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インタビュー掲載中!シネマ、7年振りのニュー・アルバム『サイエンス・フィクション・マン』

シネマ

 希代のメロディ・メイカー松尾清憲、一色進(ジャック達)による伝説のブリティッシュ・ポップバンド「シネマ」!80年代にたった1枚のアルバムを残して解散し、2007年に奇跡の復活を果たした彼らの7年ぶりの3rdアルバムが遂に完成。盟友 鈴木慶一、鈴木さえ子、澤部渡(スカート) 豪華ゲスト参加。シネマは1980年ムーンライダーズの鈴木慶一プロデュースによりCBSソニーからデビュー。唯一のアルバム『MOTION PICTURE』(81年)とシングル3枚を残して 82年に解散。松尾清憲、鈴木さえ子、一色進、小滝満等が在籍し後に各メンバーがソロやバンド/プロデューサー等で大活躍した、まさに伝説のバンド。

2006年ムーンライダーズの30周年企画の一環でほぼオリジナル・メンバーで再結成を果たし、2007年には26年...振りのセカンド・アルバム『CINEMA RETURNS』を発表し大きな話題を呼んだ。それから松尾と一色以外のメンバーを大幅リニューアルしてライヴ・バンドとして蘇った新しいシネマの、約7年振りの奇跡のサード・アルバムが遂に完成!彼らを世に出すきっかけを与えた鈴木慶一や元メンバーの鈴木さえ子、また彼らをリスペクトする若手代表としてスカートの澤部渡がゲスト参加した前人未到の新たなシネマ・ワールドが圧倒的ボリュームで展開されている。

 

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シネマ独占インタビュー!

優れた映画が名画座で何度も上映されるように、そのモダンなブリティッシュ・ポップ・サウンドが時代を超えてポップ愛好家の間で愛聴され続けてきたバンド、シネマ。2006年に奇跡の再結成を果たし、2007年には26年ぶりとなる2ndアルバム『シネマ・リターンズ』を発表した彼らが、7年ぶりの新作を発表する。この7年の間にバンドはメンバーの大幅リニューアルを決行。松尾清憲と一色進以外のメンバーが総入れ替えとなった。しかし心配はご無用。新生シネマのニュー・アルバム『サイエンス・フィクション・マン』に詰まっているのは、相変わらずモダンで粋な、音のセンス・オブ・ワンダー。まさに、聴くSF映画だ。では、鑑賞前の手引きに、松尾清憲と一色進の話をどうぞ。

インタビュー・文:小暮秀夫

――大胆なメンバー・チェンジを経てもバンド名を変えなかったのは、松尾さんと一色さんのコンビネーションがあれば、それはシネマだという自負があるからなのでしょうか?

松尾清憲(以下・松尾):そもそも「シネマ」はまだ僕が大学の頃、ギターの中原くんと2人でユニットを結成した時につけた名前で、この後にバンドになり、メンバーも少し変わってメジャーデビューした訳ですから、多少メンバーが変わろうが(笑)、それも「シネマ」という柔軟さ(笑)、というか宿命的なものを持ってる感じです。
ただ、2枚目発表後にこんなにメンバーがどんどん変わるとは思ってませんでした。

一色進(以下・一色):さえちゃんがいなくなった時点で、バンド名をマイナー・チェンジしようか、という話はありました。候補は、「シネマ・ナンバー・ファイブ」とか「ヌーベル・シネマ」とか。でも結局冗談の域からは、出ませんでしたね。それは、ポリシーというよりも、愛着の方が強いような気がします。

――メンバー・チェンジは、バンドの音楽性の変化によるところが大きいのでしょうか?

一色:音楽性の変化っていうのは、今のメンバーになってから必然的に発生したもので、それ以前のメンバー・チェンジの理由は、オレとキヨのあまりのマッド・サイエンティスト的な思考に愛想を尽かして抜けていったというのが、正解に近いと思います。

――オリジナル・メンバーであった鈴木さえ子さんは今回コーラスという形で1曲参加されています。こういう形で参加してもらったのはどういう理由からでしょうか?

松尾:それはまず、さえ子さんが音楽性の高い魅力的なミュージシャンだからということ。それからシネマは映画的要素や、物語性を持った作品が多いのですが、女性の声が入ることによってよりイメージがふくらんで面白いということもあります。

一色:「無口な一夜」という曲の内容が、さえちゃんがいた頃のシネマのムードに近い内容だったということもありますが、みんな、さえちゃんが大好きなんです。

シネマ
※右:シネマ with 鈴木さえ子


――今回のアルバムはメンバーそれぞれが曲を書き、リード・ヴォーカルをとっています。これは、そういう大枠をあらかじめ決めてから制作に取り掛かったのか、曲を持ち寄ったら結果的にそうなってしまったのか、どちらなのでしょうか?

