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特集

オマール・ソーサ - interview

掲載: 2013年11月19日 10:00

ソース: intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)

text:大石始



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オマール・ソーサ©Tsuneo Koga 写真提供:ブルーノート東京



クラーベ・ブルーを聴く

アフリカ音楽や中南米各国の音楽などを貪欲に吸収しながら、個性溢れる音楽世界を築き上げてきたピアニスト、オマール・ソーサ。彼が今年初頭に発表したアルバム『エグン』は、〈祖先〉を意味するタイトルが冠されているように一種の原点回帰的な作品でもあった。

「ここにはマエストロたちに対する感謝の思いが込められているんだ。コルトレーンやマイルス、ビル・エヴァンス。彼らは音楽の基本的構造を作り上げたマエストロだ。そのなかでも僕は自分のやり方で『Kind Of Blue』を再構築しようと試みたんだ」

ただし、もともと「僕自身はスタンダードを聴くのは好きだけど、プレイするのは好きじゃなかった」というオマール。ジャズの教科書ともいえる『Kind Of Blue』を単にコピーするのではなく、メロディやベースライン、コードにおける黄金律を見いだすべく研究を重ねたという。『エグン』がその研究成果をもとに作り出された作品であることは確かだが、本作においてオマールはその研究成果を咀嚼し、自身の音楽地図を描き出そうとしている

「例えば一冊の地図があったとする。そこにはたくさんの場所が書いてあるわけだけど、『エグン』ではそれと同じようなことを表現したいと思ったんだ。マエストロたちに敬意を表明しつつ、さまざまなエレメンツが詰まったものを作り出したいと思ったんだ。そして、その根っこにはいつもクラーベがあった」

キューバ人であるオマールにとって、キューバ音楽の中心で常に鳴り響くクラーベはハートビートのようなものである。もともとモロッコのグナワからインスパイアされて作品制作を行うなど、さまざまなリズムに対して意欲的に取り組んできた彼。リズムについての考えを尋ねると、こう答えてくれた。

「僕にとってピアノは88個のドラムのようなものなんだ(註:ピアノの鍵盤の数は88)。もともと打楽器奏者だし、自分にとってピアノはやりたいことを表現する〈道具〉のようなものなんだ。ピアノ奏者としてはインプロヴァイズなど技術面で限界があると自分では思ってるんだけど、もともと打楽器奏者であることをポジティヴに活かしたいと常に思っている」

この取材の前日に行われた来日公演はオマール・ソーサ・クアルテート・アフロクバーノとしてのものだったが、『エグン』からさらにアフロキューバン色を強めたこのクアルテートに関してオマールは「アフリカ的要素をミックスさせながら、モントゥーノやチャチャチャ、ボレロなど自分にとっての伝統音楽を現代的手法で表現するのが基本的なコンセプト」と話す。

「ただし、重要なのは、なんといってもクラーベだよ。あのリズムがピアノのバックで鳴り響くだけでグルーヴが生まれるんだ」

〈先祖帰り〉を経て、オマールが作り出す新たなアフロキューバン・サウンド。次回作ではその成果をたっぷり堪能することができそうだ。



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