PLASTICZOOMS、ニューアルバム『WAVE ELEVATION』発売記念インタビュー!
2009年のデビュー以来、インディーシーンにおいて刺激的な発信を続けてきたバンド、PLASTICZOOMS。国内で着実にファンを増やすとともに、2015年には1年間ベルリンに滞在し、帰国後香港+ヨーロッパをツアーするなど、そのアクティヴな活動でグローバルな支持を得ている。2020年、コロナ禍の中で自己を見つめ直し自主レーベルWiggles & Jiggles Recordsを立ち上げ、細部までコントロールすることによって2021年3月、4年ぶりのアルバム『Wave Elevation』をリリースすることとなった。
今回、この新作に関してメールでインタビューする機会を得たので、この素晴らしいアルバム、そしてPLASTICZOOMSというバンドに興味を持っていただければ幸いである。
インタビュー・文:吾郎メモ
2021年3月、メールにて
―前作のアルバムPLASTICZOOMS(2017年)から約4年経ちました。その間にメンバー・チェンジ(脱退)がありましたので、そのことを言える範囲で、と現メンバーについて紹介お願いします。
SHO:ベルリン移住~セルフタイトルアルバムリリース後のワールドツアーとギタリストTOMの脱退、コロナを含めた4年の間、本当に様々な経験をしました。10年位経った様な気分です。TOMが別の道を選んだ事は僕達にとっても彼にとってもマイナスな出来事だけではなかったです。
バンド全員でベルリンに移住して、帰国後すぐ長期のヨーロッパツアーに出て、過酷で刺激的で狂った日々を共有してきた僕達は、もはや兄弟の様な存在だからこそ、分かり合える「何か」が大きく膨らんだ時点で彼が決断した事で、お互いの気持ちが分かる物同士なのでしっかり送り出せたというか。死ぬまで繋がってると解ってたんで。今でもたまに会って音楽の話や何してたとか、変わらずですし彼が外の人間になった事で僕のクリエイティブに対する意識も必然的に上がりました。「そんなもんじゃないでしょ」と言われてる気がして笑
彼が抜けた後、ステージではLillies and RemainsのKAZUYAとabout tessのtakuto氏にサポートギタリストとして参加してもらって2019年まで活動、2020年頭からcoHzy氏に参加してもらっています。大好きなギタリストばかりに参加してもらっていますね。サポートドラマーはSHOTA KANBAYASHIです。彼には2018年のワールドツアーから参加してもらっていて、過酷だけれど最高だと思える時間を多く共有しているのでお互い分かっているというか、呼吸が合いますね。
現在のオフィシャルメンバーは僕とBASSのJUNのみで、レーベル独立後は二人で作業を分担しながらの活動です。
僕達は全く別のタイプの人間ですが、逆にそれが良かったみたいで。お互いしっかり仕事の分担もできるし、以前よりも会う時間も増えた事でより深く内面を知れたというか、その中でお互いの得意分野を探して割り振っていったら綺麗に半分になった感じです。
―これまで様々なレーベルからリリースされていましたが、自身のレーベルWiggles & Jiggles Recordsを立ち上げて、そこから出すこととなった経緯を教えていただければと思います。
SHO : 自分達の価値観をスムーズに、自由に、楽しく、時代の波を読みつつ表現できる場所が必要でした。
僕達の場合は活動がバンドらしくないので理解されない事が多くて。それもあってレーベルに所属して活動するより、自分達が選んだ方達と独自のチームとしてクオリティーに拘る活動をしていく方法を選びました。
あとは、コロナが大きいですね。コロナによってひっくり返ったこの世界で、何かに依存したり、おんぶに抱っこの状態は危険だと考えましたね。個々に体力を付けないと残っていけない時代になりましたよね。自分の足で立って、頭を使うことが好きな事を続けていく環境、未来への道だと思ってすぐにJUNに話して。僕が「体力」の中で最も重要だと思っている事がD.I.Y.精神だと思っているのですが、それはずっと今までやってきた事なんでスムーズに切り替えることが出来たと感じています。
今までお世話になったレーベルが自分達にしてくれていた事一つ一つを思い出しながら運営しています。改めて今までのレーベルには感謝しています。大変さが分かったからこそ。僕、音楽レーベルに「服作りましょう」と言ってましたからね。無理に決まってますよね笑 弊害なくどっちもできる場所が出来て本当に楽しいです。
―その間にmaxi single “MINDS”とデジタルシングル“CHRONIC OFFENDER”と今作の先行となるデジタルシングル”THE WORM”がありましたよね。このシングル群は流れとして自然なのか、それともいったん“CHRONIC OFFENDER”で区切りをつけて、という感じだったのでしょうか?