一色:前者です。偶然なのですが、メンバー全員がソロでライブをしたり、アルバムを出したりしていて、まあこんなのはあんまりないし、売りになるかなと思いました。しかも全員の作曲や歌唱のポテンシャルの高さに驚きました。これは、アルバム制作中にさらに思いました。

松尾:このメンバーが揃った時は、みんなコーラスはできるんだなとは思ってましたが、ライブをやってるうちに、みんなリード・ヴォーカルをとれるくらいうまいことに気付きました(笑)。考えてみると自分が学生の頃、夢中で聴いていたビートルズもビーチ・ボーイズもメンバー全員がヴォーカルをとり、それがバンドとしてとてもかっこよかったんですよね。
ですから、ニュー・アルバムではぜひ全員のヴォーカル曲を入れようという構想を描きました。

――スカートの澤部渡君がゲスト参加していますが、スカートの音楽は以前からお好きでしたか?

一色:スカートは、以前からとても素晴らしい若いアーティストがいるな~と、思っていました。彼のアルバムもいくつかは持っています。

シネマ
※右:シネマ with スカート

――全曲セルフ解説をお願いします。
 
1.サイエンス・フィクション・マン
一色
:もともとは、ライブのオープニングにうってつけの曲を作ろうという感じでキヨと作りました。何か不思議なショーの幕開けを予感するイメージ。今回アルバムのタイトルをどうしようかと、相談している時にこの曲のタイトルをそのままアルバム・タイトルにしてオープニング・ナンバーにしようということになりました。もともとは、低音のシンセのところからスタートしていたのですが、澄田のアイディアでエンディングのマイナーの部分を頭にも持ってきて、とてもゴージャスなオープニング・ナンバーになりました。

松尾:これはデビュー当時のイーノがいた頃のロキシー・ミュージックのタッチで書いた曲で、一色くんと2人でスタジオに入って、突然浮かんできました。

2.ロックン・ロール・プラネット
松尾
:マーク・ボランの Tレックスはブギのリズムを得意としてましたが、そんなイメージが頭の中にありました。スカートの澤部くんの1オクターブ低いボーカルがとても効果的。

一色:シネマのロック賛歌。1人暮らしの薄暗い狭い部屋と宇宙空間をロック・ミュージックがつないでいく。そんなイメージです。

3.無口な一夜
松尾:僕がそもそも音楽をやりたいと思ったのは、ビートルズ解散後にその創造性の種を受け継ぐかのように、70年代に次々と現れたイギリスやヨーロッパのアーティスト達なんです。ですから、今のシネマの音楽はそのあたりに影響を受けた、「モダン・セブンティーズ」と勝手に名付けてます(笑)。しかし日本でこのあたりの影響を感じさせるアーティストってなかなか見つけるのが難しいですね。この曲はその70年代のヒット曲というイメージで作りました。 

一色:これは、シネマお得意のいつの時代のどこの国のポップスかもわからないようなナンバー。そこにソウル・トレイン的なディスコ・サウンド。さらにワウ・ギターとクラヴィネット。
とても不思議な世界。

4.Lunatic Guy
松尾
:澄田くんを中心に作りあげた曲。月といえば、プログレッシブ・ロック、ピンクフロイドのアルバム「狂気( the Dark Side of the Moon )という名盤がありますが、そのあたりの雰囲気もあり、月が持つ華やかだけど怪しいイメージがドラマティックに表現できたと思います。

一色:澄田の曲にキヨがサビを担当。いよいよここから、このアルバムのストレンジ・ワールドが展開されていきます。間奏のギター・ソロがとても過激ですね。

5.ロゼッタ・ストーン・セレナーデ
松尾
:この曲はライブで初披露した時に、すでに人気の高かった曲。ポップなサビはトレバー・ホーンのバグルズのイメージもあるんですが、ボーカルのメロディ・ラインはブルーアイド・ソウルのホール&オーツの雰囲気もあるんですよね。

一色:オレは、ゲームはそれほどしないんですが、「ゼルダの伝説」はとても素晴らしいと思います。そのシリーズの中でも好きなのが64時代に発売された「ムジュラの仮面」。そんな世界感に影響されています。誰かがこの曲にインスパイアされて、映画でも作ってくれたら最高ですね。

6.恋愛保険勧誘員
松尾
:松田くんが「ロッキー・ホラー・ショウ」やThe Who の「トミー」といったロック・ミュージカルの演奏を経験してるという影響もあるんじゃないかと思う作品。曲調やリズムが次々と変化して、時間的には短いのですが、いろんな要素がぎゅっと詰まったロック組曲になりました。

