THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU――オリジナル・ラブの根本を築き上げた海の向こうの音楽
本文でも語っている通り、田島貴男の原点は80年代のニューウェイヴにあり。それはXTCの変名バンド、デュークス・オブ・ストラトスフィアでコリン・モールディングが名乗っていた〈レッド・カーテン〉と、フィーリーズのファースト・アルバム『Crazy Rhythms』に収められた一曲“Original Love”からバンド名を拝借したというところでも明白だろう。とはいえ、ニューウェイヴ風のサウンドを打ち出していたのは、オリジナル・ラブのごく初期までで、その後は〈アルバムごとにチャレンジして音が変わってていく〉というニューウェイヴ的理念を貫くことで、その影響を大きく映し出している。そんな田島は、バンド活動を続けていくなかでありとあらゆる音楽を吸収/消化していくわけだが、やはりオリジナル・ラブのデフォルトとしてプリインストールされているであろう音楽は、カヴァー・アルバム『キングスロード』でも取り上げられている50~70年代のポップス、ロック、ソウルといったところだと思われる。とりわけ、ピチカート・ファイヴ時代に書いた“夜をぶっとばせ”を筆頭に、しばしば聴かせる美麗なメロディーラインの背景にはバート・バカラック、洒脱なソウル・フィーリングにはスモーキー・ロビンソンやホーランド=ドジャー=ホーランドといったモータウン系ソングライターやカーティス・メイフィールド的なマナーを感じ取ることができる。また、バンド結成当初からライヴでもよくカヴァーしていたエルヴィス・プレスリーは、セクシーなステージ・パフォーマンスや佇まいも含めて、田島の永遠の憧れ……なのだろう。
▼関連盤を紹介。
左から、デュークス・オブ・ストラトスフィアの85年作『25 O'Clock』(Ape)、フィーリーズの80年作『Crazy Rhythms』(Stiff/Domino)、スモーキー・ロビンソンの75年作『Quiet Storm』(Motown)、カーティス・メイフィールド『Live!』(Cyrtom)、エルヴィス・プレスリーの58年作『Elvis Presley』(RCA)