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特集

ジャン=リュック・ゴダール 、 フランソワ・トリュフォー、グラウベル・ローシャ(3)

カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2011年07月11日 12:33

更新: 2011年07月19日 17:48

ソース: intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)

グラウベル・ローシャ「狂乱の大地」(1967)

 

1967年の『狂乱の大地』では同時期のゴダールもそうであったようにシリアスな作りとなっていく。そして、1969年の『アントニオ・ダス・モルタス』はローシャ自身が『私にとって真に映画的と言える最初の試み』と言っている作品で、シンセサイザーの音楽や西部劇の要素が入る。そして、遺作になった『大地の時代』はどんな映画だったのだろう? これはまるでフリージャズの音楽を、そのまま映画にしたようなアナーキーな作品だった。今ではカルト・ムービーと言われそうだ。フリージャズの音楽の上に叫ぶ男「この惑星は小さくて貧しいものだ」「永遠の鳥は存在しない」「父は僕を騙した」と叫んでいる。「私は泣いている」と叫ぶ女。その次の場面ではリオのカーニヴァルが15分位続く。政治の話。うまく行かなかった革命。クーデター。ブラジルの首都ブラジリアの労働者達の前で叫ぶ男。ブラジリアは昔から夢想家達が語っていたユートピア、エル・ドラドを意識して人口的に何もなかった土地で立てた都会だった。その同じ男が坊主頭の男と女と戯れながら「権力が欲しい」等と叫ぶ。バイーアの海の側で叫ぶ男「私達の土台が壊された。原子爆発が地球の中央であった。未知の者同士での間での戦争。私達の社会は崩れたのだ」そして最後の方では語られる「神か無か?神を信じない者は無を信じる。もし無が神なら、歴史はとても早く動く」。面白いセリフが時々このように飛び交う映画だ。ストーリーはなく、一つシーンから次にと、ラフにカットされ、編集されている。映画を映画ではないものにしてみたかったではないかと思わせる。インパクトのある部分も多くあるが、この2時間半の映画を見るには覚悟して行った方がよさそうだ。

古代から伝わる原始宗教の要素を、現代文学や現代アートに見て、それについて分析していった神話学者がいる。彼の名はジョーゼフ・キャンベル。ジェームス・ジョイスの文学やピカソの絵は古代でいえば、カンドンブレのような神話を表現した世界を現代の方法論でやっていると彼は書いている。そして彼と妻のコンテンポラリー・ダンサーのジーン・エルドマンは1940年代にジョン・ケージ夫妻と一緒に生活をしながら作品を作っていった。結局、一緒に作ろうとしたオペラは完成しなかったが、この当時のジョン・ケージの音楽には、彼が初めて東洋の神秘思想やガムラン等アジアの音楽から影響を受けた要素が感じとられる。アイルランドの童謡のような5音階のメロディ。ハワイのチャントのようなプリミティブに繰り返される音とパーカッション、そしてパーカッションの役割をしているピアノ。インドネシアのガムラン音楽からインスパイヤーされたような作り方の弦楽器の曲。これらの音楽にはしっかりとジョン・ケージの個性が出ている。現代音楽の外の世界でも演奏され、聴かれる事を願う。恐縮だが、僕はこれらの音楽を、ジョーゼフ・キャンベルについて語るトークと共に演奏するコンサートを6月24日に企画した。新作《Voices In The Wind - A prayer for those swept away by the sea風の中の声たち- 海に流されていった人々のための祈り》はポリネシア神話の中のハワイ島の火山、地震、炎の女神ペレの話に基づく曲として始めたものだが、作曲している内に3月11日の事が大きく影響を与えたものである。

映画『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー』

監督:エマニュエル・ローラン
出演:フランソワ・トリュフォー/ジャン=リュック・ゴダール/ジャン=ピエール・レオー
配給:セテラ・インターナショナル(2010年 フランス)©Films a Trois 2009
◎新宿K’s cinemaにて7/30(土)~9/2(金)まで夏休みロードショー以降全国順次公開
http://www.cetera.co.jp/nv

没後30年 グラウベル・ローシャ ベスト・セレクション

http://sky-way.jp/rocha/

寄稿者プロフィール
Ayuo(あゆお)

ニューヨークで育ち、 小学生の頃60年代後半のアメリカの実験音楽、アート、文学、サイケデリック・カルチャーに強い影響を受ける。8 歳よりギターを習い始め、83年以後18枚のソロ・アルバムをアメリカと日本で発表。独自の調弦方法のギター・スタイルを作り、他に も様々な楽器を演奏し、古代音楽にみられる世界の繋がりを独自のサウンドで創作しつづけている。音楽、文学、映画、歴史、神話と科学についての執筆の依頼も多い。最近のCDでは『AOI』、『RedMoon』『絵の中の姿』などが発売されている。最新のCD『dna』は2009年9月25日発売。http://www.ayuo.net/

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