いよいよ佳境!ネゼ=セガン&メトロポリタン管のブルックナー:交響曲第2番。
現在、飛ぶ鳥を落とす勢いのヤニック・ネゼ=セガン。世界の一流オーケストラから声がかかり、賞賛されている未来の巨匠指揮者。2020/21年シーズンから、ジェイムズ・レヴァインの後任としてニューヨークのメトロポリタン歌劇場の音楽監督に就任することが決まっています。世界各国で活躍する彼ですが地元のオケ、グラン・モントリオール・メトロポリタン管弦楽団との関係も大事にし、ATMA CLASSIQUE から本ブルックナー・チクルスをはじめ数々の録音を残しています。
ブルックナーの第2番の交響曲は、人気が高い第3番や後期の交響曲に比べると演奏される機会は少ないですが、叙情的で美しく味わい深い魅力を持つ作品です。そしてブルックナーの他の交響曲と同様いくつかの版が存在します。1872年初稿が完成し、オットー・デッソフに演奏を依頼するも「長すぎる、演奏不可能」と反対意見が出たため、1873年改訂版が出されました。その後も大幅な改訂が施され1877年版として一旦決着。出版に際しては、ロベルト・ハースが1877年稿をベースにして一部1872年稿を取り入れた形で1938年に出版されました。ネゼ=セガンは今回このいわゆる「ハース版」を使って録音しています。またノヴァーク版、キャラガン校訂版、複数の版の折衷案を採用する指揮者も存在し、ブルックナー版問題はブルックナー・ファンの興味の一つでもあります。
ネゼ=セガンは、第1楽章は快調なテンポと明朗な響き。第2楽章は美しく歌を紡ぎ、第3&4楽章になるとスケールの大きい音楽作りをしており、スピード感とメリハリの演奏で豊かな音楽性を引き出しています。
(キングインターナショナル)
今年6月のフィラデルフィア管弦楽団との来日公演でも、驚きのブルックナーを聴かせてくれたネゼ=セガン。その新鮮さに満ちたブルックナー解釈は、世界中の評論家や音楽ファンから様々に形容されていますが、なぜか「××ではない」といった表現をされることが目立つようです。曰く、「宗教的ではない」、「石造りの教会建築のような堅牢さがない」、「ドイツ的な重厚さが足りない」云々。その代わりに目立つのは、実に良く歌う弦楽器群、清澄に吹き鳴らされる木管群、思い切ってマッスのパワーを解放した金管群の咆哮です。ブルックナーの交響曲って、こんなにも優美なメロディーが溢れていたのか、と感心している間もなく、あっという間に1時間ほどの演奏が終わってしまうといった塩梅。スケルツォは十分過ぎるほど荒々しく、フィナーレは快速に突っ走るのがネゼ=セガンのスタイルでしょう。とにかく聴いていて面白いのです。
これまで地元モントリオールの手兵、メトロポリタン管弦楽団と第3番、第4番、第6番、第7番、第8番、第9番とレコーデイングを終え、今作の第2番で残るは第1番と第5番を残すのみ。修業時代からブルックナーの音楽にもっともシンパシーを感じていたと語るネゼ=セガンは、その言葉とは裏腹に、指揮者としてのルーツを劇場にもっている音楽家です。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のシェフに就任が決まったニュースは、世界中で大きく報道されました。だからと言って、オペラ的なブルックナー、などといった安易な形容は慎むべきなのかもしれません。しかし、このブルックナーのシリーズとともに、彼が惜しみなく時間を割いて進行させているのが、DGへのモーツァルト・オペラ全曲録音チクルスなのです。モーツァルトとブルックナーの音楽を愛し抜いている若きマエストロ。まるで前世紀のドイツの巨匠指揮者を思わせる、なんとも嬉しくなってしまう組み合わせではありませんか!
(タワーレコード)
【収録曲目】
ブルックナー
交響曲第2番 ハ短調 WAB102
【演奏】
ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)
グラン・モントリオール・メトロポリタン管弦楽団
【録音】
2015年9月
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2016年09月09日 23:10