インタビュー

Chara “オルタナ・ガールフレンド”



Chara



〈Charaであること〉を淡々と続けたい



2011年9月にデビュー20周年を迎えたChara。アニヴァーサリー・イヤーとなった昨年1月にはユニバーサル時代の楽曲をコンパイルしたベスト盤『Very Special』をリリースし、同年3月と11月には、「交わらない2つの個性がお互いにいい影響を及し合う〈パラレル・パーフェクト〉な関係」に位置するという2枚のアルバム『Dark Candy』『うたかた』を発表。陽と陰、メインストリームとアンダーグラウンド、カラフルなキャンディ・カラーとモノクロの鉛筆画など、サウンド、アートワークから流通まで、あらゆる面で相対する二面性を表現した2作品をもって、年末には全国ツアーを開催した彼女。ライヴのMCでは「役割があるっていいですね。Charaの役割はCharaだもんね。音楽しかできないけど、音楽ができるって幸せだなって思った年でした」と語っていたが――。

「音楽って〈音〉に〈楽しい〉って書くから、もしかしたら容易で自由で簡単なものに見えるかもしれないけど、他の仕事と同じように、続けるのは意外と簡単ではないんですよね。でも、私は、ツアーを通してたくさん愛していただいて、たくさんパワーをいただいたことで改めて、淡々と〈Charaであること〉を続けたいなって思った。昔よりも自分の役割がすごくはっきりしてるし、他の人じゃない自分であるべき意識も強くなってる。そのためには、まず自分の音楽を嫌いになりたくない。自分の音楽とCharaはイコールだから、自分を愛せないと、人を愛する余裕がなくなるし、愛がみんなにも広がっていかなくなっちゃうでしょ。自分には音楽の才能があると思うし、Charaに必要なものは、Charaがわかってる。だから、とにかく自分を信じて、自分を続けていきたいなって思いますね」。



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そこらの普通のガールフレンドじゃないけど、どうかしら?



アーティストとしての20年間の歩みを振り返りながらも、改めて、「Charaを続けていく」という新たな決意を表明したツアーの最終日には、本人の口から「新しい嫁ぎ先が決まった」という発表があった。彼女が移籍先に選んだのは、L'Arc~en~Ciel、ASIAN KUNG-FU GENERATION、チャットモンチーを擁するキューン・ミュージック。そして、移籍第1弾シングル“オルタナ・ガールフレンド”は、NAOTO(ORANGE RENGE)とKenKen(RIZE)が参加した、アップテンポのパンキッシュなオルタナティヴ・ロックとなっている。メディアム~スロウのソウル~ファンク・ナンバーを得意とする彼女にとっては、斬新な幕開けと言っても過言ではないだろう。

「私も自分ではミディアム~スロウ系がいいって思ってたんだけど、この曲であれば、キューンにきたChara感がわかりやすく出るかなって思って(笑)。KenKenとNAOTO君にお願いしたのは、移籍というタイミングで、ちょっと新しい風を感じたいって思ったんですよね。KenKenはRIZEのイメージが強いと思うけど、めっちゃファンクでソウルなビートを弾くのね。NAOTO君は、ブリティッシュ・ギタリストっていう感じで、すごくやりやすかった。ふたりとも、みんなが思ってるのとは違う面を持ってるのがおもしろくて。

もちろん、私のなかにはね、まだまだ、いろんなCharaがいるんですよ。みんながイメージするCharaもいるし、意外と一途で日本的なCharaもいるし、乙女チックなCharaもいる。この曲は、生涯、女の子であることを楽しみたいって思ってる、ちょっとおかしなCharaが出てるのかな(笑)。〈私は、そんじょそこらの普通のガールフレンドじゃないけど、どうかしら?〉っていうようなハードコアな女の子だね」。

ここで注目してほしいのは、前述の対となっていた2作品とも繋がる、〈いろんな面を持ってる〉という言葉だ。彼女は以前から〈自分のなかの陰と陽のバランスをとるために音楽をやってる〉と発言しており、心のなかに住むインナー・パーソンにリリコ(陰)とキャロル(陽)という名前をつけている。また、彼女はソングライターであり、シンガーであり、プロデューサーであり、アーティストであると同時に、ふたりの子を持つ母親であり、当然ながら、ひとりの女性、女の子、少女、ガール、レディーでもある。さらには、〈alternative〉の〈alter〉には〈分ける、別の、もう一つの〉という意味もあるのだが――。

「独身の頃までとは言わないまでも、音楽に使う時間が増えてきてて。家族が〈ママはCharaだから〉っていうことをわかってる時期に移籍できたのも良かったなって思う。だからね、もう早速アルバムを作ってるんですよ。いつも最初に決めてるコンセプトがないままでレコーディングしてるんだけど、今回は、なんとなーく〈分身〉っていう雰囲気がずっとあって。まだ決める時期じゃないからもう少し妄想を楽しもうと思ってるけど、〈分身〉っていう言葉が気になってるのは確か。あとね、もともと私は曲をいっぱい書くのが好きで、アレンジするのが2番目に好きで、歌うのはその次だったのね。作詞作曲と歌うことの間には、すごく大きな距離があったんだけど、その差がだんだん近付いてきてるの。さらに自分をプロデュースする自分と歌うこともすごく近付いてる。いま、いっしょにやってるミュージシャンの人たちの愛を感じてるし、スタッフも愛がある。そういう意味では、人との距離も近付いてるから、いま、すごくいい状態なんです。曲はどんどん生まれてきてるから、今年は季節に合った曲を皆さんにお届けできたらいいなと思いますね」。




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掲載: 2012年05月30日 18:00

更新: 2012年05月30日 18:00

インタヴュー・文/永堀アツオ