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クールビズ/ジャズの起源 - column

掲載: 2013年11月19日 10:00

ソース: intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)

text:小林栄一



史上最高齢でのビルボード誌アルバム・チャート初登場1位獲得という金字塔を打ち立てたトニー・ベネットの『デュエッツII』。ジャズシンガーがチャートで1位を獲得するなんて日本ではまずあり得ないわけだが、程度の差こそあれ、本国アメリカでも異例の事態だったことに変わりはなかったのかもしれない。それよりこのアルバムの驚きはむしろ、レディ・ガガやエイミー・ワインハウスといった若きポップスター達がショウビジネスの王道ともいうべき表現をごく自然に体現し、それが継承されていくさまを我々に見せてくれたところにあったのではないか。軽妙で酒脱、なによりもチャーミング。『デュエッツII』はそんな名演揃いのアルバムだった。トニー御大の凄さは揺るぐはずもないが、ショウビズの伝統が20代の彼女達にこれほどまで力強く根を張っていたのか、という畏怖感のようなものを持って、あのアルバムを聴いた人も多かっただろう。時代はうつろえど、そう簡単には息絶えない壮絶な凄み。酒と泪と男と女、もしかしたらときどき血。栄光の影には凄まじい努力があり、だからこそスポットライトの眩さが必要なのだ。

昭和史の裏の舞台としても知られる超高級クラブで行われたステージの実況録音盤「ライブ・アット・ニュー・ラテン・クォーター」の各タイトルも、そんなエンターテインメントの陰影をたっぷりと味あわせてくれる、ジャズファンもポップスファンも必聴のシリーズだ。第1弾のナット・キング・コール、ヘレン・メリル、ルイ・アームストロングに続いてリリースされるのは、パティ・ペイジ、ジュリー・ロンドンの2タイトル。ジュリー・ロンドンは夫でピアニスト/作曲家のボビー・トゥループを伴って初来日を果たした1964年時のステージ。これも避けて通れない必聴盤だろう。

何もポップスや復刻盤ばかりではない。1920年代アメリカへの憧憬を憚ることなくクラシカルに表現したアルゼンチン人ヴォカーリスト、カレン・ソウサ。ガーシュインに続いて今作はグレン・ミラーに取り組むなど、一貫してノスタルジックな視点で思考するデンマークの俊英ピアニスト、マグナス・ヨルトなど、ジャズとエンターテインメントのあわいにある、得体の知れない魅力を探求し続ける若手ジャズマンも多い。そして、御歳80歳にして先頃来日も果たしたQ様ことクインシー・ジョーンズを忘れてはいけないのだった。ジャズマンとしてキャリアをスタートし、のちにマイケル・ジャクソンのプロデュースを手がけるなど、アメリカ音楽界に今も君臨するこの御大の足跡には、ジャズとエンターテインメントの、眩いばかりの景色が広がっているに違いない。



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