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【追悼】アルフレート・ブレンデル ピアニスト 94歳

ブレンデル

ハイドンからシェーンベルクに至るドイツ=オーストリア系音楽での知的で正統的な解釈による演奏で知られた世界的ピアニスト、アルフレート・ブレンデルが2025年6月17日、ロンドンの自宅で亡くなりました。94歳でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。

ブレンデルは1931年1月5日、チェコスロヴァキアの北モラヴィア地方に生まれ、ザグレブとグラーツでピアノ、作曲、指揮を学びました。その間、E・フィッシャー、P・バウムガルトナー、E・シュトイアマンらに師事しました。1948年に17歳でデビューし、1949年には18歳でブゾーニ・コンクールに4位入賞し、国際的な活動を開始しました。1971年に40歳でロンドンに居を移して以降は、世界最高のピアニストの一人として幅広く活躍しました。

録音活動にも早くから熱心で、1952&53年に米SPA(Society of participating Artists)にリストやブゾーニを録音したのを皮切りに、1955~67年の米VOXと1965~68年の米ヴァンガードにCD35枚分、1969年から引退するまで蘭フィリップス(現在は英デッカ)にCD114枚分という膨大な録音を残しました。

とくにブレンデルの名を国際的にしたのは3度にわたるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集でした。1度目の米VOXへの録音は、ブレンデルが自身の1963年1月5日、32歳の誕生日に全32曲の録音が完成。これはステレオLP初期の廉価盤だったこともあり、日本を含めて世界的に発売されました。2度目は1970~77年のアナログ・ステレオ録音で、押しも押されもせぬ大家となったブレンデルの壮年期の名盤として知られています(1978年度のレコード・アカデミー賞受賞)。3度目は1992~96年のデジタル録音で、CD時代に最も親しまれたブレンデル円熟期の名盤です。

また、ネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団と共演したモーツァルトのピアノ協奏曲全集(1970~85年録音)も、モダン・ピアノ+室内オーケストラという形で演奏された録音の走りともいえるもので、1枚1枚発売される毎に、大きな話題を呼びました(第18&27番は1975年度のレコード・アカデミー賞を受賞)。

初来日は1971年。その後も頻繁に来日し、多くのファンを持っていました。2008年12月、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と共演したのを最後に引退。2009年には、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。
(タワーレコード 商品統括部 板倉重雄)

New!『フィリップス録音全集』114枚組が再プレス!

2016年1月のブレンデル85歳の誕生日を記念して発売されたメガBOX『フィリップス録音全集』114枚組が再プレスされることとなりました。ここには彼が1969年にフィリップスと専属契約を結んで残してきたソロ、室内楽、協奏曲、歌曲の伴奏、Deccaになってから発売されたライヴや放送音源、フェアウェル・コンサートまでに至る全ての録音が収録されています。(2025年7月11日、タワーレコード)


タワーレコード企画盤のブレンデル

4タイトル、いずれもブレンデルを代表する名盤です。(1)はブレンデルの1回目のブラームスのピアノ協奏曲録音を収めたもの。アナログ・ステレオの素晴らしい優秀録音です、第1番では巨匠シュミット=イッセルシュテットとの共演ですが、これはイッセルシュテット最後の録音としても知られています。カップリングのアバドとのシューマンのピアノ協奏曲は1980年度のレコード・アカデミー賞を得た名盤です。(2)(3)はアバド&ベルリン・フィルとのブラームス再録音。こちらも第1番は1987年度の、第2番は1992年度のレコード・アカデミー賞を受賞したCD時代の名盤です。(4)は1976年、アナログ・ステレオ時代の優秀録音で、モダン・ピアノで見事なニュアンスがつけられた清新なバッハ演奏として高く評価された1枚です。


その他の現在手に入るブレンデルのディスク









カテゴリ : ニュース

掲載: 2025年06月18日 17:30

更新: 2025年07月11日 12:30