こんにちは、ゲスト

ショッピングカート
  • Check

特集

星野みちる

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年08月23日 20:30

更新: 2013年08月23日 20:30

ソース: bounce 357号(2013年7月25日発行)

インタヴュー・文/久保田泰平



満天の下で空を見上げて、星と星を繋いだらエレポップになったよ



星野みちる_A

星野みちるの『星がみちる』は、そのタイトルに紛うことなき煌めきとファンタジーに満ちたポップ・アルバムです。プロデュースを手掛けたのは、リミキサー/アレンジャーとしても活躍するDJのはせはじむと、ポップス愛好家からも熱い注目を集めるマイクロスターの佐藤清喜。煌びやかなサウンドを背景に、彼女の歌声が流麗に舞う……と、話を進める前に、彼女のバイオグラフィーをちょっと振り返っておきましょう。

星野みちるは、元AKB48の1期生、チームA──と言われてもピンと来ないかも知れません。正直なところ、筆者もそうでした。AKB48在籍時には歌の前衛を張る、いわばエース級のメンバーであったようですが、彼女がAKB48を卒業したのは2007年の6月。昔もいまもAKB48は〈会いに行けるアイドル〉ながら、当時はまだ本当に〈行かないと会えないアイドル〉でしたから。

アイドル・グループの一員として芸能活動を始めたものの、もともとはソロ・シンガーになりたかったという彼女。AKB48在籍時には自作曲をせっせと秋元康先生に渡し続けていたそうで、秋元先生の作詞で念願のソロ・レコーディングも叶えた彼女でしたが、結果的にそのお墨付きがきっかけとなってAKB48を巣立つことに。卒業後はシンガー・ソングライターとしての活動にシフトし、前田敦子らAKB48の同期メンバーも詞を託したミニ・アルバム『卒業』(ライヴ会場やネットでのみ流通)や、アコースティック・カヴァー・アルバム『Bitter & Sweet』なども発表しましたが、〈元AKB48〉という肩書きが不要になるほどの成果を上げるまでには……そんなこんなで2012年。『星がみちる』のプロデュースを手掛けることになるはせとの出会いが訪れるのです。

「はせさんは、私と〈こういう作品を作りたい〉っていうハッキリとしたヴィジョンを持っていて……そういうの初めてだったんですよ。いままでは〈みちるはどうしたいの?〉って私に託されることが多くて……迷ってばかりだったんですね」。

そんな流れを経て、まずは昨年秋に7インチ・アナログのみで先行リリースされた“い・じ・わ・る ダーリン”の制作に突入。そもそもこの“い・じ・わ・る ダーリン”は、彼女に歌ってもらうことが決まる前から作られていた楽曲で、作者の佐藤が〈メロディーは筒美京平、アレンジは武部聡志、化粧品のCMソングにありそうな〉というようなイメージで編んだナンバー。綿密に組み上げた楽曲を歌唱力の拙い女の子が歌うおもしろさのようなものも目論見としてあったようなのですが、実際に彼女に歌ってもらったところ、そのキャラ立ちした歌声と感情移入を誘う歌唱ゆえにオマージュではなくリヴァイヴァルになってしまうという誤算が。かくして、同曲のリアレンジと共に、〈エレポップ歌謡〉というキーワードで女子ヴォーカルをフィーチャーした企画モノを作るはずだった当初の予定を若干修正し、結果的にそれだけのコンセプトではない、言うなれば〈星野みちるのアルバム〉を作ることに。



星野みちる_A2_360



そんな『星がみちる』には、“い・じ・わ・る ダーリン”の新ヴァージョンをはじめ、作者のはせがラー・バンド“Cloud Across The Moon”へのオマージュと堂々公言するドリーミー・ポップ“私はシェディー”、彼女自身のリアルなノスタルジアをラヴァーズ・レゲエ調に染め上げた自作曲“オレンジ色”、チルウェイヴ・テイストのセンチメンタル・ポップ“トワイライト・ブルー”、ネクスト・フェイズへと向かう心意気を軽やかに弾ませる“ワンダランド”、自作自演によるピアノ・バラード“一緒に旅する君へ”など、眩いポップ・チューンがズラリ、いや、キラリ☆。ともすれば裏方の作家性ばかりが前に出てもおかしくないサウンド世界でありながら、それ以上に歌の良さを一歩前に出してくれる彼女のナチュラルな感性、歌、歌声、キャラクターが見せてくれるパノラマには、ときめかざるを得ません。

「自我がないってよく言われるんですけど、でも、自我がないことが結果的に良かったのかもって、今回『星がみちる』を作っていて思いました。自分で曲を作っていると一線を飛び越えられないところがあるんですけど、こうやって作ってもらった曲とか歌詞を歌うっていうのは、すごく楽しいです。こういう曲を自分も歌っていいんだなって、いままでとは違う世界──宇宙が見えた感じです」。

彼女にとっての新しい宇宙は、星野みちるをずっと応援した来た人たち、いままで知らなかった人たち、あれこれとガール・ポップを嗜む人たちにとっても新しい宇宙……だと思います。 



▼関連盤を紹介。
左から、AKB48の2007年作の新装復刻盤『チームA 1st Stage「PARTYが始まるよ」』、五井道子の2007年のシングル“僕の花”(共にDefSTAR)、Michiruの2011年作『Bitter & Sweet』(Star☆Field)、はせはじむの2005年作『CAMP』(HIGH CONTRAST)、microstarの2008年作『microstar album』(Catchball Studio/ヴィヴィド)

 

インタビュー