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OL' DIRTY BASTARD逝去、天才MCが遺したエピソード

 オール・ダーティ・バスタードが死んだ。去る11月13日、マンハッタンにあるウータン・クランのスタジオ、36・レコーズ・LLCにて胸の痛みを訴えて倒れ、そのまま息を引き取った。36歳の誕生日を2日後に控えて亡くなった彼のソロ・デビュー・アルバム『Return To The 36 Chambers』がリリースされたのは95年のこと。〈36 Chambers〉とは、カンフー映画からアイデアを得たウータンの記念碑的ファースト・アルバムを意味するから、9年かけても〈36〉=原点に戻りきれなかったか、と因縁じみたものを感じる。マライア・キャリーと共演もしているODBは、数々の奇行でも有名だった。7人とも11人いるともいわれる子供たちとMTVの取材陣を引き連れて福祉事務所でフード・スタンプを受け取ったり、グラミー賞を受賞できなかったときにはマイクを無理矢理奪って叫んだり。警察、裁判沙汰も得意中の得意。彼の死のニュースはショックだったが、驚きはしなかった。倒れたときはクリーンだったそうだが、リハビリ施設を出たり入ったりするほどのドラッグ中毒だったから。数々の奇行も、彼が単にハイだった、と考えると嗤うよりむしろ背筋が寒くなる。ソロ2作目をリリースする際、取材を受けられる状態ではなかったため、レコード会社が苦肉の策として用意したインタヴューCDを持っている。好き勝手を言っているなかで、妙に印象的な言葉があった。「俺の子供たちには、ドラッグをやったり、汚い言葉を使ってほしくない。そこはフツーの父親なんだ。それから、俺を嫌わないでほしい。それだけだ」。ホント、フツーの父親である。デビュー・シングル“Got Your Money”で彼の力を大いに借りたケリスは「誰がなんと言おうと、ODBは知的でクールな人」と語っていた。二度と素顔を窺い知れない場所に行ってしまったODBだが、天才的なMCであったこと、“Brooklyn Zoo”は未来永劫クラシックであることは確実だ。ドラッグなんて、やるもんじゃない。R.I.P.。(池城美菜子)

掲載: 2004年12月27日 20:00

更新: 2005年01月07日 20:50