一色:松っちゃん作ロック・オペラ。これぞ、シネマって曲ですね。この曲の大槻さんのドラムが素晴らしいですね。この歌の主人公と彼女が出会うのは日付変更線の上。日付変更線上には陸地は存在しないので、たまたま飛行機の座席が隣り合わせだったと思われます。

7.My Sweet Killer Bee
一色
:ニュー・タイプのシネマを象徴するようなロック・ナンバー。イントロのギター・リフが70年代のロンドンのパブへといざなってくれますね。

松尾:エレキギターのコードリフで始まる曲がシネマにはまだなかったといこうとで、一色くんと作り上げたナンバー。
サビはこのコードリフにボーカル、コーラスも加わって盛り上がらずにはいられないライブ向きの曲。

8.クールにキメたい
松尾
:モッズの代表といえるThe Who が大好きな大槻さんらしいビートナンバー。これも今までのシネマになかった曲調。サビがマイナーコードに展開していき、全体的にはエルビス・コステロ&ジ・アトラクションズの印象。

一色:大槻さんが今回のアルバム用に持ち込んだ新曲。キース・ムーンを愛する大槻さんらしいモッズ感満載の曲ですね。キヨがサビを追加してさらにゴギゲンなアップテンポなナンバーが出来上がりました。松っちゃんのオルガンが前面にフューチャーされて、ビート・ポップス(なんにしても例えが古い)的な画面が浮かび上がってきますね。ゴーゴー・ガールは小山ルミにお願いしたいですね。

9.僕のスター
一色
:みなさんお待ちかね。キヨのロッカ・バラッドの傑作登場です。こんなのやらすと松尾せんせいの独壇場ですね。今回のアルバムのコンセプトの引き金になったナンバー。グラムな臭いがプンプンしますね。この曲をライブで演奏するときは、気分はニューヨーク・ドールズです。

松尾:少年の頃、音楽に夢中になったのは、純粋に音楽そのものに魅かれたというよりむしろ、アーティストの持つカリスマ性やスター性に魅力を感じたということのほうが大きいかもしれませんね。
60年代のビートルズ、ローリング・ストーンズ、ドアーズから、70年代のデビット・ボウイやマーク・ボランなど僕を夢中にさせて、楽しませてくれた、スター達への讃歌といった感じ。
後半の澄田くんのギターと松尾の ボーカルとの絡みが聴きもの。

10.紅タイム・マシーン
一色
:この曲はSFだけど、短編小説。文庫本のオムニバスの中にひっそり佇む、でも忘れられない。そんなイメージが伝わればいいと思ってつくりました。筒井康隆は、好きな作家です。

松尾:今までも一色くんと松尾の共作曲はいくつかありましたが、今回のアルバムは2人の共作曲が中心になってます。こんなに共作するとは思いませんでしたが、曲に加え、一色くんの作る歌詞の素晴らしさには感心します。アコーディオンが加わって、アイリッシュな香りが漂ってるとろが気に入ってます。

11.赤い第3惑星
松尾
:これくらいのゆったりとしたスローなナンバーがほしいということと、コーラスをフィーチャーしたいということで、このアルバム用に作った曲。やっとたどり着いた惑星は、姿を変えてしまった地球だったという、映画でいうと「猿の惑星」のラストのようなちょっと悲しいイメージ。

一色:この曲はアルバム・レコーディング直前に出来ました。スローな曲を入れたかったのと、コーラスをフィーチャーした曲を入れたかったという2つの願いを叶えてくれました。全篇に流れるアシッドなギルモア・ギターは、鈴木慶一さんに弾いてもらいました。

12.It's a Parallel World
一色
:そして、アルバム・ラストを飾るいかにもシネマっていうナンバー。これまでの2枚のアルバムに1番近い曲ですね。みんなが聴きたいシネマ。今回のアルバムは今までのシネマのアルバムのイメージで聴くと、だいぶイメージが変わりましたよね。「赤い第3惑星」までが、今回シネマがやりたかったシネマ。そして、最後にみんなが聴きたかったシネマで、アルバムが終わります。めでたし、めでたし。

松尾:この曲はシネマがまだ今のメンバーになる前に書いた曲で、そのせいか1枚目がもってた超ポップな雰囲気、2枚目のプログレな雰囲気、そこにロックな今のバンドのスタイルが重なって、最後を飾るにふさわしい実にシネマらしい、シネマならではのナンバーになりました。

シネマ
ライヴ写真:吾郎メモ

掲載: 2014年07月28日 19:06