WORLD CITY REPORT from LONDON
スカ・バンド、マッドネスによるミュージカル
冬時間に突入したロンドンは、夜6時を回ればすっかり闇に包まれる。そのかわり、ネオンが一段と輝きを増すのもこれから。レスタースクエア、コベントガーデン周辺の劇場街は毎晩、お目当てのミュージカルを見ようと多くの人々が押し寄せる。最近では「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」などの定番に加えて、個性的な脚本、音楽、演出などオリジナリティーあふれるミュージカルがウエストエンドへ進出し、おもしろいことになっているのだ。なかでもアー ティストが音楽を手掛けた作品が目白押しで、アバのヒット曲を使った「Mamma Mia!」を筆頭に、ボーイ・ジョージの半自叙伝的作品「Taboo」やクィーンの曲を使った近未来ミュージカル「We Will Rock You」などがロングラン・ヒットを打ち出している。
10月28日にケンブリッジ・シアターで幕開けした、ミュージカル「Our House」もそのひとつ。タイトルからお察しのとおり、80年代の2トーンブームの火付け役で、ベテラン・スカ・バンド、マッドネスによるミュージカルだ。すでに以前からミュージカルの構想を練っていたというシャグスを中心に、バンド・メンバー全員が、脚本家トム・フィルスと練り上げた〈ロンドン・ラヴ・ストーリー〉! つまりはマッドネスの音楽にのせて語られるフィクションというわけ。全編に使われる20曲はすべて全英チャートトップ10入り した“Our House” “House Of Fun”“My Girl”“Baggy Trousers”“It Must Be Love”など。それに加え書き下ろしの新曲も登場する。物語の舞台はロンドンのカムデン・タウン。16歳の誕生日、ガールフレンドにいいとこみせようと、閉鎖中のビルに不法侵入。ポリスにつかまるか、逃げるか…映画「スライディング・ドア」方式にふた通りの人生を同時進行でみせていく。英国特有のブラック・ユーモアたっぷりで、音楽との相性も抜群。スカ、ロック・フィーリングにマッチしたアグレッシヴなダンスもみどころだ。他作品に比べて派手さは ないけれど、もっとカジュアルに楽しめる作品。その証拠にフィナーレは俳優と観客が一体となって通路でマッドネス・ウォーク、楽しいです。(山口珠美 in LONDON)
そのマッドネスだが、新曲2曲を収録したサントラ『Our House』をリリース。12月に完全復活で全英ツアーをスタートする予定。One Step Beyond! おじさまたちはまだまだ現役です。