに泣き笑いし……その感動に突き動かされてどんな歌世界を描くのか? プロデュース・ワークや断続的なシングルだけじゃなく、現在の彼の音楽を思いきり堪能したい!……本作を聴いて、そんな思いを強くする人も多いはず。で、いつまで待てばいいんですか?
「もう少し待ってて下さい。発表できる曲は80曲くらいあるのですが……」
VARIOUS ARTISTS
『どんなものでも君にかないやしない 岡村靖幸トリビュート』
いつかでると思ってたけど、ようやく出た! 岡村ちゃんのトリビュート・アルバム。参加アーティストは、くるり、HARCO、flex life、クラムボン、栗コーダーカルテット、イルリメ、ニーネ、直枝政広&ブラウンノーズ、 Lyrico、朝日美穂、BLACK BOTTOM BRASS BAND with Tarzan Boys & Girls。ジャケットほか、江口寿史による描き下ろしイラストも満載。