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映画史上ないインパクト、タル・ベーラ監督『ニーチェの馬』

ニーチェの馬ハンガリーの名匠、タル・ベーラ(ハンガリーは“苗字・名前”の順で表記されるので、「タル」が苗字で「ベーラ」が名前)は、その作風のあまりにも完璧な製作姿勢などから、すっかり「巨匠」のイメージがある。

そもそも、ハンガリーの映画監督と言えば、『密告の砦』(1965)『ハンガリアン狂詩曲』(1979)のミクローシュ・ヤンチョー(現地順だとヤンチョー・ミクローシュ)、43歳で撮った1981年の『メフィスト』がアカデミー外国語映画賞を受賞して、一躍国際的名匠となり、『ミーティング・ヴィーナス』(1991)や『華麗なる恋の舞台で』など英語圏でも活躍しているイシュトヴァーン・サボー(現地順だとサボー・イシュトヴァーン)などが近年では思い浮かぶ。

が、そういった「ハンガリーの映画シーン」という位置とは、全く違う位置にあるような、タル・ベーラ映画。55年生まれ、監督した映画は1977年の“FAMILY NEST”含め、8本の長編が存在する。もちろん、まだまだ日本で紹介されていない名匠は多くいるが、タル・ベーラの場合、2000年作品、7作目にあたる『ヴェルクマイスター・ハーモニー』が、2002年に公開され、その静かながら暴力的で圧倒的なパワーを持ったモノクロ・フィルムの世界に驚いたのであった。

なので、思えば、本格的に紹介されてからの10周年、ということになる。その圧倒的な初紹介作のあと、通常の映画監督の新作を待つ期間構成とは異なる時間が流れ、というか7年後に、なんとジョルジュ・シムノンの小説を基にする、という『倫敦から来た男』が、前作が製作されて日本公開までのブランク同様の2009年に公開される。シムノンのミステリー原作ということで、アート・フィルムに馴染みのない観客にもきっかけは与えられ、多くの映画ファンが、かつてない感覚が流れる体験に、さまざまな動揺を与えられることとなった。

ニーチェの馬

さて、今度は、前作の日本公開2年後という短さ!で、新作『ニーチェの馬』は姿を見せた。過酷な環境の中で、老人と男、そして馬の、極限までにシンプルにされた日々の生活が、淡々とダイナミックに見つめられ続けていく。監督は、これが自身最後の作品と告げている。ラストは、あまりにシンプルにまとめられつつも、これ以上ないパワーで見るものを攻めてくる。

映画ファンの多くが、例えばタルコフスキーの作品を、どんな映画なのかは知り尽くしていても「その映画空間とともにいたい」がために、特集上映に足を運ぶように、タル・ベーラの映画も存在していくのであろうと思う。

カテゴリ : 予約

掲載: 2012年10月01日 12:32