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第8回 ─ Chapter-008 ROYAL SESSION(SPIRITUAL JUICE x トリカブト)

連載
THE NEW ADVENTURE OF HIPHOP
公開
2001/12/27   21:00
更新
2002/08/25   16:38
ソース
『bounce』 228号(2001/12/25)
テキスト
文/高橋荒太郎

――ヒップホップ・アクトの個性を求めて、今回も特別篇でお届け!!

HIP HOP ROYAL 2001 SPIRITUAL JUICEとトリカブトのロワイヤル予習&復習セッション

HIP HOP ROYAL──ユウザロック★のナビゲートするヒップホップ秋の陣。2000年10月25日、東京・日比谷野外音楽堂(96年の〈さんぴんキャンプ〉と同会場!)で第1回が開催された。そして……

【SPIRITUAL JUICE】
Dr.PUZZLE、super Yaji、Z.O.E、ATOM、数珠FLOWの5人組。98年ごろから、現在入手不可能な自主制作カセット『TMA』が渋谷・宇田川町を中心に話題となり、以降『TMA2』『5つの世界~DrumとRapのススメ~』などリリースを重ねる。2001年に『ミュージック・キューブ』でデビュー。文系アブストラクトな毒特の音楽性には定評がある。今回の〈HIP HOP ROYAL 2001〉では東京・リキッドルームに出陣!


【トリカブト】
地元・西東京の幼馴染みや学生時代の同級生であるSMALLEST、SHINO DA LORD KNOWS、BAQUERATTAH、GON THE LESSの4MCに、DJ大自然を加えた5人組。デビュー前から数々のイヴェントや自主制作盤で話題になり、2001年に『EXTRI EXTRA』でデビュー。4MCの掛け合いを持ち味とするライヴ巧者で、〈B-BOY PARK〉にも2年連続出場。〈HIP HOP ROYAL 2001〉では大阪・MOTHER HALLに登場!

例年になく認知が高まり、盛り上がりを見せる日本国内のヒップホップ・シーン。そのような状況のなかで、今年はとくに新世代の台頭が目立つようになった。そこで、昨年も好評だったビッグ・イヴェント〈SPACE SHOWER TV HIP HOP ROYAL〉に出演する、SPIRITUAL JUICEとトリカブトというフレッシュな新世代グループ同士の座談会を開催! SPIRITUAL JUICEからはATOM、super Yaji、Z.O.E、数珠FLOW、トリカブトからはSMALLEST、SHINO DA LORD KNOWS、DJ大自然が参加してくれました。

――お互いの交流が始まったのはいつごろ?


SPIRITUAL JUICEの自主制作カセット。左から、98年の『TMA』、99年の『TMA2』

Z.O.E「3年くらい前に自分たちのイヴェントに呼んで、それが最初かな」

SMALLEST「うちらも仲のいいラッパーとかいなくて、それでドキドキしながら行ったんだけど、その時みんな優しくて(笑)」

DJ大自然「ライヴで〈先月はカッコイイのをやられたから、今月はやりかえさないと〉とか(笑)」

――お互いのスタイルは違うけど、それぞれの魅力はどんなところにあると思いますか?


自主製作によるトリカブトの99年作『鳥兜』

ATOM「トリカブトはいつでも誰でも聴ける感じ。ヒップホップが好きな人なら絶対に好きだなっていう、いい意味での聴きやすさがある。4MCのバランスもいいしね」

SHINO DA LORD KNOWS「スピリチャルは、言葉ひとつとってもおもしろいよ」

ATOM「うん。ホントに良いライバルだと思う。トリカブトがいてくれないと、オレらちょっとヤバい」

Z.O.E「カノジョみたいじゃん(笑)」

SMALLEST「SPIRITUAL JUICEの作品は、世界観がちゃんと出てるから格好いいんですよ。オレらがスピリチャルのメンバーから、お褒めの言葉っていうんですか?(笑)言ってもらってるけど、それも自分たちの世界が出てるからだと思う」

DJ大自然「SPIRITUAL JUICEは五感で感じるんですよ。それでお客さんが盛り上がれるっていうのは、それだけのヴァイブスも出してて、伝える表現が違っても客に伝わるライヴができてるのはすごいと思う」

ATOM「トリカブトは良いボケに良いツッコミに、ジーンとくるようなことも言うし、ホント勉強になるよ」

DJ大自然「まだまだ勉強中なんで(笑)」

――(笑)それぞれ自主盤を出してますが、明確な目的があったんでしょうか?

DJ大自然「それはありました。出したことをきっかけに、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ったし。それまでテープを200本とか配ってたんだけど、その段階だけで横浜の方にまで広がったりしてたから、CDで出せばCDをもってる人が広げてくれるかな、と。実際に地方からアプローチもあったよね」

super Yaji「俺らも足がかりにはなってる。〈好きなヤツだけ聴いてくれればいいや〉っていう思いもあったんだけど、大阪の方からも反応があったり、思った以上のリアクションがあって嬉しかった」

ATOM「出したことによって、自分たちなりに成長もしたし、考えも変わりました」

super Yaji「次には繋がってるし、重大な出来事ではあったよね」

Z.O.E「(笑)出来事って」

――今年、それぞれがレコード会社から作品をリリースしてみて、なにか変わった?

DJ大自然「自主盤はいま聴きたくない(笑)」

SHINO DA LORD KNOWS「でも、今日、昼間に家で聴いてたよ。逆にフレッシュな気持ちになったね(笑)」

ATOM「自分らだけでやってたときと違って、いまは意見を言ってくれる人が周りにいるし。それを受け止めて、消化していこうと思った。(作品を出してからは)聴く人がいてこその、という部分を意識するようになったし、ライヴも変わっていってる」

――ライヴといえば、2組とも〈HIP HOP ROYAL 2001〉に出るわけですが……。

DJ大自然「やっとここまでこれた、みたいに感じてます。SPIRITUAL JUICE、トリカブト、マイカデリックの3組で、昔からいっしょにイヴェントをやってきたから、会場は違っても、同じデカいステージに立てるのは嬉しい」

Z.O.E「大きいハコだし、有名な人を観に来てるお客さんが多いのは当然だと思う。でも、最終的には〈あのSPIRITUAL JUICEってのが良かったね〉って言われるようなステージを見せたい」

SHINO DA LORD KNOWS「出てるメンツはたしかに豪勢だけど、最終的にトリカブトを印象づけられればOKです」

――今後はどんな活動を?

数珠FLOW「オレらはライヴをどんどんやって、そこで得たものを次の作品に繋げたい」

DJ大自然「トリもライヴ叩き上げのチームなんで、ライヴで得たものを作品にフィードバックさせて」

SMALLEST「ヒップホップを始めて5年くらいのものを全部『EXTRI EXTRA』で出しきった感じだから、また新たにいろいろ見つめ直して吸収していきたい」

DJ大自然「まだ〈ベンチ入り〉しただけみたいな感じですからね。いまは、そこから〈次〉を作るべく、いろいろなことをやってる段階です」