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イェウォン・シン - interview

掲載: 2013年11月19日 10:00

ソース: intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)

interview & text : 編集部



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Voice Becoming Music〜音楽に成る声

ECMにも少なからず、声の音楽がある。民族の意匠をまとったもの、あるいはむき出しの即興の声やシアトリカルなジェスチャーを伴う声。そんな中でもECMらしいヴォーカリストといえば、私はシゼル・アンドレセンのことを思い出す。彼女の『EXILE』は、名盤というにふさわしいアルバムだ。そして今日ここにまた新しい声が、ECMの歴史に加わる。その声とはイェウォン・シン、韓国出身のヴォーカリストだ。ピアノにアーロン・パークス、アコーディンオンにロブ・クートを迎えてホールでレコーディングされた。影絵のように、声は楽器の調べに映し出され、声は唄になり、歌は物語を綴り始める。

「狙ってささやくように歌ったわけではありませんが、音楽がきっかけでした。いくつかの唄は、即興したものをレコーディングしました(メロディや言葉はすべてそのとき思いついたものです)。作品のいくつかは韓国の童唄で、思い出しながら気ままに歌いました。子供のころ母が歌い聞かせてくれた童歌は、今も私の一部になっています。そんな私の子供の頃の情感を音楽に反映しようと思いました。童唄には、とても純粋な気持ちになれたり、素直になれる、ある種のエネルギーが宿っていると思います。もともと童唄に登場する子供たちのことを歌うのが好きだったこともあり、今回のECMの企画には、これがぴったりだと考えました」

三人の、それぞれの子供の頃の思い出に微睡むのような演奏は、どこかギリシアの映画監督テオ・アンゲロプロスと作曲家エレニ・カラインドルーの映像/音楽を思い起こさせる。

「レコーディングでは、アーロンとロンに、子供の頃のことを思い出してその思いを音楽にして欲しいと頼みました。とはいうもののそれはあくまでラフなガイドラインです。私たち三人は、音楽にどんどん入り込んでいけると私はそう信じていましたから。音楽はエモーションであり、エモーションは音楽そのものです、音楽に身を任せるというのが私のやり方で、事前に考えたことに固執したりはしません。このセッションでは童歌がテーマでしたが、実は、私たちは演奏しながら感じあおうとしていました」

それぞれの思いにふけるキューとなるには十分すぎる、言葉のひとつひとつを柔らかく包み込むような彼女の声は、ハングルのようでもあり、サウダージのようでもある。

「特別テクニックについて考えたこともなく、独自のスタイルを身につけようと努力したこともありません。ただ、ある時期まで音楽について一生懸命勉強してきました。歌うことは常に私の一部でした。私は、音楽の中で自分らしくあろうと努力しています。音楽をより身近に感じ、声が音楽になりように、出来るだけ素直であろうと努力しています」

2014年には東海岸を中心に北米のツアーを計画しているという。何かと騒々しい世の中を童心に戻してくれる素晴らしい声の持ち主が隣国に現れた。後は素直な気持ちで聴く耳があればいい。



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