SHO: “CHRONIC OFFENDER”で区切りというよりは、世の中にサインを出した様なイメージです。あの時もうすでにアルバムは作り始めていたので。期待して待ってて欲しかったんですよね。自分の中で完璧な手応えがあったんで。
―コロナ禍の状況は制作にどのような影響を及ぼしたでしょうか?具体的な面とマインド的な面、両方お答えいただければと思います。
SHO:1回目の緊急事態宣言が出てから3ヶ月間は引き篭もってアルバムの制作に没頭していました。DEMOを丁寧にブラッシュアップする事と同時にじっくり時系列やアートワークイメージを育てたり。
不安な毎日の中で生きていると、命に対して向き合う事が増えたというか。ふとした事で幸せを感じてました。日の光とか植物の色とか。ちょうどこの時期にアルバムのコンセプト”気の上昇”の最後の階段を上り切った感じです。
自分という存在を自分自身が受け入れる事ができました。
それから、楽曲制作は勿論、音楽にまつわる細かい業務がより楽しくて幸せに感じられる様になりました。なかなか会えなくなってしまったファンの方達への意識もより深くなりましたね。今までは主にLIVE会場で直接伝えられた感謝の言葉がSNS等の文字やLIVE配信でしか伝えられないので。楽しんでもらえるコンテンツを多くNEWSとして出せる様に活動したいなと。
―個人的にはアルバムタイトル『Wave Elevation』っていうのも、このコロナの閉塞感に対するカウンターなのかな、とかも思ったりしました。アルバムタイトルに紐づくコンセプトがあれば教えてください。
SHO:閉塞感に対するカウンター、そうですね。元々個人的などん底から現在までの”気の上昇”を表現する作品を目指していたのですが、制作期間中にどんどんコロナ感染が拡大して行くにつれて世の中が灰色に見えてきたんです。
そんな時にこの作品が、聴いてくれた人にとっての”安心する場所・上を見るきっかけ”になれたら良いなと思って、『Wave Elevation』と名付けました。
-アルバムのサウンドに関して。今までは繊細さの魅力が濃かったと思うのですが、今回、次フェーズに入った感じがしてて、ヴォーカル、演奏共にすごく「凄み」みたいなのを感じました。骨太というのとはまた違います。凄みです。サウンド的に意識的に取り組んだ部分などあるのでしょうか?
SHO:そう感じてもらえて凄く嬉しいです。とにかく今回も各曲DEMO段階から細かく固めていきました。DEMOで重ねたブラッシュアップで完璧に見えてからの録音だったので一切ブレる事なく作業が進みましたね。「凄み」に関しては僕達が選んだ最高のエンジニアの腕があってこそでした。僕の頭ので鳴る音を完璧に再現してくれましたので。あとは自分の声の可能性を探って、誰も気にしない様な細かなニュアンスまで意識を集中させました。曲が持つ色を見逃さない様に、一曲に対して数パターンのバージョンを作ったりしてデッドラインを決めずに突き詰めた結果ですかね。
―曲を大きな音で聴いたり小さな音で聴いたりいろんな音量で聴いてみましたが、大きくても耳が痛くならないし、小さくてもクッキリ聞こえる感じでした。エンジニアさんがわりとノイジーな音楽にも精通されているのかなと思いました。レコーディング周りで録り方の議論があったなどトピック等ありますでしょうか?
