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特集

GRAVITY OF JAZZ, TO COME

掲載: 2013年11月19日 10:00

ソース: intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)



突然だがソロアルバムのない、まだ無名の新人を紹介してみたい。彼は確かにクレオールだろうし、奴の音楽はハイブリッドだ。

アレックス・トスカ・ローガート、キューバ出身のキーボディスト。若手ジャズピアニストとしてその才能が注目されながら未だソロアルバムのリリースはない。母は、キップ・ハンラハンのディープ・ルンバで有名な歌手、シオマラ・ローガート。師匠はブエナ・ビスタ・ソシアルクラブの、あの有名なティンバレス奏者、アマディート・ヴァルデスだという。まもなく30歳になる彼はキューバの様々なルーツ音楽にもちろん影響を受けたが、レゲトンやティンバのグループに参加して楽しんだという。そのかいあってか、The Rootsがキューバに来演したときに共演している。

彼の演奏を聴いたのは、コンガ奏者のペドロ・マルティネスのグループに参加したときだった。まだ結成まもないペドロのグループは、コンガとベーシスト、そしてキーボードのアレクス、とサポートのパーカッションというシンプルな編成だった。小編成ということもあるのか、ペドロのコンガをさしおいて、自分の声をアサインしたキーボードで変わったモントゥーノを交えながら、たった一台のキーボードで自由に自分の世界を造り上げていた。ペドロのグループ参加前には、ジョージ・クリントンに気に入られ、 FUNK/Parliamentのツアーにも加わった。彼の才能がカヴァーできない音楽ジャンルはもはやないのではとニューヨークではささやかれているほどだ。

クラーベ、ファンク、ヒップ・ホップ、ジャズ、ルンバ、サルサのすべてが彼の身体の中で交じり合っている。上述したペドロのグループでの演奏は、アレックスが確かに世代の音楽家であることを印象づけるに十分だ。キーボードを演奏する身体の動きからの音楽の新しさが伝わってくる、そんな弾き方をするピアニストだ。確かに日本にはいない才能、だろう。様々なグルーブのミクスチュアーである彼の音楽が、直観的にその場で生まれる音楽に合わせて、踊るように生まれてくる。

最近、マーカス・ギルモア、クリス・デイブ、ケンドリック・スコット、エリック・ハーランドといった新人、中堅のドラマーが新しいアイデアを持ち込んでジャズのリズム、音楽自体がまたアクティブになってきてはいる。アレックスの身体の動きに合わせて、音楽がまた新しい動きを見せ始めた。ひょっとしてジャズはまたニューヨークから、動くのかもしれない。



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