こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

GETCHA GROOVE ON――単純明快にして明朗快活?なリンプ・ビズキットのルーツ

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2011年06月29日 17:59

ソース: bounce 333号 (2011年6月25日発行)

文/轟ひろみ

 

本文にもあるように、一時はクイーンを引き合いに出したりしてファンをがっかりさせたリンプ。でも、よく考えると彼らが大絶賛を浴びたきっかけってジョージ・マイケルをヘヴィーにカヴァーした“Faith”(リミックスではデヴィッド・ボウイ“Fame”と組み合わせてもいた!)だったわけだし、冷静になってみると、クイーンのようにポップで大衆的でスケールのデカいサウンドを彼ら(というかフレッド)が望んでいたとしても決しておかしくはない。

そう、あえて言うならばリンプに打算はない。センスの良さや品の良さをスモール・サークルで共有することより、より多くのオーディエンスと分かち合える方法を選ぶのがきっと彼らは好きなのだ。そんな直球のポピュラー志向はロック村にあってはベタに取られかねない危険球ギリギリな場合もあるものの、プリンスの“1999”をベースにした“9 Teen 90 Nine”を無邪気に披露したり、ザ・フーのカヴァー“Behind Blue Eyes”や、モトリー・クルー&ヴァーヴのメドレーを憂鬱に歌い上げたりする様子にフレッドの率直さが現れていると思うのだが、どうだろう。PVでのサーヴィス精神にもロック的な美学とは程遠い成金趣味も見え隠れしたが、儲けているのにガキのフリをするよりはいいじゃないか。

そんな無邪気さはヒップホップの取り込み方にも顕著で、“Re-Arranged”ではエリックB&ラキムのクラシック“I Know You Got Soul”を用いているし、“My Way”でコスられているのも同じくエリックB&ラキム“My Melody”の著名フレーズだったりする。DJプレミアのサウンドを気に入っていた点からもわかるように、とにかくフレッドは基本に忠実というかスタンダード好きなのかも。そしてそんなスタンダード志向こそがバンドそのものをスタンダードな存在たらしめてきたのではないだろうか。

 

▼関連盤を紹介。

左から、クイーンのベスト盤『Greatest Hits』(Parlophone)、ジョージ・マイケルの87年作『Faith』(Epic)、プリンスの82年作『1999』(Warner Bros.)、ザ・フーの71年作『Who's Next』(Track/Decca)、エリックB&ラキムの87年作『Paid In Full』(Island)、ギャング・スターのベスト盤『Mass Appeal: The Best Of Gang Starr』(Virgin)

インタビュー