SHO:ありがとうございます!先ほど話したエンジニアのMusha Ayumuの腕ですね。彼はMy Bloody Valentineのサウンドをかなり深く研究してきた人間で、それを起点に過去から現在までのINDIEからPOPSまで壁を作らずに聴ける耳を持っています。僕と似た音の聴き方、捉え方のエンジニアに出会った事が今回のアルバムクオリティーに繋がってえいます。楽器は勿論なのですが声も一音一音かなり細かく設定、調整しながら録音したので時間はかかりましたね、とにかく自分達の目指す理想の”良い音”に近づけるための作業の連続でした。
-今回、ヤマジカズヒデさんが参加されていますが、ヤマジさんが参加する切っ掛けなど教えていただければ。
SHO:M2“Amorphic”とM6”Fall Down”に参加していただいたのですが、あの曲のDEMOが出来た時点でヤマジさんの姿を思い描きながらブラッシュアップしてましたね。まだオファーする前の段階から(笑)OKもらった時は本当に興奮しましたし、録音の日のあのミラクルな時間は言葉では伝わらない程の感動がありました。僕の曲にヤマジさんのDNAをMIXすることは死ぬまでにしたいことリストに入っていましたからね。大好きなんです、ヤマジさんの音世界。
―誤解を恐れず言えば、潔いほどの80sニューウェーヴのエッセンスを感じますが、その曲調は特定のバンド云々というよりもものすごく多岐にわたっているように感じられます。80sへの想いがあればお聞きしたいのと、直接的でなくてもいいのですが、影響を受けたバンドなどありますか?
SHO:もう、本当に本当に80’s NEW WAVEのあの感じが大好きで。大好きという言葉じゃ足りない位。
あの時代特有の口ずさめるシンセリフ、キャッチーな歌のメロディーや声の癖、ファッションやメイクアップ、アートワーク、MIXINGなど僕の理想が詰まっています。特にPUNKから派生したバンドやサウンドが好きですね。トータルで影響を受けているバンドで言うとDepeche Modeは欠かせません。他にはシンセベースの使い方はDAFをはじめとするEBMに影響を受けています。そういったPUNK通過型NEW WAVEの土台の上に、80's以降の好きな音が今のPLASTICZOOMSの理想を作っています。
80's以降で影響を受けているのはPrimal Scream, The Stone Roses, New Order, Pink Floyd, Nirvana, MGMTなど、あとは00年代のINDIE MUSICの盛り上がりは肌で感じたので大きく影響されていると思います。The Strokesから始まったあの流れですかね、彼らが出てきて70’s ~80’sPUNKばかり聴いていた僕が今の柔軟な音の聴き方ができる様になりました。
コード進行は日本のPUNKバンドからも影響を受けています。Zymotics、Registrators、Teengenerate、Firestarter、Private Ways、Rawtersに狂っていました。
―PLASTICZOOMSには以前からゴスの要素もあるという認識ですが、自分たちのことをゴスだという認識はありますか?
SHO:GOTHは大好きで影響を受けている部分は楽曲やファッション、アートワークにかなり多いですが、GOTH BANDとは違う気がしますね。メイクや黒い服に目覚めたきっかけがPUNKだったので。SEX PISTOLS親衛隊のSoo Cat WomanやSiouxsie Siouxに影響を受けて中学の頃にアイメイクを覚えて、黒い服を着るようになったのもその頃からですかね。なのでGOTH単体と言うよりかはGOTH/POST PUNKを含んだNEW WAVE/PSYCHEDELICなのかなと思っています。精神性的にもその方がしっくりきますね。
―ベルリンに長期滞在していたことが知られていますが、ベルリンのシーンやドイツの文化からバンドはどのようなものを吸収しましたか?
SHO:とにかく刺激的な時間を過ごしました。ひっくり返りましたからねバンド観が。ベルリンにも日本と同じ様に様々な音楽シーンがあって、それぞれの場所に行きましたが一番衝撃的だったのがテクノです。向こうに住むまでテクノの楽しみ方や良さを100%理解出来ていなかったのですが、現地に行って知ってしまいました。大箱のベルグハインやトレゾアにあるクラブシーンから、ローカルなアンダーグランドなクラブシーンにまで踏み込む事ができて、その体験はPUNKを初めて聴いた時の衝撃と同じでした。完全にフィジカルの世界で。そこに精神世界が入ってくるという部分に大きな魅力を感じました。瞑想に近かったです。その感覚を持ち帰って消化した作品が今回のアルバムのThe WormやChronic Offenderですね。潜る感覚を表現しています。
―SHOさんはファッション・ブランドも運営していますが、自身のバンドの音楽とファッションはどのような相互関係がありますか?
SHO:僕は楽曲製作と服作りで使う脳がかなり近いです。自分が聴きたい音、自分の着たい服が僕のクリエイティブの基準なのでそこは同列に並んでいます。シンセのつまみをいじる時と、理想のシルエットのジャケットを作っている時どちらも同じ感覚というか。やりたいことを探す感覚は僕になくて、やりたい事がはっきりしている土台の上でクリエイティブしています。
―英語で書かれている歌詞も読ませていただきました。歌詞のことについて抜き出して尋ねるのは野暮なんですが、、、詩人だと思いました。わりと身近な題材をシンプルな言葉で表現していているんだけど、イマジネイション喚起させるし、それに文字からもパッションやメッセージが伝わってきました。言葉のチョイスなどで意識していることはありますか?
