LONG REVIEW――MOGWAI 『Hardcore Will Never Die, But You Will』
グラスゴーが生んだ至高のバンドは、新たな高みをめざしてさらに大きく飛躍する。〈アル中は死なずとも貴様は死ぬ〉という何とも物騒なタイトルだが、真剣味に欠けたタイトルと攻撃性溢れるサウンドのミックスこそが自分たちなのだと、スチュワート・ブレスウェイトは語っている。
青年期の陰鬱とした葛藤や青春賛美、そして底知れぬ恐怖感を煽るギター・ノイズはこれまで以上にバラエティー豊かなドラマ性を帯び、心の琴線を容赦なく揺さぶり動かす。ハード・ロック的な轟音リフで不安感を増幅させたかと思えば、静謐な美を謳うピアノの音色が涙を誘い、さらにポスト・ロック、アンビエント、ガレージ等、色とりどりの魅力溢れるサウンド・コラージュが洪水のように押し寄せる……。この夢幻世界の構築はもはや神業だ。
今回プロデューサーに迎えたのは、デビュー作『Young Team』を手掛けたポール・サヴェージ。後続のバンドたちに多大な影響を及ぼしてきた彼らがふたたび自分たちの初期衝動に向き合おうとするなかで、この起用は至極自然な流れだったのかもしれない。数多くの経験を積み成長してきた現在のバンドには、ある種の余裕さえ感じられ、静と動のコントラストを自在に操り、迸るエネルギーを渾身の力で表現する様は、みずからのリミットを試しているかのよう。ほぼヴォーカルレスのインストのなかで、どこまで物語を紡ぐことができるのか。パイオニアでありチャレンジャーでもある彼らの可能性は、これからも無限に広がり続けることだろう。