「最小で最強」の三人組ガールズ・ユニット。その活動を支える、部屋・音楽・センス。

バンドをやる。詩を書く。絵を描く。芝居をする。自分自身を表現する方法はいろいろあるけれど、作る・差し出す・食べる。相手の体、舌、食道、胃。受け取る「私」の内臓までを用いて成立するコミニュケーションって新しいんじゃないだろうか? そんな事を考えさせてくれた、料理ユニットという形態。2000年の初め頃から続々と登場した彼らだけれど、その中でも活動の多さ、人気ともにNo.1がといえるのがGoma。料理、雑貨、パーティーの飾り付け。次々と生み出されるGomaの作品の魅力を一言で言うならば、「キュート」で「ポップ」。まるで絵本の中から飛び出したような作品たち。でも、でもね。ちょっと待ってください。「キュート」で「ポップ」。そんな言葉でくくってしまってはモッタイナイ。絵本に登場するのがお姫様だけじゃないように、エロもあるし、ラブもある。いたずらもあれば、毒もある。万華鏡のようにくるくる変わる表情が魅力。かわいくて確信犯。あえてそう呼びたい彼女たちの作品は、この部屋で、この音楽を聴きながらつくられる。
─音楽と料理にまつわる思い出ってありますか?
「そうですね、忙しくてずっと同じことをやってなきゃ行けないときとか、例 えば夜中にゼリーを作りつづけなくちゃいけないときとか、CDラジカセでCDを 聞いているんですけど、CDを取り替えるっていう事ができないから同じ曲を、 ずっと聴き続けているんですね。だからその曲を聴くとその時の事を思い出し たり」(中村)
「あー、ゼリーがよみがえるーっとか(笑)」(アラキ)
─南風食堂も言ってたんですけど、料理って体力勝負だから音楽に助けられるって……
「あります、あります!」(中村)
「ここ(アラキ、中村)はすごいロック好きなんで、そういう時はレッチリと か激しいのを聴いて、ノリノリになってクリームを泡立てたりとか」(アラキ)
「眠くならないようにね(笑)」(遠藤)
─音楽で、自分にエンジンをかけている、って感じなんでしょうね。
「ええ。でも、実際に料理を作る仕事の時と企画を考えたりする仕事では聴 く音楽が違うんですよ」
─例えば?
「例えば、今日、選んだCDでも、この三宅純さんのCDは企画とか、考える仕事の時に聴きます」(中村)
─静かな曲が多いですか?
「静かというよりも流れるような曲が多いですね。しゃべっているのに邪魔にならない感じ」(アラキ)
「で、心地よいもの。あと、海外旅行に行くと必ず探すものがあって、その国 の子供の歌が入っているカセットテープっていうのをチョイスして帰るんです」 (中村)
「お話カセット」(アラキ)
─どういう所にひかれるんですか?
「子供の声がすごく好きなのと、その国の言葉のイントネーションとかがあた し達が聞くととてつもないものに聞こえたりとか、しゃべりそのものが音 楽じゃないんだけど聞いていて楽しい」(アラキ)
「リズムが全然違うから。チェコにこの間、行ってきたんですよ。チェコの言 葉ってすごく可愛くて、しゃべっているのを聞いているだけでかわいい。違う 世界に行けるんです」(中村)
「大人の曲になると民謡だったり、アメリカナイズされてロックぽくなっちゃ うでしょ。でも、子供音楽だと、民謡ぽかったりもするんだけど、もうちょっと カワイらしさとかその国のオリジナルが残っているから」(アラキ)
─webや雑誌に掲載されたGomaの作品を見ていると、料理とお菓子と雑貨、そ れら全てがあわさって一つの世界を作り出している、っていう感じがします。 なんか絵本みたいだな、と。色もビビッドだし。あの発想はどこからくるので すか?
「どっから来るんだろう?」(中村)
「私達は料理っていうものを、工作じゃないですけど「創作する」っていう感覚 でとらえているんですよ。普通だったら、料理をおいしく作って、それをきれ いに盛り付けしてって感じなんですけど、私達の場合はまず最初にイメージが あるんですね。盛り付けたときにどんな感じにしたいか、とか色をこんな風に もってきたいとか。それと頂いたテーマに合わせて、じゃぁ、味はこういう感 じがいいね、とか。だから、一枚の写真にした時にこうしたい、っていうのが まずそれぞれの中にあって、それをああしたら、こうしたら、ってアイデアを 出し合っていくうちにまとまっていくっていう感じなんですね」(アラキ)
「もちろん美味しいものを食べてもらいたい、っていう気持もあって」(中村)
「あと料理の楽しさとか触り心地とかいろんなものを感じて欲しい。シチュエー ションも大事にしたいしから、サイトやイベントのために料理をする時は、ど うやってそのテーマに関わる人を楽しい気分にさせるか、ということを一番に 考えて作るから、毎回、毎回、全然違ったものができるんだと思います」(アラキ)
─音楽を聴いてお料理や作品のイメージが浮かぶことってありますか?
「とくにこの音楽を聴いてこの料理を作る、っていう事はやったことがないん ですけど、料理を作っていてなんとなくこの音楽が似合うかも、っていうのは あります。子供が歌っている音楽だったら、クッキーとかケーキとかちょっと ポップなデコレーションをしたくなっちゃったりとか」(中村)
「今はどちらかというと、私達の中の音楽の位置は自分達が活動している時の 原動力じゃないけど、そういう役割になっていて。でも、マンガとか映画のイ メージから料理を作ってください、って言われるお仕事もよく来るんで、この 音楽をイメージして料理を作ってくださいって言われたら、そういうものが出 てくるかもしれないです」(アラキ)
「うん、そういうのはまだやったことがないけど、あるかもしれないです」(中村)
─これからやってみたい事ってありますか?でも、今でも精力的に活動されてますね。
「なんでもやりたがりなので」(遠藤)
「食べ物、っていうのはあるんですけどなんでもあり」(中村)
─Gomaの絵本を見てみたいなぁ、と思うんですよね。文体とかすごく面白いし。
「野望は、飛び出す絵本を作ることなんですよ(笑)」(中村)
「ページを開くとローストチキンがボンッと出てきたりする。食べ物の写真がポップアップで出てきたり、ひっぱるとこっちから何か出てきたりとか(笑)。そういう仕掛け絵本を料理本で作りたいです」(アラキ)

Goma(ごま)
アラキミカ、中村亮子、遠藤順子(左から)の三人組。日常の楽しい事や嬉しい事を「たべもの」という形にして日々製造中。ケータリングやワークショップのほか、web・雑誌での連載など精力的に活動をつづけている。1月23日に発売されたGomaの初めての本、『GOMA'S PARTY BOOK』(アスペクト)も大好評発売中。先日、フォレット原宿で行われた、出版記念展覧会も大盛況。ファンの女の子たちでにぎわっていた。