SHO:歌詞まで読んでいただけて嬉しいです。そして、恐れ多いお言葉ありがとうございます。歌詞にもかなり時間をかけて、いくつかの工程をクリアしてからの録音する形をとっています。身近さというのも僕の歌詞世界の一つのフックですね。様々な角度から物事、理想を解釈して歌詞を書いています。スウェーデンとNYに住んでいる2人のリリックプロデューサーと一緒に細かく言葉を選んで作っていくのですが、日本語の持つニュアンスを英語でどう伝えようかというのは毎回の課題ですし難航するポイントでもあります。日本語の繊細な表現を本当に大切にしていますね。完成してからUKの発音プロデューサーと発声を含めた発音のバランスを作って、曲に合わせて歌いながらジャッジしてもらい、練習後録音に入ります。
言葉の持つPOPさを念頭に常に置いて作業しています。曲タイトルを見て分かってもらえると思うのですが、字面や単語のチョイスなどにも拘りがあります。そういう点で言葉選びに関して、特にサビなどは70’sの要素が出ているかもしれません。僕が好きなバンドは曲名もかっこいいので、そこは絶対的に拘っていますね。
―PLASTICZOOMSは、今回の多様なサブスク展開を見ても分かるのですが、以前からグローバルな活動を意識的に行っていると思います。どの国で反応が良いとかありますか?また、フィジカルリリースについて思うところあればお聞かせください。
SHO:今までツアーも行ったこともありヨーロッパの反応が多かったのですが、今回アメリカやオーストラリアでも反応がありましたね。ジャンルも関係なく様々な国で取り上げてもらえる事が増えました。INDIE ROCKからメタル、インダストリアルなどのプレイリストにも入ったり面白い動き方をしています。国境も性別も世代も関係なく楽しめるアルバムを目指したので、この調子で引き続き発信していきたいと思っています。
フィジカルリリースに関してですが、CDの需要がほぼなくなっていくのは確かですよね。ですが、カセットテープやレコード同じ立ち位置になるならばそれはそれで良いと思っています。音をCDで残す事、受け取る事にマンネリしていた世界が一度崩壊した方が、自分も含めて物を大切にすると思います。物として残す行為はずっと続けていきたいと考えています。特に今回M11”The Letter”の言う曲で自分がいなくなった遠い未来に向けての手紙を歌に乗せたこともあるので。
CD販売だけでやって行くスタイルではもう音楽を続ける事が出来ない時代にLIVEが思うように出来なくなった事はかなり痛いと思いますが、そこに関しても人間は知恵を出して新たな方法を見出すはずですよね、時代に逆らうより時代にあったやり方で柔軟にやっていきたいと考えています。体力とアイディアさえあれば読んで字の如く”音楽”活動していけるなと。
サブスクもCDもレコードもそれぞれ最高にテンションが上がる瞬間があることは確かですからね。YOUTUBEも含めて。
―ライブもなかなかできない状況だとは思いますが、今後の予定などあれば教えてください。
SHO:3/31にPLASTICZOOMS初の配信ライブをしたのですが、そのアーカイブが見れるので是非見て欲しいのと、4/2-4で原宿の老舗PUNK SHOP”A STORE ROBOT”にて今回のアルバムのリリース記念POP UP SHOPを開催します。そこではアルバムの世界をモチーフにデザインしたアイテムが並ぶので是非足を運んでもらえたらなと。
国内含めた大規模なワールドツアーで販売を予定していたアイテムです。その後もなるべくファンの方達と我々の熱量を共有して、みんなで楽しめたら良いなと思っています。
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PLASTICZOOMS『WAVE ELEVATION』
制作期間3年の大作『WAVE ELEVATION』!
PLASTICZOOMS 4年ぶりのフルアルバムは「気の上昇」をテーマにグラデーションを魅せる全12曲。
80's~現在のアンダーグラウンドカルチャーへの愛を詰め込んだ2021年型New Wave/Psychedelicアルバムが完成!
タグ : インタヴュー
掲載: 2021年04月06日 12:30