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NEXXXT BIG THING――地方の雄たちが描き上げた新しい地図とフレッシュネス



M.O.S.A.D.の三本マイクが広く全国区に提示した最初の音源は、コンピ『RAP WARZ DONPACHI!』(2000年)に収録された“FABULOUS”(この時点ではTOKONA-X feat. EQUAL & AKIRA名義)だ。メジャー・デビュー前の餓鬼レンジャーが旗を振ったこのコンピは、群雄割拠の戦国時代に準え、ヤバいヒップホップ・アクトが広く東京以外のエリアにも存在するという事実を見える形にした画期的な一枚だった。もちろんそれ以前から各地で活躍している面々はいたに違いないが、一般に流通されるCD音源の意味合いは現在とは比べ物にならなかったのだ(その点でILLMARIACHIはまさに先駆者だといえる)。

しかも、ここに参加した面々は以降も多大な影響力を誇っているのがおもしろい。例えばYOU THE ROCKにフックアップされてもいた仙台のCUZSICKは、より地元のビジネスに根差した形で活動中(楽天イーグルスの公式ソングも手掛けている)。DESPERADOとしてILLMARIACHIとコラボしていた大阪の茂千代も名を連ねているし、九州のTOJIN BATTLE ROYALはおよそ10年もの時を経て好事家の間で話題にもなったものだ。そしてTHA BLUE HERB。挑発的に〈対東京〉の図式を描いてみせるILL-BOSSTINOの姿勢は根本ではTOKONAに通じるものだっただろう。

なお、同コンピにはいないが、DESPERADOとのスプリットなどを経て出たOZROSAURUSのクラシック『ROLLIN' 045』はM.O.S.A.D.や京都のMAGUMA MC'Sを迎え、聴き手にもローカルで動くことの意味を伝えた。M.O.S.A.D.と並んで名古屋シーンを大きくしていったPHOBIA OF THUGが同様のこだわりを見せてきたことも付け加えておきたい。



▼関連盤を紹介。
左から、2000年のコンピ『RAP WARZ DONPACHI!』(東雲)、CUZSICK & N.O.B. TEAMの99年作『Little Ditty』(Pヴァイン)、TOJIN BATTLE ROYALの編集盤『1997-1998 COLLECTION』(TOJIN)、茂千代の2011年作『続 NIWAKA』(梟観光)、THA BLUE HERBの98年作『STILLING, STILL DREAMING』(REAL LIFE)、OZROSAURUSの2001年作『ROLLIN' 045』(FUTURE SHOCK/ポリスター)

 

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2013年12月04日 18:01

更新: 2013年12月04日 18:01

ソース: bounce 361号(2013年11月25日発行)

文/狛犬

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