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カテゴリ : スペシャル

掲載: 2014年01月15日 17:59

更新: 2014年01月15日 17:59

ソース: bounce 362号(2013年12月25日発行)

インタヴュー・文/宮本英夫



大注目のトリオがさらなる飛躍の未来に向かって架ける橋



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関係者の誰もが予想しなかったまさかの大ヒット!……などと言うと語弊ありまくりだが、実際に幅広いリスナーからの評価を獲得した前作『trinity』がジャズ・トリオによるインスト・アルバムとしては異例のセールスを記録し、fox capture planの名を飛躍的に世間に浸透させたことは動かせぬ事実。当のメンバーたちはといえば、加熱する周囲の状況を喜びつつ、〈なぜ受け入れられたのか?〉についてはあまり実感が湧いていないようだが。

「何でだろうね? わかんない。逆にみんなに訊きたい(笑)。“衝動の粒子”のミュージック・ビデオを観て気に入ったという人もいらっしゃるので、音楽以外の要素も大事だったのかな」(カワイヒデヒロ、ベース)。

「ジャケットが良かったせいかも(笑)。ただ、『trinity』には結成当初からあった曲や初ライヴからあった曲のなかで、キャラの強いものをあえて入れたんですよ。その前の『FLEXIBLE』には入れずに。ジャズを聴く人はもちろんなんですけど、ジャズ以外のインストが好きな人、ピアノの音とかが好きな人が聴いてもおもしろく聴きやすくなってるし、オアシスのカヴァーとかもやってるし、いろんな音楽のリスナーに聴いてもらえる要素があったのかもしれない」(岸本亮、ピアノ)。



それぐらいの自由度

それから約半年というハイペースで届いたニュー・アルバム。『BRIDGE』と題されたこの作品は、彼らの掲げる「アコースティック・ピアノ、ウッドベース、ロック・ドラムの組み合わせで、ジャズとポスト・ロックを組み合わせた音楽をやりたい」(岸本)というコンセプトを踏襲したものだ。ただ、前の2枚よりもあきらかに自由闊達なライヴ感やスピード感を増しているように聴こえるのは、急いで作ったことが逆に奏功したかもしれないとメンバーは言う。

「前作の好調ぶりを受けて作ることになったんですけど、当初はミニ・アルバムぐらいのつもりで、次に繋げるという意味で『BRIDGE』にしようと。そしたら話がデカくなって、〈フル・アルバムのほうがインパクトがあるから〉ということになっちゃった」(岸本)。

「“Attack on fox”“Far out”“Pictures”あたりは、レコーディング2週間ぐらい前にお互いが曲を書いてきて、ディレクターに〈入れていいよ〉という許可を得る間もなく録りました(笑)」(カワイ)。

「限られた時間のなかでやらないといけなくて、それが良かったのかもしれない。時間をかけすぎるとライヴ感やバンド感がなくなってしまうから、そういうところにはこだわらずにサクサク録って、それでいいんじゃない?みたいな感じですね」(岸本)。

「僕は昔から、レコーディングはその瞬間の記録としか考えてないんで、完璧なものを作ろうとしてやったことがないんですよ。その時にできることをやればいいし、それしかできないので」(井上司、ドラムス)。

「まとまりすぎても良くないしね。ジャズの名盤もそうやって生まれてると思うから」(岸本)。

得意の変拍子を駆使した、トリッキーで昂揚感溢れるリード曲“Attack on fox”、〈踊れるジャズ〉の王道を行くアッパーでメロディアスな“RISING”を筆頭に、ソウルフルなリズムが跳ねる“3rd Down”、ドラムンベースなどさまざまなリズムを自在に取り込んだ“Pictures”など、ミッド〜アップテンポのナンバー中心にグイグイと押す痛快さ。“RISING”のなかのフレーズを使って変奏曲のように展開させたインタールード“Bridge”の3ヴァージョンも含め、その場のインスピレーションを重視した名手たちによるフレキシブルな演奏がたっぷりと楽しめる構成だ。

「“Pictures”は、〈じゃあレコーディングします〉と言ってから叩いたリズムと、それまでリハーサルでやってたリズムとちょっとノリが違うんですよ。カウントを出した瞬間になぜか違うリズムをふと叩いていて、そしたらそっちのほうがハマッてたから、これでいいかなと」(井上)。

「へえぇ〜。気付いてた?」(岸本)。

「気付いてなかった。いまさら知る、みたいな(笑)」(カワイ)。

「それぐらいの自由度があるということですね。僕らのレコーディングは」(岸本)。



裏切っていきたい

そして恒例となっている〈90年代洋楽カヴァー〉、今回はマッシヴ・アタックが98年に大ヒットさせた“Teardrop”。もともとバッド・プラスによるエイフェックス・ツインのカヴァーやブラッド・メルドーによるニルヴァーナのカヴァーなどが好きだったという岸本の発案により、これまでにビョーク“Hyperballad”、オアシス“Wonderwall”などを取り上げてきたが、今回も、原曲の持つ神聖な妖気とも言うべきものを軽やかで美しいピアノのメロディーへと変換した好カヴァーを聴かせている。

「有名だし、好きな曲なので、前々からやりたいなと思ってました。90年代はラップ・ミュージックの台頭が印象的なんですけど、それとは裏腹にオアシス、ビョーク、レディオヘッドとか、メロディックな音楽も実は多いので。トリップホップとかも斬新な音楽として取り沙汰されていましたけど、メロディーがすごく良いんですよね。自分が90年代にいろんな音楽を聴いて触発されてきたので、それを後世に残していくために、微力ですけどカヴァーして貢献していきたいなという気持ちもあります」(岸本)。

ジャズとポスト・ロックの間を行くサウンドの斬新さだけではなく、ある意味ノスタルジックでオーソドックスなメロディーの良さを重視しているからこそ、彼らの音楽がこれほど多くの人に受け入れられたのだということが、『BRIDGE』を聴くとよくわかる。音楽的にも精神的にも、バウンダリーを軽やかに超えてゆく楽しみを教えてくれるfox capture planの存在は、今後ますます大きなものになっていくに違いない。

「謎のプレッシャーを最近感じはじめてます(笑)。ただ、『trinity』で自分たちの方向性が固まった感があって、この『BRIDGE』でさらにそれを進めることができたと思うので、いまの軸を持ったままいろんなものを吸収してアプローチしていきたいと思ってます。マンネリ化させずに、いい意味で裏切っていきたいんですよ。〈ああ、fox capture planの音やな、安心するわ〉じゃなくて、〈今度はこう来たんや〉と言われるようなものをやっていきたいですね」(岸本)。



▼関連盤を紹介。
井上司が在籍するnhhmbaseの2013年作『3 1/2』(rpmd)、岸本亮が在籍するJABBERLOOPのニュー・アルバム『魂』(INFINITE)、カワイヒデヒロの在籍するImmigrant's Bossa Bandは次頁にて!

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