阿部寛主演『俺ではない炎上』映画公開が迫る―現代社会の問題にスポットライトを当てる作家・浅倉秋成

2025年9月に公開が予定されている映画『俺ではない炎上』。本作はある日突然身に覚えのない「殺人事件の犯人」として個人情報を晒された、大手ハウスメーカーの営業部長が炎上状態となり世間から逃亡する様子を描いている。「明日は我が身」と恐怖を覚えるような鬼気迫る展開はもちろん、阿部寛の主演決定も大きな話題となった。そこで今回は、映画の原作を作り出したミステリーの名手・浅倉秋成とはどのような人物なのかを探っていきたい。
●現代社会の問題にスポットライトを当てる作家・浅倉秋成
キャスティングに関して原作者の浅倉は、「きっと主演の方は主人公と同様、とんでもなく苦しい思いをされるに違いないと予感しました。阿部寛さん、申し訳ありません。本当に本当に、完成が楽しみで仕方がありません」と語っている。コメントからは主人公を演じる上で辛い目にあう阿部への申し訳なさと共に、隠しきれないほどの期待感を抱いていることがわかる。
原作は浅倉による同名の小説で、2023年に第36回「山本周五郎賞」の候補にも選出されるなど話題になったミステリー小説だ。作者である浅倉はミステリの名手であり、2021年に刊行され65万部を突破した「六人の嘘つきな大学生」の作者としても知られている。
「六人の嘘つきな大学生」も映画化され、2024年11月から公開。就職活動をテーマに6人の登場人物の裏の顔が巧みに暴かれ、嘘に嘘が重ねられた先にある真実に迫るという、まさに目が離せないストーリーが展開される。密室サスペンスの要素もありながら、それぞれの登場人物の人生が描かれる青春ミステリーな1面も合わせ持っており、予想を裏切る展開が多くの人を惹きつけた。
同作でも第22回「本格ミステリ大賞」候補にノミネートされるなど、作家としての実力を高く評価されている浅倉。まだ30代と若く、これからの活躍も大いに期待できるだろう。実は浅倉は意外な経歴を持っており、お笑いコンビ・レインボーのジャンボたかおとお笑いコンビを組んでM-1甲子園に出場したという異色の過去がある。
そんなバイタリティ溢れる浅倉の作品にまだ触れたことのない人は、まずは映画公開前に「俺ではない炎上」の原作を堪能してみてはいかがだろうか。
浅倉秋成 著書
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掲載: 2025年06月05日 10:46

